発信箱:縄文か 弥生か=青野由利(論説室)

毎日新聞 2012年11月02日 01時48分

 「縄文系のモデルさんはすぐ見つかったのに弥生系が見つからなくて」。人類学者の馬場悠男(ひさお)さんから苦労話を聞いたことがある。国立科学博物館で「縄文VS弥生」展を企画した時のこと。プロの女性モデル10人を面接したら、みな「濃い顔」の縄文系。2度目の面接でやっと「彫りの浅い」弥生系に出会ったというから、現代人は「縄文好き」らしい。

 「自分はどっち?」と思うかもしれないが、多かれ少なかれ混血だ。定説は、「縄文人が住む日本列島に弥生人が渡来。遺伝子が混じりあったが、北海道と沖縄ではその度合いが少ない」。最近、日本のチームが発表した「アイヌ民族と琉球の人が遺伝的に近い」という論文もこの説を支持している。

 結論は「やっぱり」だが、インパクトを感じたのは最新技術の力だ。個人差のある遺伝子型60万種類を分析。グラフ化すると遺伝的に近い集団がまとまり、一目でわかる。日本人は韓国人や漢民族ともはっきり分かれるというから驚きだ。

 「無罪主張に転じたのは科学技術の進歩で鑑定が可能になったため」。マイナリさんの冤罪(えんざい)事件で東京高検が述べている。だが、その結論を得るのに人類集団を分析するような高度な技術はいらない。技術のせいにするのはお門違いだ。

 むしろ、今回の論文をみると、技術はもっと先に進んでいて、やがて遺伝子分析で人種までわかりそうな気がしてくる。とすれば、さらに注意深い使い方が必要になる。検察はもちろん、遺伝子知識のバージョンアップは社会全体の課題だ。

 ゆくゆくは遺伝子のデータからモデルを選ぶ? 妄想と科学の距離は案外近いかもしれないのだ。

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