焦点:トヨタの中国苦戦、反日デモより「読み違い」が原因か

2012年 10月 29日 16:28 JST
 
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[北京 29日 ロイター] トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)の中国における苦戦の原因は、反日デモよりはるかに根が深い。問題は2008年のサブコンパクトカー「ヤリス」(日本名ヴィッツ)投入の失敗にさかのぼる。ヤリスは、価格に敏感な中国の消費者にそっぽを向かれる手痛い失敗となった。

トヨタにとって各国で成功をおさめたヤリスの中国投入は、ブランドの確立と、未だ実現していない中国での年間販売台数100万台向けての起爆剤になるはずだった。

しかしながらヤリスは、台頭しつつある中間層のみならず、昔ながらの富裕層に対しても的外れな存在となってしまった。

内部関係者や販売代理店からみると、社会的地位にこだわる階層にはアピールせず、小型で存在感に欠ける車との印象はぬぐえない。

一方で倹約志向が強く初めて車を購入する層にとっては、米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N: 株価, 企業情報, レポート)のコンパクトカー、シボレー「セイル」よりも約55%も価格が高いヤリスは検討対象とはならない。ヤリスの販売価格帯は8万7000元(1万3900ドル)から。トヨタは「どうしても負けられない」市場で、競争力を確保できていないのだ。

トヨタのある代理店経営者は「ヤリスはターゲットとする市場にとっては、価格が高過ぎる。この層の消費者は非常に価格に敏感だ」と述べた。

9月の反日デモの前の8月までの統計によると、ヤリスの月間販売台数は平均1250台にとどまっている。これに対し、日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)の「ティーダ」は1万2000台、GMのセイルは1万7000台だった。

ヤリスは、トヨタがいかに中国の自動車市場の変化を読み違えたかを示している。中間層が車が買えるようになるペースの速さを認識できず、この新たな購買層の大半が実用本位のモデルを好むという状況を把握し損なった。   続く...

 
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