自衛隊、尖閣に最強エリート部隊投入を視野に「1人で歩兵200人分の戦闘力」

2012.10.31


米グアム島で今年9月に行われた離島防衛の上陸演習には陸上自衛隊と米海兵隊の隊員が参加(大西史朗撮影)【拡大】

 沖縄県・尖閣諸島をめぐって中国との軍事衝突の危険性が高まっている。陸上自衛隊の精鋭を集めた「西部方面普通科連隊」が米軍との合同訓練に参加するなど尖閣での有事に向けた準備を進めているが、仮に戦局がもつれた場合は、陸自・海自の特殊部隊が第2、第3の矢として立ち向かう。その能力は群を抜き「1人で歩兵200人分の戦闘力を持つ」(防衛省関係者)という。ベールに包まれるエリート集団の実力とは−。

 「赤い船団」がわがもの顔で日本の領海を荒らしている。

 第11管区海上保安本部(那覇)によると、尖閣周辺の接続水域で31日午前、中国の監視船5隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺での監視船の航行は20日以来、12日連続。領海侵犯も9月11日以来、10月30日で8回を数える。絶え間ない挑発に「国境の海」の緊張は解けない。

 「監視船は『海監』と『漁政』で、なかでも『海監』は、日本の資源エネルギー庁に当たる国土資源部国家海洋局の船舶だ。こうした公船に中国軍の兵士が混ざっている可能性があり、海軍の艦船も周辺海域に近づく動きを度々みせている。中国側が尖閣への上陸を強行し、そのまま戦闘状態に突入する危険性は依然高い」(防衛省関係者)

 中国軍が尖閣を不法占拠した場合、本紙で既報(17日)の通り、島嶼(しょ)防衛・奪還を主任務とする陸自の「西部方面普通科連隊(西普連)」(長崎県佐世保市)が第一陣として送り込まれる目算が高い。

 「24時間、遅くとも3〜4日以内には尖閣を奪還できる」(防衛筋)との見立てが大勢を占めるが、状況によっては長期化することもあり得る。

 そうした不測の事態を踏まえ、自衛隊では特殊部隊の投入を視野に入れる。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏が説明する。

 「自衛隊が抱える特殊部隊は2つあり、1つは陸自の『特殊作戦群』で、もう1つは海自の『特別警備隊』。米陸軍のグリーンベレーや海軍のシールズをモデルに創設された精鋭中の精鋭で、普通の歩兵部隊の数十倍の戦闘力を備える。第1陣が作戦に失敗した場合、彼らが投入されることになる」

 前者の「特殊作戦群」は2004年3月に編成された日本初の特殊部隊で、パラシュート部隊の第1空挺団が拠点にする習志野駐屯地(千葉県船橋市)に本部を置く。約300人の隊員のうち、200人が戦闘要員で、15万4000人(防衛白書・平成24年版)を擁する陸自のトップに君臨するエリートたちだ。

 「遊撃活動のエキスパートであるレンジャー資格を持つ隊員の中から、合格率10%以下という超難関の選抜試験を経て選ばれる。略して『特戦』、あるいはスペシャルの頭文字を取って『S』とも呼ばれる。選抜後は、米陸軍特殊部隊の『グリーンベレー』を育成する特殊学校に留学したり、なかには民間軍事会社でフランス外国人部隊の元隊員ら戦闘のプロから軍事教練を受ける者もいる」(陸自関係者)

 対ゲリラ戦が主任務の「特戦」は、「1人で歩兵200人分の戦闘力がある」といわれるが、その正体はトップシークレット。装備や戦闘員のプロフィルも公式には明かされていない。

 ベールに包まれる部隊は尖閣の戦場でどのような作戦を展開するのか。

 世良氏は「夜間に暗視スコープを装備し、固定翼機で3000〜5000メートルの高高度からパラシュートで島に急降下。サイレンサー付きのライフル銃で敵を狙い打ちする」とみる。

 敵が戦闘拠点を築いていても対処は可能で、「閃光と轟音で相手の目と耳をふさぐスタングレネード(閃光発音筒)を発射。相手がひるんだ瞬間に突入し、相手を制圧してしまう」(世良氏)という。

 海自が抱える特殊部隊も強力だ。江田島基地(広島県江田島市)に所属する「特別警備隊」(特警隊)は、海上戦のエキスパートで約70人の隊員で構成される。

 世良氏は「1999年3月に能登半島沖で発生した不審船による領海侵犯事件がきっかけで組織された。モデルになったのは、オサマ・ビン・ラディンの暗殺作戦も行った特殊部隊のシールズ。船舶に乗り移って武装テロリストや敵軍を制圧したり、海上から上陸してゲリラ戦を展開したりする」と解説する。

 防衛筋によると、尖閣奪還の任務を命じられれば、時速約60キロで航行する特別機動船で島の沿岸に接近。「気づかれないように潜水して、島に陣取る中国軍を急襲する」のが想定されるシナリオという。

 横暴中国が牙をむき出しにし、自衛隊の“最終兵器”が動き出すときが来るのか。尖閣を脅かす挑発行為が続いているいま、絵空事だと笑ってはいられない。

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