「早読み 深読み 朝鮮半島」

「慰安婦」で韓国との親交もお断り

「反日国家に工場を出すな」と言い続けてきた伊藤澄夫社長に聞く(下)

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2012年11月2日(金)

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 この金型をご覧ください(下の写真)。手をかざすと指や手のひらが金型の表面に映るでしょう。これが超鏡面です。この、ぴかぴかに磨きあげた金型を使って初めて、あの鋭角的な形状を作れるのです。

まるで鏡のように磨き上げた金型が、断面の鋭い部品をつくる(写真提供:伊藤製作所)

鈴置:要は「超鏡面」に磨ける高精度の研削盤がミソ、ということですね。

伊藤:その通りです。この金型を作るため、我が社が最近購入した超精密研削盤の価格は普通の研削盤の4倍以上です。でも、先ほど申し上げたように部品の製造コストが大幅に落ちるので、十分元がとれると判断し、買いました。

 この研削盤を含め、こうした金型を作る技術は中国や韓国にはありません。彼らも追って来ます。しかし我々も、これまで手がけていなかった領域の技術も導入し、追い上げをかわしているのです。

レアアース同様、金型でも報復できる

2010年に尖閣で中国と日本が衝突した際、中国はレアアース(希土類)の対日輸出を止めました。日本は輸入先を多角化したほか、レアアースが不要になる技術を相次ぎ開発しました。市況も下がり、中国のレアアース最大手が操業を停止するに至りました。

伊藤:それがいい例です。金型もそうですが、日本は技術を武器にできるのです。日本の高度な技術や製品、日本でないと生産できない多くの特殊材料の輸出を止めれば、中国や韓国の経済は冷え上がってしまいます。それはレアアースが止まったことによる日本の困惑と比べ、はるかに深刻なものです。一方、中韓から購入しなければならない特殊材料は1種類もありません。

中国や韓国の金型メーカーが、その超精密研削盤を買い入れないでしょうか。

鈴置:これだけ精密な加工ができる機械は、ワッセナー・アレンジメント――昔のココム規制ですが――により、中国は日本から輸入できないでしょうね。

伊藤:その通りです。

鈴置:韓国も、これからは日本製の精密機械の輸入が難しくなるでしょう。最近、新日鉄がPOSCOを訴えたように、日本の技術が韓国企業経由で中国に流れるケースが目立つようになっています。

 韓国相手だとつい脇が甘くなる日本人の癖を中国が利用していると見る向きもあります。いずれにせよ、韓国への技術移転や素材・機械の輸出も厳しく規制されていくと思われます。


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鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

鈴置 高史 日本経済新聞社編集委員。
 1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
 77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
 95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
 論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
 「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

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