「早読み 深読み 朝鮮半島」

「慰安婦」で韓国との親交もお断り

「反日国家に工場を出すな」と言い続けてきた伊藤澄夫社長に聞く(下)

バックナンバー

2012年11月2日(金)

2/6ページ

印刷ページ

鈴置:なぜ、日本しかできないのでしょうか。

伊藤:理由は2つあります。まず、金型の設計力です。日本には長年、蓄積したノウハウがあります。加えて、我々は新しく開発された技術を日々、注ぎ込んでいます。日本から技術移転しない限り、そう簡単に真似できません。

「近道探し」では切り拓く力がつかない

鈴置:しかし、中国にも腕のいい職人はいます。

伊藤澄夫(いとう・すみお)
金型・プレス加工の伊藤製作所代表取締役社長。1942年、四日市市生まれ。65年に立命館大学経営学部を卒業、同社に入社。86年に社長に就任、高度の金型技術とユニークな生産体制で高収益企業を作り上げた。96年にフィリピン、2012年にインドネシアに進出。中京大学大学院MBAコースなどで教鞭をとる。日本金型工業会の副会長や国際委員長など歴任。著書に『モノづくりこそニッポンの砦 中小企業の体験的アジア戦略』がある。

伊藤:金型が職人芸の世界だった時代は終わりました。組織人が集団戦法で戦う時代です。個人の能力が高いのは当たり前。その上にチームワークや愛社精神、こだわりが要るのです。

 経験者が喜んで若い人を教える、という風土がないと強い会社はできません。中韓にそうした風土は希薄です。日本と近隣諸国とはそこが決定的に異なるのです。

鈴置:“追う者”は近道を選べます。

伊藤:“近道”ばかりを探していると、自ら道を切り開く能力は身に付きません。真似は出来ますが、新しいモノを作り出すという意味で、近隣諸国が10年や20年で日本に追いつけるとは思えないのです。

 設計力に加え、もうひとつは、日本にしかない特殊な加工機械の存在です。プレスとは金型という“刃物”で金属をたち切る加工方法です。

 先ほど「名刀で大根をすぱっと切ったよう」と言いました。金型という“刃物”を研ぎ澄まして名刀を作ることで、部品の切り口もシャープな断面となるのです。

「名刀」を作る研削盤は日本にしかない

 では、どうやって「名刀を作る」のか。金型の表面を徹底的に平らに研削して「超鏡面」――つまり、鏡のように磨きあげるのです。そうすると金型が金属の部材をすぱっと切れるようになります。その結果、このように歯車の形がきれいに抜けるのです。


バックナンバー>>一覧

関連記事

参考度
お薦め度
投票結果

コメントを書く

コメント[0件]

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

鈴置 高史 日本経済新聞社編集委員。
 1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
 77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
 95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
 論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
 「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

注目コラム〜アジア・国際のお薦め

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事