【震災関連死対策】遺族「遅すぎる」 定住先整備急げ 心疾患増え死者増懸念
震災関連死で復興庁が国と県による検証・対策チームを設ける方針を示した30日、認定を受けた遺族からは「今ごろになってつくっても遅すぎる」との声が上がった。東京電力福島第一原発事故で避難している高齢者らはストレスの続く生活に不安を抱き、一刻も早く定住できる環境づくりを望む。医療関係者は東日本大震災後に心不全や狭心症などの心疾患が増えていることを指摘し、関連死が今後も増える可能性を訴えている。
■行政対応に疑問
震災関連死の検証・対策チームを設けることについて川内村の仮設住宅で暮らす村内の女性(75)は「もっと早く取り組んでもらいたかった」と悔しがった。
郡山市の仮設住宅にいた昨年10月、夫(77)を病気で亡くした。長引く避難生活の中で体力が落ち、持病の治療も十分にできずに病状が悪化した。その後、震災関連死の認定を受けた。
震災から1年7カ月余りも経過した今になって、ようやく震災関連死の防止に動きだした行政の対応に疑問も感じる。「何とかならなかったのか」と悲しみは募るばかりだ。
■たまるストレス
富岡町から大玉村の仮設住宅に避難している渡辺広勝さん(75)は「避難者が2人集まれば原発事故について話し合う。行く先の見えない将来にストレスは増すばかり」とため息をついた。
渡辺さんは震災と原発事故以降、避難先は5カ所目となった。避難生活の長期化に伴い精神的な苦痛は増大している。国や東京電力などを信じることができず、将来を悲観する避難者もいるという。
「国は古里を除染すると言っているが、除染が終わり、本当に帰還できる日がくるのか」。渡辺さんは多くの避難者の気持ちを代弁する。安心して生活するために「一刻も早く災害公営住宅を造ってほしい」と強く望んでいる。
南相馬市小高区から避難し、福島市の借り上げ住宅で義父(92)と2人で暮らす女性(61)は避難先で震災前と同じ生活をしようと思っても、環境が変わってストレスがたまり難しいと実感している。
数日前、義父は女性に「こんな所では死にたくない」とつぶやいた。「最後はどこで暮らせばいいのか。考えても答えが出ない」。女性は故郷の写真を見詰めながら時間だけが過ぎるもどかしさを感じている。
■一体で支援を
福島市の大原綜合病院付属大原医療センターの石橋敏幸院長代理(57)は「震災関連死は今後も増える恐れがある」と警鐘を鳴らす。
石橋氏は同センターの心疾患の入院患者の人数を分析。その結果、死に至る危険性が高い心不全と狭心症の患者数が震災後、増えていることが分かった。震災前の平成22年は心不全143人、狭心症266人だったが、震災後の23年は心不全199人、狭心症285人、24年は6月までの半年だけで心不全84人、狭心症212人だった。
原発事故に伴う避難生活や放射線の影響を心配した日常の中で、偏った食生活、運動不足、ストレス、睡眠不足などによる糖尿病や高血圧の悪化から心疾患を引き起こしたケースが目立つという。
石橋氏は「震災の影響が大きいと考えられ、死亡すれば震災関連死に当たる可能性がある」との見方を示した上で、「個人が注意するだけでなく、行政が医療機関と一体となってサポートする必要がある」と強調した。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)