熱血!与良政談:やはり参院は要らない?=与良正男

毎日新聞 2012年10月31日 13時02分

 「なぜ一字一句違わない原稿を1日に2度も読まないといけないのか」

 小泉純一郎氏が首相になった直後の話だ。衆院本会議場、参院本会議場で別々に行われる首相の施政方針演説と所信表明演説について、小泉氏はこんな不満を漏らし、演説一本化の検討を提案したことがあった。

 ところが、各党とも特に参院側は反対。憲法は「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」と2院制を明記している。これを盾に「憲法上無理がある」という人もいたし、当時の参院自民党のドン、青木幹雄氏は「衆参の本会議場は両院の議員全員が入れない」と反対したと記憶する。

 ちなみに英国議会は議場の席がもともと少なく、議員の立ち見はよくあるそうだが、この手の話になると、なぜか参院議員は与野党を超えて「自分たちの方が軽んじられるのでは」と疑心暗鬼になるらしい。提案は間もなく立ち消えになった。

 その後も小泉氏は憲法改正のテーマとして1院制の検討を提起し、04年の参院選前には当時、民主党代表だった菅直人氏も論議に乗りかけた時期もあったが、これも各党参院側の猛反対で消えた。演説の一本化すらできないのだから、当然の結末だった。

 それが驚くではないか。29日に始まった臨時国会で、野党が多数を占める参院が何と野田佳彦首相の所信表明演説を拒否したというのだから。

 自民党参院議員の説明によると「所信表明演説は院が求めて首相が応えるという性格のもの」だそう。先の通常国会で参院は野田首相の政治責任を問う問責決議を可決したのだから、参院が求めて首相の演説を聞いてやる必要はないという理屈らしい。一方で審議の全面拒否は国民に評判が悪いから予算委員会などは出席するというからややこしい。

 同時に自民党は「参院の問責決議に対し、野田首相はけじめをつけろ」という。そして、その「けじめ」とは衆院解散時期の明示だそうだ。ここでやっと理解できた。要するに年内解散に持ち込むための駆け引きなのだ。

 参院が「政局の府」と呼ばれるようになって久しい。だが、政局重視が極まって、いよいよ論戦の場を自ら放棄するようになってしまった事態は深刻で憲政史上に残る汚点といっていい。日本維新の会が2院制の見直しを提起している折も折だ。やはり参院は不要ではという議論に自ら火をつけてしまったと私は思う。(論説委員)

毎日新聞社のご案内

TAP-i

TAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM