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一章
第1話
いっつ~。

頭が重い。

昨日は飲み会で飲みすぎたからな、二日酔いになるのも当然かもしれない。

でも何かおかしい。

俺の視線って、こんなに低かったかな。

あれ・・・俺の部屋は何時から石造りになったんだ?

しかもミイラのオブジェまであるし、いかにも魔法使いの部屋って感じだ、黒魔術の。

こんなに趣味の悪い部屋に住んでた覚えはないんだけどな~。

まだ酒が残ってるのか、夢でも見てるのか。

まあどっちでもいいか。

とりあえず水を飲んですっきりしたい。

さっきから咽が乾いてしょうがないや。

あれ?

歩けねえな、そんなに酒残ってんのか?

しゃあない、這って行くか。



お、水発見。

でも、なんで水瓶なんだろ。

相当田舎なのかな、この辺り。

まあいい、どうせ夢の中だし。

そんなことよりもどうやって水を飲むかだ。

辺りを探したけど水をすくうものが見当たらない。

う~ん、マナー悪いけど直接飲むか。

お~、意外とすんだ水だな。

俺の顔がきれいに反射してるや。

赤茶でドロドロの溶けた肌で崩れた顔が特徴のって、違うわっ!!

なんじゃこら~、つうかキモッ!

何これ、俺の顔は特徴の無いフツメンだっただろ。

こんな巨神兵の未熟児みたいな顔してないぞっ!

しかも視線が低いんじゃない背が低いんだ。

つーか、足が溶けててほぼねえし。

おいおい、身長だけは182センチあって自慢だったんだぞ。

てか、これは夢だ。

そうこれは夢だから顔を抓れば終わるはずだ。

OK!いざっ!



・・・めちゃくちゃ痛い。

て事は夢じゃない?

くそっ、焦ってもしょうがない。

一旦落ち着いて状況整理と行こうか。




ん?落ち着いたら思考にノイズがっ。

あれ、痛、痛、痛たたたたーーー!!













死ぬかと思うほど痛かった。

だが、これが御都合主義か?

急に頭が痛くなったと思ったら、オブジェだと思ってたミイラの知識が流れ込んできやがった。

とりあえず知識により分かった事をまとめてみよう。



・ここは異世界で魔法や魔物が存在し、レベルやスキルの概念がある。

・ステータスは念じることで見ることが出来るが、他人のステータスは専用のスキルが無いと見れない。

・文明レベルは中世ぐらいで機械等はないが、代わりにマジックアイテムが発達している。

・ミイラの生前は優秀な魔法使いだったが、マッドな思考であった為に国に追放された。以来、辺境に引きこもって怪しい研究をしていた。

・ここからが重要だ。俺の意識が入り込んだこの身体は、死期を悟ったミイラが自身の最後にして最高の作品を造るために邪神と取引して手に入れた知識を基に造られたキメラであり、分類上は使い魔になるが主は死んでるから俺の今後の活動方針は自由に出来る。

・文字道理のキメラではなく、今は素体である。これから先に倒した魔物を喰う事で、身体に刻んだキメラの術式が発動して、喰ったものの潜在能力(成長限界)と欲しい特徴を得ることができる。

・人・亜人種を相手にする時は生贄の儀式ができる。ミイラの知識には魔法の物もあったので実行することは可能。

・邪神の知識で造られてる故に、神々に忌み嫌われる存在で天使とかにばれると追われる。



この時に普通なら混乱なり絶望なりしてしまうのだろうが、俺はただただ喜んだ。

だってそうだろう?

社会人になってから社会の歯車となり変わらない毎日を過ごすのに嫌気がさしていたのだから。

人外であるのは残念だがいずれ亜人っぽいのならば成れそうだしね。

そしてモンスターが好むフェロモンを出すようになったため、俺はモンスターにとって極上の味わいだけでなく、力まで得られる特別な存在になった。しかも、触手がモンスターを喰らって強化するから俺の価値はうなぎ登り。って!?むしろ、ダメな事だらけだろ……。

それに使い勝手もよさそうだし。

知識によりこの世界のある程度の事は分かるし、何より自身の犯る気もある。

と言う訳で、俺はこの世界で楽しく生きて行こうと思う。

だが、自分の能力を把握しないとこの先やっていけないのでステータスを確認してみる。


ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:1(1)
HP:9/9
MP:3/3
物攻:8
物防:5
魔功:2
魔防:3
敏律:5

スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。



この身体がキメラの素体という事なので強さを期待していなかったけれど、これは酷い。

レベルの横にあるカッコの中は成長限界らしいが1はないだろう、1は。

だって、このままでは成長できないって事なんだから。

・・・・・・眠い。けど、寝たら食べられてゲームオーバー・・・・・寝れん。

いかん、早急に何かを取り込んで強くならねば!

決意したのはいいが今後のことを考えないといけない。

第一目標としてはスライムとオークを取り込みたい。

スライムはファンタジーにありがちな典型的な雑魚モンスターで、強酸性のゲル状の何かで出来ている。

身体は酸性度を自由に操作でき、自由に変形させる事が出来る。

スライムを取り込む理由は対象を包み込み消化する事でキメラの術式を発動できるからだ。

だって、人っぽい姿のゴブリンとかをガリガリと食べるのは嫌だしね。

そのうち魔法とかで代用できるといいんだが、影に取り込むみたいな形で。

でも影魔法の適性を得るまで我慢するしかないかな。

次のオークだが、これは性魔術に大いに役立つのでなるべく早く取り込みたい。

オークの怪力や防御力の高い分厚い皮膚よりもこっちの方が重要である。

だが今の俺では返り討ちにあうので、もっとレベルを上げてからになるがこの能力はぜひとも欲しいな。

当面の方針が決まったので、早速行動するとしよう。



この小屋の外はモンスターが生息しているので注意が必要だ。

一応知識によるとこの辺りには弱いモンスターしかいないようだが、俺にとっても弱いとは限らないので慎重に行動するべきだ。

子供の頃の探検ごっこを思い出してワクワクするが、何とか気を静める。

扉の前に立ち、深呼吸する。

心構えだけはしておかないと開けた瞬間にモンスターがいるかもしれないからだ。


さてと行くか!





ガチャリ




念のため心構えをしていてよかったと思う。

扉を開けたら目の前のにスライムが這っていた。

相手が驚いているうちに先制攻撃するべく、もはや人の声ではなくなってしまった雄叫びを上げながら飛びかかり、腕を組んで思いっ切り振り下ろす。

俗に言うアームハンマーであるがスライムにとっては十分すぎるダメージだったようだ。


ドゴッ


という音とともに腕と一緒にスライムが地面にめり込む。

プルプルと震えているのでまだ生きてるのだろうが、反撃して来ないのでもう2、3度と腕を振り下ろすとやっと動かなくなった。

一度大きく息を吐いて、腕を見ると少し溶けて煙を上げているが特に支障は無いので無視して初のキメラ術式の発動を試すことにしよう。

死んで動かなくなったスライムを口から吸い込むようにして食べる。

生臭くて全然美味しくなんてないが、我慢して飲み下すと腹に入ったはずのスライムがだんだん無くなっていき、身体に変化が出始める。

気分の高揚と強い快感に似た何かを感じるが、それを抑えて身体に起きた変化を確認する。

大きな変化としてはさっきまで崩れていた身体がゲル状になり纏まったくらいだろう。

身体を変形出来ないかと腕を伸ばすイメージで念じると、案外あっさりと伸ばすことが出来た。

これなら触手とかもできるかなと思い、試すとあっさりと出来てしまった。

簡単すぎて拍子抜けであったがこれから役立つので便利だと思っておこう。

などと冷静に行動していたが、今になって込みあげてくるものがある。

それはハマってしまいそうなくらいの、いっそ爽快と言っても良いくらいの強い高揚感だった。

達成感と言っても良いのかも知れない。

だが生き物を殺したのに罪悪感を全く感じなかった。

俺は善人ではなかったが人並みの倫理観は持っていたはずなのでこれは異常なのだろう。

ファンタジーだと思っていて現実としっかりと捉えていないのか何なのか。

まあいいか、そんなつまらない事を考えても良い事は何にもないし。

むしろ罪悪感などあっても、これから先やりづらくなるだけだ。

だからこれから先を考えよう。

しかし第一目標のうちの1個をもう達成してしまったな。

・・・早いに越したことはないから別にいいか。

とりあえず、ステータスを確認したいので集中してみよう。


ステータス
名前:・・・
種族:キメラ
Lv:2(10)
HP:12/15
MP:4/4
物功:12
物防:10
魔功:4
魔防:5
敏捷:6

スキル
キメラ(1)・・・取り込んだモンスターの潜在能力(成長限界)や欲しい能力を得ることができる。

スライムボディ・・・身体の酸性度を自由に操作できるゲル状の体。また、スライムや溶解液等による攻撃を無効化出来る。

さて、どうしましょう?


微妙だけど少し上がったかな?

雑魚を取り込んでもあんまり強くならないか。

まあいい、レベルを上げるのも兼ねてしばらくは雑魚狩りでもして力をつけよう。

この世界は弱肉強食が基本なんだから。


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