欧州危機や中国経済の減速で景気の先行きが不透明になる中、政府の経済対策とともに日本銀行の出方にも注目が集まっています。日銀のトップとして、金融政策のかじ取りを担う白川方明総裁(63)に朝中特派員のアシラフィ・キヤヌーシ君(3年)と長廣美乃さん(2年)が日銀の役割や景気が悪化した原因などについて聞きました。
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白川方明総裁=東京都港 区で、寺村貴彰撮影 |
しらかわ・まさあき 1949年生まれ、福岡県出身。東京大学経済学部を卒業後、72年に日本銀行に入行。理事などを務めた後、2006年に京都大学公共政策大学院教授となる。08年から現職。 |
安心してお金が使えるように――
景気動向読んで金利調整
Q(質問) 日銀はどんな仕事をしていますか。
A(白川総裁) お札を発行する、銀行に預けたお金を安心して使えるようにする。これが大事な役割です。金利を調節する金融政策も担います。
長い目で見て安心してお金が使えるように仕事をしています。みなさんから仕事を任せてもらえるよう、信頼を得ることを大切にしています。
Q なぜここ数年、景気が悪化したのですか。
A 景気が変動する原因については様々な説がありますが、きちんと解明されていません。
ただし、私が総裁になってからの景気の悪化について言えば、大きく二つの理由が考えられます。
一つは過度な需要の高まりの反動です。2000年代半ばにお金をたくさん供給し過ぎた影響もあって、世界中の景気が良くなり過ぎました。結果的に大きな「バブル」が発生して、それが潰れて先進国を中心に景気が悪くなりました。
二つ目は生産に対するショックです。去年3月の東日本大震災で生産設備が壊れたり、電力の供給が制約されたりして経済活動が低下しました。
Q 景気を安定させるために、日銀はどんな役割をしていますか?
A 景気が良くなれば金利を上げ、悪くなりそうなら早めに下げるのが日銀の役目ですが、景気の良しあしを正確に測ること自体、難しいことと言えます。日銀は、生産や消費などのデータを集めたり、金融機関の人や経営者に話を聞いたりして、その変化をつかもうと頑張っています。
Q なぜ日銀に入った
んですか?
A 大学で勉強した経済学を生かせる仕事をしたいと考えました。官庁や大学で働くのもいいなと思いましたが、最初に日銀に行った時に会ったのがいい人で、こんな人がいる組織なら、と思って入りました。
健康と励まし大きな支え
Q 子どもの頃の経験は今どう生きていますか。
A 毎日よく寝て、規則正しい生活を送っていました。今、とても忙しくても病気をせず健康にいられる秘けつだと考えています。
Q 政策について批判もありますが、やはり気になりますか。
A 世の中にはお金を貸す人がいれば借りる人がいます。日銀の政策により短期的には得する人もいれば損する人もいるので批判も起きます。
嫌だなと思うことも全くないとは言えませんが、中央銀行総裁の仕事をする以上、ついてまわることだと考えています。
知人からのメールや手紙には励まされています。また家族の存在も大切。ストレスをためずに仕事ができる大きな支えです。
経済の良さが
通貨を強く
Q 円が強くなるために、私たちはどんな意識を持たなければならないでしょうか?
A 「円高」や「円安」というのは円の交換比率のことです。経済が良くなれば通貨は強くなるし、経済が弱まれば結果的に通貨も弱くなります。
円そのものを強くするというより、経済自体をどう良くするか、強くするかを考えなければなりません。その結果が通貨に表れてきます。
学校でクラスを良くするにはどうすればいいかを考えるのと似ています。一人ひとりが努力し、その努力が報われるようにすることが大切です。加えて、恵まれない状況にいる人を、一定のルールにしたがって助ける仕組みも必要です。
【日本銀行】
1882年にできた日本の中央銀行。日本でただ一つお札を発行できる「発券銀行」、民間の銀行にお金を貸す「銀行の銀行」、国がお金の出し入れをする「政府の銀行」という3つの大きな機能がある。
銀行同士がお金を貸し借りする時の金利を調節する金融政策も担う。景気が良い時には金利を上げて世の中のお金の流れを抑え、悪い時には下げてお金が流通しやすくしている。 |
アシラフィ君の感想
困難と向き合う姿 感動
経済の仕組みや日銀の業務について、どの質問の答えもわかりやすかったです。困難と向き合って仕事をこなしている姿に、とても感動しました。
本当に優しくて、仏様のような人でした。国の経済のトップを務めるには、このくらいの「徳」を持っていないといけないのかな、と思いました。
長廣さんの感想
「徳」持ってこそトップ
本当に優しくて、仏様のような人でした。国の経済のトップを務めるには、このくらいの「徳」を持っていないといけないのかな、と思いました。 |
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