「早読み 深読み 朝鮮半島」

「慰安婦」で韓国との親交もお断り

「反日国家に工場を出すな」と言い続けてきた伊藤澄夫社長に聞く(下)

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2012年11月2日(金)

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「韓国にはウチの精密機械は売らない」

伊藤:政府が規制する前に、民間企業が韓国への精密機械の輸出や技術移転を自粛するケースが出始めました。もちろん、商売にはマイナスですが「日本に害をなす国家を利してはいけない」との強い思いからでしょう。

鈴置:私も同じような話――「日本を侮辱する韓国に対し、日本にしかない機械は売らないことにした」という話をあちこちで聞きました。面白いことに私が知る限り、いずれもオーナー社長の会社です。

伊藤:実は、私も最近、韓国とのお付き合いを断りました。長い間続けてきた韓国の大学での特別講義や、韓国の同業者との集まりでの講演はやめたのです。韓国の学生のインターンシップ受け入れも、韓国の同業者の工場見学も、すべてお断りしています。

鈴置:先ほどから、その点を伺いたかったのです。伊藤社長は中国とは関係を持たないようにしていました。しかし、同じ「反日国家」でも韓国とは深い人間関係を築いて来られました。

 30年近く前に伊藤製作所で半年間も修行し、韓国の製造業で活躍している韓国人に会ったことがあります。伊藤社長にとても感謝していました。伊藤さんは韓国の金型業界や様々な大学との交流にも尽くし、韓国人の間でも「歯に衣着せない、率直な日本人」と人気があったのに……。

慰安婦の像がある限り韓国と交わらない

伊藤:従軍慰安婦の像からです。韓国政府は、ソウルの日本大使館の前に作ることを認めました。そのうえ李明博大統領は「謝らなければもっとできるぞ」と日韓首脳会談の席上、日本を脅しました。

 過去のように一部の反日分子の活動ではなく、大統領の言動です。次元が全く異なります。実際、その後、「慰安婦の像」を米国でも設置させるなど韓国は世界に宣伝を始めました。

 自民党の高村正彦副総裁は「旧日本軍が直接強制連行した事実はない」と明らかにしています。また、高村さんが外相だった1998年に日韓共同宣言をまとめた際、当時の金大中大統領から「一度謝れば韓国は二度と従軍慰安婦のことを言わない」と言われ、「痛切な反省と心からのお詫び」を明記した、とも語っています。

 日本人は、物事を丸く収めるために何でも謝ってしまう。これは海外では絶対にやってはいけないことです。当社の社員が海外に赴任する前にも、私はこの点を厳しく教えます。

 90%は相手に責任がある交通事故でも、うっかり謝れば、100%こちらが悪者にされてしまいます。これは海外での常識です。日本の常識は世界の非常識なのです。

 「慰安婦の像がある限り、私は韓国との協力や交流はしない」と韓国の大学や金型関係者、教育機関などに一斉にメールを送りました。あの親韓のイトウサンが?と、大騒ぎしているようです。ところが、この最中に韓国の会社から「技術協力か合弁会社設立を検討してくれ」という連絡が来ました。


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鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

鈴置 高史 日本経済新聞社編集委員。
 1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
 77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
 95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
 論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
 「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

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