憩室炎は憩室の炎症で,腸壁の蜂巣炎,腹膜炎,穿孔,瘻孔または膿瘍を生じうる。主たる症状は腹痛である。診断はCTスキャンによる。治療には抗生物質(シプロフロキサシンまたは第3世代セファロスポリン+メトロニダゾール)を用い,時に手術を行う。
憩室炎は,憩室に微小または巨大穿孔が生じ,腸内細菌が放出された場合に起こる。約75%の患者において,生じた炎症は局所に留まる。残りの25%では膿瘍,腹腔内遊離穿孔,腸閉塞または瘻孔を来すことがある。膀胱に穿通して瘻孔を形成するのが最も一般的であるが,小腸,子宮,腟,腹壁,場合によっては大腿にも及ぶことがある。
憩室炎は高齢患者,特に感染の危険を増加させるプレドニゾンや他の薬物を服用している患者において最も重篤である。重篤な憩室炎の大半はS状結腸に生じる。
症状と徴候
憩室炎は通常,痛み,左下腹部の圧痛および発熱を伴う。特に膿瘍または遊離穿孔を伴う場合,腹膜炎の徴候を認めることがある。瘻孔は,気尿,汚濁した帯下,または腹壁,会陰,大腿の皮膚感染もしくは筋膜感染として現れることがある。腸閉塞患者では,悪心,嘔吐,腹部膨満がある。出血はまれである。
診断
既知の憩室症を有する患者において,臨床上の疑いが強くなる。しかしながら,他の疾患(例,虫垂炎,結腸または卵巣癌)も同様の症状を引き起こすことがあるので,検査が必要である。経口および静注造影剤を用いた腹部CTスキャンが望ましいが,約10%の患者における所見は大腸癌との鑑別ができない。試験開腹が確定診断のために必要となることがある。
治療
あまり重症でない患者は,安静の上,流動食および経口抗生物質(例,シプロフロキサシン500mg,1日2回またはアモキシシリン/クラブラン酸500mg,1日3回+メトロニダゾール500mg,1日4回)により在宅で治療する。症状は通常,速やかに軽快する。患者は段階的に,柔らかい低繊維食および日々のオオバコ種子製剤に進む。2〜4週間後にバリウム注腸で結腸を評価すべきである。1カ月後,高繊維食を再開する。
より重度の症状(痛み,発熱,著しい白血球増加)がある患者は,プレドニゾンを使用している患者(穿孔や汎発性腹膜炎のリスクが増大している患者)と同様,入院させるべきである。治療は臥床安静,絶食,輸液および抗生物質の静脈内投与(例,セフタジジム1g,静注にて8時間毎+メトロニダゾール500mg,静注にて6〜8時間毎)を行う。
患者の約80%は手術なしで首尾よく治療される。膿瘍に対して経皮的ドレナージ(CTガイド下)が有効なことがある。反応が良好であれば,患者は,症状が軽減して柔らかい食事が再開されるまで入院を続ける。症状消失後2週間以上経過してからバリウム注腸を行う。
手術:
遊離穿孔または汎発性腹膜炎を有する患者,および48時間以内に非外科的治療に反応しない,重度の症状を呈する患者については直ちに手術を行う必要がある。手術を要する他の徴候として,痛みの増悪,圧痛,および発熱がある。下記のいずれかがある場合も手術を検討すべきである:軽度の憩室炎の発作が過去に2回以上(または50歳未満の患者では1回の発作);持続性の圧痛のある腫瘤;癌を示唆する臨床,内視鏡,X線徴候;男性(または子宮摘出術を受けた女性)における,憩室炎に関連した排尿障害(この症状は膀胱への穿孔の前兆となることがあるため)。
結腸の病変部を切除する。穿孔,膿瘍または著明な炎症のない健康な患者においては,断端を直ちに再吻合できる。それ以外の患者では一時的結腸瘻造設術を行い,炎症が治まって患者の全身状態が改善したあとに,二期的に吻合する。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
|