特集:「中国 王朝の至宝」展 松本健一さんと高樹のぶ子さんが見どころ語る
毎日新聞 2012年11月01日 東京朝刊
◇四千年の歴史を俯瞰
中国の歴代王朝が残した文化財から逸品をよりすぐった特別展「中国 王朝の至宝」が東京・上野の東京国立博物館で開かれている。中国に詳しい評論家で麗沢大教授の松本健一さんと、作家の高樹のぶ子さんに、展覧会の見どころや中国史の魅力を話し合ってもらった。【司会は伊藤和史・東京本社学芸部編集委員】
◇統治の原理の奥深さ−−松本健一さん
◇異文化許容した王朝−−高樹のぶ子さん
−−まず、中国との個人的な関わりについて教えてください。
高樹さん 日中文化交流協会の作家代表団の団長として、若い作家を連れて9月25日から出発の予定だったんです。でも、残念ながら延期になってしまって……。
生まれが山口県で、昔から大陸とはつきあいがありました。祖父が戦前、中国や台湾の若者7、8人を日本の大学に入れる活動をしていました。東京にいる人より、関係は近いですね。
松本さん (研究対象の)日本近代史は片方ではアメリカに、もう片方では中国に頭をぶつけながら自己形成してきた。そして両方に挟まれ、戦争に負けました。だから中国の問題は常に頭にあります。
北京の日本語研修センターで教えていた1983年は、秦の始皇帝の兵馬俑(へいばよう)発掘の最中でした。その前の文化大革命では、文化財はむしろ破壊される一方だった。政権が安定して経済が発展しないと、大規模な発掘もできない。今回は90年代から2000年代にかけて発掘されたものが随分あって、展示の目玉だと思います。
−−日中関係が混迷していますが、歴史を知らないと外交交渉もできません。中国史、中国文明のどんなところが魅力ですか。
高樹さん 本展は、夏(か)王朝から始まっています。これまでは(黄河中流域の)中原(ちゅうげん)が文明発祥の地と思われていたのに、(長江上流の成都に近い)蜀(しょく)から金が出ていますね。
松本さん 中原から文明が始まっていると錯覚しがちなのは、西安や洛陽の中原が発掘の中心だったからです。実は蜀などは、極めて鉱物資源も多い。最初は青銅器、次に金を使うような王朝ができている。
高樹さん 今の中国は高度成長中で、そういう時期には歴史そのものもさかのぼって成長していく。これからもっと成長すれば、さらにいろんな歴史が出てくるし考えがリニューアルされると思う。