ANUBISでの苦い想い出
テーマ:小島秀夫「ロボットアニメ世代による、本物のロボット・アクション・ゲームを創りたい!」という当時の若いスタッフの熱意を受けて、制作を決意した異例のタイトルでもあります。
発売から6年経った今でも、メディアやユーザーの評価はすこぶるいいタイトルです。
ですが、発売時期の見極めを誤った為に中ヒットはしたものの、期待数値には届きませんでした。
当初は年末発売を目指して制作を進めていたのですが、他社の大型タイトルが年末に集中するという状況を鑑み、競争の少ない時期である、翌年の2月に急遽、発売日を変更したのです。
勿論、発売日順延で生まれた期間はゲームのクオリティUPに使いました。
結果的にはそれが裏目に出ました。
他社のタイトルも同じような戦略的発売日の変更や、開発遅延が相次ぎ、蓋を開けてみれば、大型タイトルのほとんどが2月~3月に集中してしまったのです。
それぞれが期末ギリギリの市場で喰い合う形になりました。
2作目とはいえ、オリジナルタイトルに近い「ANUBIS」は健闘こそしたものの、爆発的なヒットの機会を逃してしまいました。
全てはプロデューサーである、僕の見極めミスでした。
あの時、発売日を間違わなければ、「ANUBIS」は「MGS」に続く、コジプロの定番ブランドとして今もシリーズ展開が続いていた事でしょう。
スタッフやファンの皆さんには申し訳ない事をしたと思ってます。
その後、「ANUBIS」はベスト盤(苦肉の策である特殊な)投入や、地道なプロモーションを継続しながら、細く長く販売を続けました。
ゆっくりではありましたが、「ANUBIS」は年月をかけて、多くのユーザーの手に取って貰い、世界中のユーザーの心に触れて頂けたと思っています。
ありがたい事にゲームの評価は未だに高く、カルトな名作として語り伝えられています。
インターネット上ではゲームプレイ映像や僕の編集したトレーラーが何度も繰り返し視聴されてると聞きます。
だからこそ、「続編を待ち望む」熱狂的な声が途絶えないのだと思います。
ここまで書けば、おわかりでしょう。
ファンの熱望がある以上、ファンの期待に応えたい!僕も、スタッフもそう思っています。
「ANUBIS」の続編をいつかは創りたいです。
そして、「やるのであれば今度こそ、『ANUBIS』を成功させたい!」と思っています。
企画の概要や売れる仕掛けのアイデアは既に頭の中にあります。
ただそれがいつ実現し、制作(グリーンライト)となるかは僕らにもわかりません。
コジプロ内の制作ラインは現状でいっぱいいっぱいなのです。
世の中では「名作ゲーム」と賞賛されながらも、販売本数が振るわない為、一般には話題にも登らず、フランチャイズとしては消えていく不運なゲームがあります。
ヒットビジネスである以上、それは覚悟しなければなりません。
「いいゲーム」が必ずしも「売れるという時代」でもありません。
「ANUBIS」の火を再び起こすとなれば、二度と過ちを犯してはなりません。
だからこそ、時期を慎重に判断しなければならないのです。
時期の約束はできません。
でも、続編の約束はできます。