静電誘導・誘電分極
導体に帯電した物体を近づけると、導体の帯電物体側に、帯電物体の電荷とは逆の
電荷
が生じ、導体の帯電物体とは反対側に、帯電物体と同じ種類の
電荷
が生じる現象を
静電誘導
と言います。
右図では、絹とこすり合わせて
正電荷
を帯びたガラス棒を導体球に近づけた状況を示しました。導体球のガラス棒と向き合っている側に
負電荷
が
クーロン力
により誘起され、導体球の反対側には
正電荷
が誘起されます。
右図のように、導体に
電荷
が誘起されるときには、導体表面に誘起されます。これは、導体内で誘起される
電荷
同志に
反発力
が働き、導体内では
電荷
(
実際には電子
)
が移動可能であるため、互いに遠ざかろうとするからです。右図のように、導体表面に誘起された
電荷
に
電気力線
が全て終端してしまうため、導体内には
電気力線
は発生しません、つまり、導体内には
電界
は生じません。
電界
の大きさは
電位
の変化率の絶対値になる
(
電位・電圧
を参照
)
ので、導体内は
等電位
になります。従って、導体表面は等電位面であり、導体表面において、
電気力線
の接線はは導体表面と垂直になります。
等量の
正電荷
と
負電荷
を蓄えている極板の間に導体を挿入した状況を右図に示しました。
右図のように、導体中を
電荷
が移動して、
正電荷
が並んでいる極板側には
負電荷
が誘起され、
負電荷
が並んでいる極板側には
正電荷
が誘起されます。導体内部には
電界
は生じません。また、導体内では
等電位
です。右図の
A
−
B
で切断したとき、
電界
と
電位
の状況をグラフに示しました。
等量の
正電荷
と
負電荷
を蓄えている極板の間に誘電体
(
絶縁体
)
を挿入した状況を右図に示しました。誘電体内部に存在する原子、あるいは分子が保持している
電荷
分布に偏りが生じて
(
図では模式的に書いてあります
)
、導体を挿入した場合と同様に、誘電体表面には、
正電荷
が並んでいる極板側には
負電荷
が誘起され、
負電荷
が並んでいる極板側には
正電荷
が誘起されます。但し、導体を挿入した場合とは異なり、
電荷
が移動するのではなく、誘電体内の各原子・分子の
電気
的な分布に偏りが生じるだけです。
このように、誘電体内に存在する原子、分子の
電荷
分布に偏りが生ずる現象を
誘電分極
(
あるいは単に
分極
)
と言います。
誘電体では、
電気力線
の一部は誘電体内をそのまま通過します。ということは、誘電体内には
電界
が存在し、
電位差
がある、ということです。右図の
A
−
B
で切断したとき、
電界
と
電位
の状況をグラフに示しました。
右図で分かる通り、誘電体挿入前と比べて、分極の分だけ
電気力線
の本数が減り、
電界
が弱まることがわかります。
誘電体を入れることにより、
電界
の大きさが
(
です
)
になるとき、
を誘電体の
比誘電率
と言います。また、
を誘電体の
誘電率
と言います。
地球は巨大な導体です。地面に金属棒などを立てて電気を逃がす経路を作ることを
接地
と言います。接地を表すのに、右図の上に書いてある記号を使います。
右図のように、中空の導体
A
の内部に、さらに中空の導体
B
を置き、さらにその中に導体
C
を置きます。導体
B
と導体
C
は接地されているとします。
導体
A
に
正電荷
を置くと、導体
B
の外側の表面には、右図のように静電誘導により
負電荷
が誘起されます。
しかしながら、導体
C
の電気的状況には全く変化が置きません。このように、接地された中空導体は、自分自身の電気的状況に変化が起きても、その内側にある空間の電気的状況を変えないのです。この現象を
静電遮蔽
と言います。トンネルに入ると携帯電話が通じなくなるのは、トンネルのコンクリートに埋め込まれた鉄筋の静電遮蔽のために電波がトンネル内に入り込まないからです。
静電遮蔽は、板状ではなく、網目状の金属でも充分に効果があることが知られています。
逆に、導体
C
の接地を解除して導体
C
に
電荷
を置いたような場合でも、静電遮蔽により、その影響は、導体
B
の外側には及びません。パソコンの内部ではデジタル回路の動作により電波が発生していますが、それが、パソコンの外側に悪影響を及ぼさないように、金属の筐体
(
きょうたい
)
で覆います。これも静電遮蔽の例です。
但し、静電遮蔽は、右図のように、導体
B
の接地を解除してしまうと効果がなくなります。導体
A
に
正電荷
を置いたとき、導体
B
の外側の表面に
負電荷
が誘起されるとともに、内側の表面にも
正電荷
が誘起され、さらに、導体
C
の表面には
負電荷
が誘起されてしまうからです。パソコンに限らず、冷蔵庫や、洗濯機のような電気機器に「必ずアースしてください」と注意書きが書いてあるのは、機器の動作による内部の電気的状況変化を受けて、危機の表面に電荷が誘起されて危険になるためです。
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