虫達の合唱を子守唄に全ての生物が寝静まる。
夜行性のモンスターを別にして、繁殖期の森の夜は日中の子育てに疲れて静かになるのだ。
『グギギ!』
『ギャオ!』
静かだった夜の森がコポルト達の叫び声を合図に、にわかに騒がしくなる。
まあ、無理もないだろう。
彼らは俺という姿を見せない襲撃者に巣を攻撃されているのだから。
助けを呼ぶ間も無く、1人、また1人と闇の中に飲まれていくのだ。
彼らの恐怖はパニック映画の主人公達のそれに近いだろう。
俺が襲う側、と言うのが映画と違う所だが。
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皆さん、こんにちは。
キメラ男です。
キラーバットを襲撃してから3日が経った。
あの夜からずっと狩りを続けていたので、それなりに強くなったんだ。
睡眠はどうしたって?
俺も驚いたがこの身体は睡眠を必要としないらしいんだ。
ある時は木の上から奇襲し、親子連れのホーンラビットを親子共々スライムで包み込み、仲良く寝かし付け。
ある時は木の穴の雛に餌を運び込んだホワイトオウルの後に続いて、巣穴に入り全てを飲みこんだ。
こんな感じで繁殖期をいいことに、効率良く獲物を狩る外道の所業をしていた。
言い忘れていたが、ホーンラビットとホワイトオウルと言うのは角の生えたウサギと白いフクロウだ。
まあ、どちらもただのウサギやフクロウで済ませる大きさではないが。
他にも似たような感じで色々なモンスターを取り込んでいるが、外見ではあまり変化が無いかもしれない。
あるとすれば増やせるスライムの量が増えたことだろう。
どれほど増やせるか気になっていたが、今まで取り込んだ物の体積に比例して増えている様だ。
普段の大きさは前と変わらず直径80センチの水溜りといった感じだが、本気を出せば15メートルプール一杯くらいまで増やすことできる。
大きくなって周囲一帯を取り込めばいいのではないか、と言う人もいるだろう。
だがこれをすると飲み込んだモンスターの反撃ダメージが大きくなりすぎて、HPがすぐに無くなってしまうのだ。
そういう訳でちまちまと狩りをしているのだが、いい加減に効率が悪くなってきた。
そろそろコポルトやゴブリン等のもっと強いのを狩って良いかも知れない。
それに雑魚ばかり取り込んでいても、潜在能力が低いからか能力値の伸びが悪い。
一度ステータスを確認してから行動方針を考えようかな。
ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:10(17)
HP:53/53
MP:14/14
物功:34
物防:32
魔功:14
魔防:19
敏捷:30
スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。
スライムボディ・・・身体の酸性度を自由に操作できるゲル状の体。また、スライムや溶解液等による攻撃を無効化出来る。
肉体再生(1)・・・身体の一部を欠損しても即座に再生できる。ただし一度の再生にMPを一律5ポイント消費する。
3日前と比べれば、かなり数値が伸びた。
10レベルになった時に再生能力を手に入れたがMPが低いので有効活用出来ていない。
贅沢を言うならば、MPや魔功、魔防といった魔法関係の能力地を伸ばしたい。
だが、これらは魔法を使うモンスターを取り込まないと駄目だろう。
まあいい、今は贅沢言わずにレベルを上げるか。
今ならばコポルトを襲っても問題無いだろうから、昨日見つけたコポルトの巣穴に行くか。
コポルトは大体1メートルくらいの幼い子供と変わらない位の身長で、体の作りは人と変わりがない。
顔が犬である事以外は、だけど。
奴等は群れを作り、アリの様に地下に巣穴を掘って暮らしている。
巣穴はオークやハーピィに見付からない様に深い茂みの中につくられる。
平均的な巣穴では100匹~130匹のコポルトが住んでいて、多い巣穴では300匹はいるらしい。
とりあえず、見つかって仲間を呼ばれたら数の暴力に負けるな。
隠密行動で1匹ずつサイレントキルでいこう。
獲物を決めたなら、準備をして狩り場に行かねば。
作戦決行は、ターゲットが見張りを残して寝静まる夜にしよう。
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夜になり、俺はコポルトの巣の近くの茂みに這いつくばって様子を探っている。
見張りの数は3匹、4匹・・・違う、5匹だな。
小さい巣を選んだから見張りが少ないな。
よーし、まずは仲間から離れて居眠りしてる魔物。
あいつからいこう。
音を立てないように慎重に這って移動する。
フフフ
ぐっすりと寝ているから確実に仕留められるな。
声を出されて仲間を呼ばれても困るから、顔をスライムで覆うと同時に足を掴んで、茂みの中に隠れた身体の中に一気に引きずり込む。
やっと起きたのか、コポルトが身体の中でパニックになり暴れている。
身体がボコボコと動くのが面白いが、時間が無いので止めを刺すことにする。
身体を強酸性に変え、スライム注入をするとすぐに動かなくなる。
消化しながらキメラ術式を作動するとすぐに身体の中のコポルトが消える。
最近取り込むのにかかる時間が短くなってきた、喜ばしい事だ。
さて、コポルトを取り込んだ事で能力が大幅に伸びたようだ。
キラーバットを取り込んだ時と同様の感覚が鋭くなる様な感じもするので、時間が惜しいがステータスを確認しておこう。
ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:11(23)
HP:92/98
MP:14/14
物功:58
物防:52
魔功:14
魔防:23
敏捷:46
スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。
スライムボディ・・・身体の酸性度を自由に操作できるゲル状の体。また、スライムや溶解液等による攻撃を無効化出来る。
肉体再生(1)・・・身体の一部を欠損しても即座に再生できる。ただし一度の再生にMPを一律5ポイント消費する。
一言良いだろうか?
こいつ取り込んだだけでここまで伸びるってどうよ。
ここ3日の苦労を返せと。
もっと早く来れば良かった、ほんとに。
ハ~、もういいどんどん取り込んでしまうとしようか。
おっと、時間を使ってしまったからか、さっきのコポルトを心配して仲間が探しに来たようだ。
そのコポルトが俺と逆の方向を見ている間に、そいつに近い茂みに移動する。
タイミングを測って・・・・・・今っ!
全く持ってちょろいもんだ。
さっきと同じやり方で簡単に引きずり込めてしまった。
だんだん作業ゲーの匂いがしてきたが、これも強くなるためと思い溜め息一つで我慢する。
サクッとスライム注入で止めを刺し、キメラ術式で取り込む。
まだ3匹見張りが残ってるのだ、気を引き締めないとな。
さてと、まずは1匹になる様に誘導しなくては。
うん、あいつに決めた。
狙ったコポルトの背後に回り込み、茂みをカサリと揺らす。
音に気付いたコポルトが1匹で来てくれたので、彼が目の前に来たところで顔と足を同時に覆い引きずり込む。
今になって気付いたが、彼らは深い茂みが仇になって足元の俺に気付いていないのかも知れない。
鼻が利く種族と言えど、最初の1匹を取り込んだ時点で俺自身が彼らと同じ匂いを出すようにしていたので異常に気付けなかったのだろう。
ここに来て、ようやく仲間が3匹も居なくなったのに気付いて慌て始めた様だがもう遅い。
大胆に残りの2匹の足元にスライムの触手を忍ばせる。
ここまでしても気づかないので、そのまま顔と足を掴み引きずり込む。
早速キメラ術式で取り込んでしまい、身体の中のコポルトを消滅させる。
最後に少し叫ばれてしまったので、その声に気付いて周囲のモンスター達が起きてしまったようだ。
警戒の声を上げ始め、騒がしくなってきた。
さすがに巣の方も気付いたかも知れない。
今なら多少不自然ではあるが、別モンスターの襲撃のせいにして逃走できる。
どうするか迷い、巣の方に異常が無いかと様子を探るが・・・まだ気付いていない様だ。
フフフ、こいつはラッキーだ。
では、潜入させてもらうとしよう。
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