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一章
第6話 
『グアッ!』

『ドコダッ!ドコ ニ イル!』

『イヤダッ!マダ シニタク ナイ!』

森のいたる所から聞こえる、ゴブリンの叫びをBGMに作業に集中する。

高い木の上に身を潜め、脳に流れ込んで来る大量の情報を処理していく。

今はゴブリン狩りの真っ最中だ。

闇と背の低い草で覆われた地面を有効活用して、狩りをしている。

1匹、1匹狩っていると時間がかかるので、同時攻略で大量ゲットを狙う。

方法は簡単だ。

まずはスライムの触手の先端に鋭い牙を生やし、近くに目も付ける。

それを増やせるだけ増やして、同じものを50本用意する。

触手を森の広範囲に配置して、触手についてる目からの情報を頼りに1匹、多くても2匹で行動するゴブリンかインプに狙いを付ける。

この時に音を立てない様に気を付ければ、他の問題は暗闇と地面を覆う草が隠してくれるので対象に見付かることはない。

また、できるだけゴブリンメイジ、ゴブリンプリースト、インプを優先して狙うのを忘れない。

こいつらは俺にとって天敵であるが、取り込めば逆に力になるからだ。

ちなみに、ゴブリンメイジとゴブリンプリーストは装備で見分けがつくので問題ない。

後は隙を見つけて触手を首に巻き付け、心臓に向かって牙を突き立て強酸のスライムを流し込むだけだ。

ほぼ1撃で倒せて、反撃を受けない便利な方法である。

なお今回の狩りで対象を包み込みスライム注入をしないのは、魔法による反撃を恐れたからである。

あれは痛いしね。

だが、この方法には問題がある。

1度に扱う情報が多すぎて頭が痛くなるのだ。

これを解決するために脳を増やしてみたが、今度は思考が分割されすぎてその場から動けなくなってしまった。

その為に安全の確保も兼ねて、地上30メートルもある木のてっぺんの茂みを覆い尽くしながら、仕留めたモンスターをどんどん取り込み、次の獲物を捕らえるのだ。

これは楽でいいな。

ただ、見た目が悪すぎる。

まるっきり、エイリアンやパニック映画のモンスターの親玉である。

別に気にしないけどね。

さてと、そろそろ脳筋なゴブリンソルジャー達が騒ぎ始めたな。

異変に気付き始めたみたいだが、もう遅いよ。

君達の頼みの綱である、魔法を使える奴はいないしね。

それにしても数が多かったな、インプも合わせたら100匹は軽く超えてしまったよ。

てか、どんだけ危険視されてたんだ俺?

それもだが、ゴブリン達も数が多すぎだろう。

さすがに繁殖力が旺盛な種族なだけはあるな。

繁殖期と言うのもあるが、どれだけの女性が犠牲になったのやら。

考えてもしょうがない事か。

じゃあ、さっさと残りを捕らえてゴブリンの集落に行こうかな。

今までに探索した限りだと、この森のゴブリンの巣は1つしかないから、それを潰してしまえば終わりだしね。

生態系に影響があるのが問題な気がするが、俺の考える事じゃないね。

すぐに増えるだろうし、全滅なら全滅で他の縄張りから流れてくるだろう。

さてと行くとしますか。













恐怖に歪んだゴブリンの顔を見ながら、身体に取り込む。

こいつが森に展開していたゴブリン達のラストかな?

よし、ステータスを確認したらゴブリンの集落に行こうか。


ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:58(63)
HP:498/498
MP:254/254
物功:342
物防:298
魔功:197
魔防:223
敏捷:290

スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。

悪食・・・モンスターを取り込む時にHPを一定値回復できる。

スライムボディ・・・身体の酸性度を自由に操作できるゲル状の体。また、スライムや溶解液等による攻撃を無効化出来る。

肉体再生(1)・・・身体の一部を欠損しても即座に再生できる。ただし一度の再生にMPを一律5ポイント消費する。

影魔法(1)・・・影属性の魔法を使う事ができる。このランクでは中、上級魔法は扱えない。

炎魔法(1)・・・炎属性の魔法を使う事ができる。このランクでは中、上級魔法は扱えない。

光魔法(1)・・・光属性の魔法と治癒魔法を使う事ができる。このランクでは中、上級魔法は扱えない。

EX特殊能力:触手操作、吸収、自己進化



魔法系の能力がだいぶマシになってきたな。

とは言っても、所詮はゴブリンか。

はっきり言って、微妙な数値だ。

微妙と言えば、全体的な能力値もそうである。

モンスターだから成長は速いのだ、このレベルでこの数値は十分すぎるだろう。

だが、能力値が3桁になったとはいえど、これで中級の冒険者の下層である。

なかなかに世知辛いものだ。

だが、魔法が使えるようになったのは嬉しいな。

ファンタジーに憧れた身からすれば、まだ下級しか使えないとはいえ嬉しい限りだ。

この世界の魔法は、イメージがあれば使えるので使い勝手が良い。

どっかの世界の魔砲少女の祈祷型だったかな?

あれに似ている、簡単な事ならば願えば使えるのだ。

上級者になれば魔力の節約のために術式が問題になってくるが今は関係無い。

また、呪文はイメージをはっきりさせるための補助でしかないので、漫画やアニメにより映像として強固なイメージがある俺には必要ない。

よし、確認も済んだ事だから集落を滅ぼしに行こうかな。

おっと、その前に身体を組み替えておかないと。

影属性の魔法があれば、スライムの身体はもう必要無いだろう。

今となっては、愛着が湧いてきた身体なだけに少し残念だ。

せっかくだからゴブリンの姿になっておこうか、仲間だと思ってくれて簡単に入れてくれるだろう。

油断したところに背後から襲いかかれば楽だしね。

いくら魔法に強くなったとはいえ、正面から挑む必要性はどこにもない。

・・・あれ?

何か忘れてる気がする。

ゴブリンの巣には何かがあった様な、無かったような。

まあ、忘れるぐらいだから些細な事なんだろう。

んじゃ、出発だ。






以前に見つけたゴブリンの巣の前に来た。

ゴブリンは岸壁に穴を掘って巣を作る種族なので、巣の中は迷路のように広がっているので迷わない様にしないとな。

さてと見張りを騙して中に入るか。

『ドウ シタ?オワッタ ノカ?』

「アア、オワッタ ヨ。アトデ ナカマ ニ アエル サ。」

『ソウカ、ナラ ハヤク ホウコク ニ イッテ コイ。』

「ワカッタ。」

知性があると言っても、所詮ゴブリンか。

疑う事もなく、簡単に入れてくれた。

こいつには悪いがサクッと殺るか。

ドスッ

『グッ!』

なるべく騒がれない様に、無詠唱で出した影の槍で心臓を一突きして1撃で殺す。

死体が倒れこむ前に、地面に影を広げて音もなく沈みこませていく。

完全に見えなくなった所でキメラ術式を発動させると問題無く発動した。

発動するかどうか不安だったが、影だったので自分の一部と認められたのだろうか?

発動するなら問題ないか、良しとしよう。

・・・ふむ。

やはり魔法は使えるな、何よりスマートだ。

不覚にも、カッコイイ等と厨二的な感動に震えてしまった。

ゴホンッ

頬を赤らめつつ、咳払いをして気を引き締めなおす。

鋭敏になった聴覚と動物的直感でヤバそうなのがいる所を探していくと、一か所だけ他のよりもヤバいのがいる所を見つけた。

それは後回しにして、他の数だけは多い雑兵どもを片づけることにしようかな。





道すがら数が少ない部屋は魔法で、数が多い部屋ではスライムになって部屋を覆いつしてゴブリン達を取り込んでいく。

そんな事をしながら進んでいると、最後に回した部屋の前に着いてしまった。

中に入ると、沢山のゴブリンの唸り声が聴こえる。

中には突然変異で身長が目測二メートルで、額に小さな角が2本あるモノもいる。


・・・よし、突入だっ!


ダンッ


扉を蹴破ると想像と違わない光景が広がっていた。

いや、少し違っていた。

奥の方では2匹だけ別格のモンスターが鎮座していた。

奴等はこの狂宴を一段高い所から、にやけながら眺めている。

そうかっ、巣に来る前に気になった事はこれかっ!

ゴブリンロード、オーク。

それがこいつらの名前だ。

くそっ、ロードの事は分かっていたがオークの事を失念していた。

群れから外れたオークはゴブリンを従えてボスになる事があると、知識にあったのに。

ゴブリンロードは他のゴブリンよりもでかいだけで、ソルジャーとメイジの2種類がいるがこいつはソルジャータイプだ。

オークは2メートル30センチだろうか?

前に見たオークよりも小さいが俺よりも十分にでかい。

爪が鋭利に伸びて、人目に殺傷能力の高さが解る、赤褐色の肌に大きな身体が特徴のモンスターだ。

大きく膨らんだ筋肉が、明らかにパワータイプだと物語っている。

1匹ずつなら不意打ちで1撃なのだが、2匹しかも正面からだと少しヤバい。

だが、ここが低レベルの森で良かった。

これでゴブリンキングやオークジェネラルがいたら、ここまで来る前に統率された群れにより殺されていただろう。

それに取り込んでしまえば、ステータスが大きく伸びる。

無理矢理に思考をプラスに変えて、驚いているゴブリン達を背中から生やした、スライムで造形した蛇で飲み込んでいく。

雑魚と女達は取り込めたが、あの2匹には簡単に振り払われてしまった。

やはり、簡単にはいかないか。

強酸で溶かされた痛みと仲間を喰われた事で2匹ともキレている。

『オオオオオオーーーーッ!』

しばらく睨みあっていたが、焦れたオークに命令されてゴブリンロードが雄叫びを上げて突っ込んできた。

こいつ遅いな。

振り下ろしてきた大剣をゴブリンの身ではありえない速さでかわして、すれ違いざまに影の刃で足首を切りつける。

痛みの叫びを上げるゴブリンロードを地面に広げた影に沈ませていき、追い打ちで影の槍を撃ちこんでいく。

ドゴンッ

その様を眺めていたら、壁に身体が叩きつけられた。

いつの間にか背後に回り込んだオークが、不敵な顔で笑っている。

『貴様。ただのゴブリンでは無いな、何者だ?』

「驚いたな単純なオークが獲物を前に会話をしようとするとは。」

ゴブリンロードをキメラ術式で取り込む時間を稼ぐために、相手の会話に乗ってやらないとな。

『お前の様なモンスターを見た事は無いぞ。』

「知る必要は無いよ。お前はここで死ぬんだから。」

よし、終わったな。

後は今の身体よりも強いゴブリンロードの身体になってしまうだけだ。

『ふんっ、大言を吐くがゴブリンごときが俺に勝てるのか?』

「残念、俺はゴブリンではないよ。殺す前に教えてあげよう、俺はキメラだ。」

『なっ!?』

俺の身体が組み替わるのを見て、絶句するオークの間抜け面が面白い。

大きく開いた馬鹿口の中に身体をスライムに変えて入り込む。

『モゴアッ?』

そのまま腹に入り込み、魔法や牙の生えた触手を手当たり次第に撃ちこんでいく。

腹の中で暴れられたら、ステータスなんて関係ないだろう。

そのまま腹を食い破って外に出る。

しぶとくもまだ生きている様なので、スライムに取り込んでじっくり消化していく。

ふ~、いつも不意打ちだったから、真正面からの戦闘は疲れたな。

そろそろキメラ術式を発動してもいいかな?

お~っ、何か強くなった気がするぞ。

ステータスを見てみるか。


ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:72(90)
HP:765/765
MP:288/288
物功:574
物防:543
魔功:211
魔防:254
敏捷:347

スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。

悪食・・・モンスターを取り込む時にHPを一定値回復できる。

スライム操作・・・酸性度を自由に操作できるゲル状のスライムを自在に操る事ができる。ただし、スライムは自分の身体から切り離したらコントロールを失う。

肉体再生(1)・・・身体の一部を欠損しても即座に再生できる。ただし一度の再生にMPを一律5ポイント消費する。

媚薬体質・・・全ての体液が強力な媚薬になる。聖人ですら屈する程に強力。

影魔法(1)・・・影属性の魔法を使う事ができる。このランクでは中、上級魔法は扱えない。

炎魔法(1)・・・炎属性の魔法を使う事ができる。このランクでは中、上級魔法は扱えない。

光魔法(1)・・・光属性の魔法と治癒魔法を使う事ができる。このランクでは中、上級魔法は扱えない。

EX特殊能力:触手操作、吸収、自己進化



すごいな、物理系が大幅に伸びたよ。

それにスライムボディもスライム操作に変わったな。

常時スライムでいる訳ではなくなったからか?

まあ、いいか。

それよりも人とオークを取り込んだんだ、身体を変えよう。

見た目は人間で筋肉をオークの物にしようかな。

こんな感じだろうか?

あれ、顔がオークっぽいな。

いかつい顔で誤魔化せるレベルかなあ、微妙だ。

もっと人間か、亜人を取り込んでおくか。

出来ればイケメンが良いな~。

せめて今生ではイケメンになってみたいものだ。

ハア~。

今日は疲れた、どこか安全な所を探して寝るか。


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