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一章
第4話
こちらキメラ、応答願う。

こんばんわ、キメラ男です。

今はコポルトの巣に潜入している最中だ。

潜入という言葉に、童心の頃のかくれんぼや忍者ごっこを思い出してワクワクしている。

緊張感の欠片も無いが、1匹も逃がさない様に慎重に行動してるよ?

今は天井を走って?移動している。

どうやって、と思う人もいるだろう、解説といこうか。

簡単に言ってしまえばスライムの触手を8本ほど出して、それを天井に突き刺し足のようにして走っているのだ。

分かる人なら言ってしまうだろう、『タタ○ガミ』と。

そんな風に移動しているので悪ノリも入ってしまい、テンション上げつつ猛烈な勢いで走っている。

もはや、潜入では無くなっているが気にしない。

走る音が巣に響き渡ろうと問題無いからね。

音に気付いてコポルト達が不安になろうが、住人たちを全て飲み込んでここまで来ているので報告が行かず何が起こっているか分からないのだ。

そういう意味ではある意味で潜入かもしれない。

そんな事をしていたら、俺の侵入に気付いたコポルト達に逃げられるのではないかと思う人がいるだろう。

フッフッフ!

ぬかりは無いのだよ。

巣の端から下の階につながる入口を潰しながら移動しているからだ。

もう片方の端にある入口を残して他を潰してしまえば、コポルト達は下に逃げる事が出来ても上には行けないからだ。

サイレントキルはどうしたって?

あ~、あれね。

新スキルを手に入れて必要なくなってしまったんだ。

口で言うよりも見た方が早いので、ステータスを見てもらおうか。


ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:18(26)
HP:132/132
MP:16/16
物功:67
物防:63
魔功:18
魔防:27
敏捷:57

スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。

悪食・・・モンスターを取り込む時にHPを一定値回復できる。

スライムボディ・・・身体の酸性度を自由に操作できるゲル状の体。また、スライムや溶解液等による攻撃を無効化出来る。

肉体再生(1)・・・身体の一部を欠損しても即座に再生できる。ただし一度の再生にMPを一律5ポイント消費する。




異世界で目覚めてから今まで、倒せそうなモンスターは幼生から成体まで喰ってきた成果だろうか。

悪食なんてスキルを手に入れてしまったのだ。

これは随分と使い勝手がよく、キメラ術式でモンスターを取り込む時に一定値とはいえHPを回復できるのだ。

試したところコポルト1匹につき35ポイントのHPを回復できた。

レベルが高くなったら微妙な回復スキルでしかないが、HPが低い現段階では大助かりだ。

悪食のおかげで身体のスライムを増量し広範囲を喰う方法も今なら可能だろう。

それに加えレベルも能力も十分に高まってきた事もあり、物理ダメージに限るがコポルトの攻撃は全く痛くない。

3ポイント、4ポイントのダメージを受けても悪食で回復する事でノーダメージになるからだ。

また、俺のスライム注入によるHP以外のステータスを無視した攻撃で、コポルトならば1撃で倒せるので反撃する間を与えない。

これならば問題は無いだろう。

実際に7匹のコポルトが集まっていた部屋で試してみたが、問題無く倒す事が出来た。

さて、この階の探索はこれで終わりかな。

では、次の階に行こうか。



『ウーヴヴヴ!』


下の階に降りたら、普通のコポルトよりも一回りは大きいコポルトが待ち構えていた。

装備や大きさ、何よりそいつが放つオーラが違っていた。

こいつがこの巣のボスだと一目で分かってしまった。

ゲーム的にはコポルトリーダーといった感じだ。

多分、俺が上の階で騒ぎすぎた事が原因で呼び寄せてしまったのだろう。

まだ巣の中階層のはずなのに、ボスがここにいるという事がそれを物語っている。

騒がしくて様子を見に来たのか、敵襲に気付いて迎撃に来たのか。

まあ、その両方だろうが。

様子を見に来て、敵襲に気付いたと言ったところだろう。

だが、ボスが来てくれた事はありがたい。

こいつを倒してしまえば、後はゆっくりと残りのコポルトを喰うだけだ。

その証拠にボスの後ろには、不安気?にこちらを見る多くのコポルト達がいる。

御馳走達が向こうから来てくれた。

思わず漏らしてしまった笑いに気付いたのか、奴はより一層警戒を強めてしまった。

この時の俺はコポルトの攻撃の威力が低いのを良い事に油断していたのだろう。

相手の反撃は弱く、こちらは引きづり込んでしまえば一撃で倒せるのだ。

だから手痛いダメージを許してしまった。

死ぬ前に一撃を許してやろうなんて、テンプレ的なやられ役の余裕をかましたのだ。


『ヴオオオーーーー!』


咆哮と共に飛び込んで来たコポルトリーダーの斬撃を防御もせずにまともに受ける。

ザンッ!

良い音と共に身体の端が勢い良く斬り飛ばされる。

痛みこそないが43ポイントもダメージを受けてしまった。

やばいっ!

これでクリティカルなんて入れば一撃で殺られてしまう。

先程までの余裕なんてどこにもない。

恥も外聞もなく恐怖の叫びを上げながら、コポルトリーダーの顔に覆い被さる。

いきなりの反撃で驚いたのだろう、奴は俺を顔から引き剥がそうと引っ張りながら口を開けた。

それこそが狙いだったのだ。

安全でいて反撃を受けずに攻撃出来る場所に入り込む。

スライムの中でも俺の意思がある、核とも言える部位を中心に口から身体の中へ入り込む。

腹にまで流れ込んだ俺は、黒い強酸の身体の体積をどんどん増やして奴の身体を圧迫する。

外で奴が暴れているのだろう、世界がグルグル回るが無視してスライムの量を増やしていく。

身体の内側から溶かされ、さらに内から外へ身体を圧迫されるのだ、その痛みは相当の物だろう。

お?

弱ってきたのか、動きが鈍くなってきたな。

もう少し暴れまわって止めといこうか。






2分くらい経っただろう。

倒れこんだのか強い衝撃を感じた後に、やっと動かなくなった。

もう大丈夫なのだろうか?

不安になりながらも、そっと口から顔を出すとたくさんの犬顔がこちらを覗きこんでいた。

ボスが敵を飲み込んで悶え始めたのだ、心配して当然だろう。

俺は安全を確保すべく、周りの奴らを押し潰しながらボスを引きづり上に繋がる階段に移動する。

それを見てしまったコポルト達は恐慌状態になって逃げていく。

だが上に行ける唯一の出口は俺が居るので、みんな部屋や下の階に逃げていく。

これでやっと安心できる。

強敵を倒して安心できたので、こいつを取り込むとするか。

もう慣れてしまったキメラ術式を作業的にこなしながら、今回の事を反省する。

俺は力を手に入れ、弱い奴等を相手に無双する事で慢心したのだろう。

窮鼠猫をかむとはよく言ったものだ。

最初から本気だったら、コポルトリーダーも問題無く倒せたのだろう。

次からは最初から全力で行こうか。

ライオンはウサギを狩るときも全力を尽くすと言うしね。

ん、取り込みが終わったかな?

ステータスが大幅にアップした様なので確認しておこうか。


ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:19(43)
HP:212/244
MP:23/23
物功:109
物防:92
魔功:23
魔防:34
敏捷:89

スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。

悪食・・・モンスターを取り込む時にHPを一定値回復できる。

スライムボディ・・・身体の酸性度を自由に操作できるゲル状の体。また、スライムや溶解液等による攻撃を無効化出来る。

肉体再生(1)・・・身体の一部を欠損しても即座に再生できる。ただし一度の再生にMPを一律5ポイント消費する。



コポルトリーダーの能力はそんなに高かったのだろうか?

便宜上コポルトリーダーと呼んでいるが実際の種族はコポルトのはずだ。

なんでこんなに差があるのだろうか。

ん~、キメラ術式は言ってしまえば、自分よりも才能がある奴の才能をメリットだけ奪い取る物だ。

そしてコポルトリーダーは言わば、コポルトの中でも天才と言われるような個体だ。

強くなければトップになれないのだ、当然だろう。

つまり、リーダーやキングと言われるような固体を取り込めば大幅に強くなれるという事なのかな?

ふむ。

群れを作るモンスターの巣の襲撃って、レベルも能力も上がって2度お得?

まあいいか、とりあえず残りのコポルト達を食べてしまおうか。

今度は油断なく、躊躇いなく、殺される前に殺してしまおう。

ではでは、皆さんおやすみなさい。














この日から、夜になるとコポルトの巣から悲鳴が上がるようになったのだった。


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