私の事故検証は正しかった。しかしながらシンドラーエレベーター死亡事故がまた発生してしまった。悲しく、そして悔しい。
それでも、一つだけ光明を見いだすことができた。それは、東京電力原子力発電所の事故(福島第二原子力発電所も含まれる)の調査報告書を提出した「失敗学」が、何の役にも立たないことが決定的になったことである。
2006年の6月3日に起きたシンドラーエレベーター、高校生死亡事故後の「失敗学」のレポート記事を紹介する。
失敗年鑑2006
シンドラー、エレベータ事故
東京大学農学部
中村拓也
<引用開始>
本記事は、2006年12月11日、畑村洋太郎失敗学会会長の第5回失敗学会年次大会講演 『エレベータ事故に学ぶ』を元に構成しました。
<中略>
【原因】
様々な原因が重なり合って今回のエレベータ事故が引き起こされたが、大きく「直接原因」、「社会について」、「設計について」の3つに分けて述べる。
直接原因
「ブレーキパッドがすり減るとブレーキがかからなくなる」と報道されたが、仮に全てが摩耗し無くなってもブレーキ腕部分が動きさえすれば摩擦でブレーキドラムは止まる。 よってパッドがすり減ったので止まらなかったという説明は間違いではないか。パッドがすり減るとブレーキのかかりが悪くなることはあるが、 何もしないのにエレベータが動き出す、というブレーキが完全に力を与えなくなる状況は考えられない。
実際の原因はブレーキを開く信号の異常、つまり制御部分の不良と思われる。そうすると考えられるのは以下3つである。
• 組み込みソフトのバグ
• 半導体のコンタミネーションによる誤配線
• 実装基板の劣化
現在ではどのような機械でもマイコンが導入されている。より便利に活用するために機能を付け足していくとマイコンの中で相互干渉が起こり必ずミスが発生してしまうが、 そのミスを事前に発見するのは非常に困難であり、実際にはトラブルが起こる毎に潰していくしかない。 このような現状から考えて、組み込みソフトのバグによるミスの可能性が非常に大きい。 少なくとも、昔から時々不具合があったのはほとんどがこれに因るものと言えるだろう。トラブルの再現も不可能で原因箇所も分からないので、 修理といっても総取り替え以外に方法がない。
また、半導体を作る工程で光やX線を当てるが、その元になる基盤にゴミが付着していると誤った配線が出来る。 これが半導体のコンタミネーションによる誤配線であり、しばしば不良動作を起こす。
一番可能性が大きいのは実装基盤の経年劣化である。近年はポリイミド樹脂などを用いているが、多層で作ったプリント基板は経年劣化をしてしまう。 これが10年から15年も経過すると断線、他の所と繋がる、割れる、といった様々な不具合が発生する。
今回の事件の直接的な推定原因としては、これらが複合的に発生したのが考えられる。
<引用終了>
http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=nenkan2006_04_Schindler
私も、事故発生時以降、ソフトウエアの不具合を疑った。しかし、数年後に判明した直接の原因は、ブレーキを開閉させる電磁コイル(電磁石の力でブレーキを解放させる機器)のショートにより、ブレーキが「半開き(ブレーキパッド、自転車前輪ブレーキの摩擦ゴムのようなものが軽くドラムと接触している状態)」になり、異常にブレーパッドが摩耗したことによるものと報道された。つまり、上記の「失敗学」は、事故原因究明は、完璧に間違ったのである。
今朝の朝日新聞の記事に極めて重要な点が記されている。
<引用開始>
県警によると06年にあった東京都港区での高校生(当時16歳)の死亡事故を受け、今回の事故機にブレーキの摩耗を感知する「摩耗センサー」が取り付けられていたという。
<引用終了>
ブレーキ摩耗センサー(自動車用)
S&Eブレーキ株式会社ホームページ参照
http://www.advicsaftermarket.co.jp/support/maintenance/detail/4/index.html
東京ディズニーランドのジェットコースタータイプのアトラクションには、相当数のセンサーが設置され、安全運行を監視しているが、ブレーキパッドの摩耗センサーは取り付けられていない。運行前と運行終了後に行われる目視点検という「人間の目」で直接確認している。(補助的なセンサーは備えている)
2006年の事故後に、シンドラー社がこのブレーキ摩耗センサーを全機に取り付けたのであろう。自動車用の摩耗センサーから類推すると、厚みがあるプレーキパッドが摩耗すると、センサーの「感知部」が回転するドラムと接触し、警報を発するというシンプルの仕組みであろう。
2006年に起きた事故後、再発防止のために設置されたセンサーシステムは機能しなかったのである。
ここで、二度の死亡事故に共通する事実を記す。
◇被害者は、エレベーターに対して、「動け」というコマンド(行き先のボタンを押す)を発していない。
◇かごの上昇によって挟まれ死亡している。
ロープ式のエレベーターの構造はシンプルである。昔の井戸水汲みのように、滑車(ドラム)にロープをかけ、片方に人が乗るかごを、他方に重力でかごを上昇補助させる重しをつけ、ドラムを巻き上げ機でコントロールして上下させるという仕組みである。
今回の事故も、かごの上昇によって起きている。アパホテル金沢は地上14階、地下2階建である。被害者は4階から地下一階へ向かうことになっていた。
このことから、重しが重力により落下し、かごが上昇したことは間違いないと考える。つまり、2006年に高校生が死亡した事故と同様に、単にブレーキが利かなくなったという事故原因であるのは、ほぼ間違いないと思われるのである。
話をブレーキ摩耗センサーに戻す。誰もが考えるのが「なぜ、センサーが機能しなかったのか」という疑問点である。
今の段階で、その原因は判らないが、「そもそも論」で考えてみたい。
「そもそも、ブレーキ摩耗センサーは誰に警告を発する仕組みだったのか」という疑問である。IT時代に生きる私たちは、センサーが異常を感知したら、保守点検会社の中央コンピュータに情報が瞬時に送られ、保守点検要員が飛んでくる、そう考えないだろうか。
それとも、エレベーター制御盤を通じて、使用者(所有者のアパホテル)に警告を発する仕組みなのか。もしそうだとしたら、使用者はその警告を見逃していた可能性はないのか。
耐震偽装事件で問題になったアパホテルである。安倍晋三自民党総裁との特別な関係も取りざたされた。現時点では「勘ぐり」でしかないが、シンドラー社と保守点検会社を家宅捜索する、その「素早さ」を鑑みると、2006年の事故後のように、真の犯人隠しが公然と行われることを心配する。
このシリーズは、書けるだけ書いていくが、最後に表題の「原発事故との関連性」について簡単に記す。
◇新しい技術(二重ブレーキなど)が生み出されたが、古い機種にはバックフィット(高性能ソフトウエアにコンピュータをバージョンアップするようなもの)されることはなかった。
◇日本には、古く危険な発電所や昇降機械が数多く存在する。
◇「原子力村」があるように「エレベーター村」が存在する。
◇ヨーロッパ車の故障が町中の自動車修理店で修理できず、メーカー(ディーラー)で修理されるように、外国規格の設備の保守点検は、日本の会社では完全にカバーできない。
繰り返すが、この事故に関しては何回も書いていきたい。なぜならば、東京ディズニーランドで同様な事故があれば、30分後には事故の全容が解明されることを私は知っているからである。
参考資料
資料4 エレベーター事故問題[PDF:448KB] - 消費者庁
エレベーター事故問題
「独立した中立な第三者の事故調査機関」設置を訴えて
エレベーター事故被害者遺族
市川 正子
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/100820kentoukai_4.pdf
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