藤本義一さん
テレビの深夜番組の司会などでも知られた直木賞作家の藤本義一(ふじもと・ぎいち、本名=よしかず)さんが、30日死去した。79歳だった。
大阪府出身。大阪府立大学経済学部卒。質屋を営む父は戦災で店を失い、終戦後は母が占領軍の車にひかれたことが原因で病に倒れ、自身も闇市で12歳から働いた。苦労を重ねる中で、自由な精神を尊ぶ自我を確立した。
大学在学中からラジオやテレビドラマの脚本を手がけ、1957年に戯曲「つばくろの歌」で芸術祭戯曲部門の文部大臣賞。映画の川島雄三監督に師事し、森繁久弥主演の「駅前」シリーズや、勝新太郎の「悪名」シリーズを手がけた。
65年から25年間、日本テレビ系の深夜番組「11PM」で、大阪・よみうりテレビが制作する週2回分で司会者を務めた。やわらかい大阪弁で、個性的な視点からのトークとユニークな構成で人気を集めた。
30代以降は、小説に本格的に取り組み、上方に生きる人々を題材にした作品を発表。74年に上方落語家の半生を描いた「鬼の詩」で直木賞を受けた。井原西鶴の研究でも知られる。
95年の阪神大震災では、兵庫県西宮市の自宅で被災。復興支援活動に取り組み、震災遺児のケアハウス「浜風の家」を設立、運営した。
近年も演芸評論やエッセイストとして活動してきたが、2010年夏に脳梗塞(のうこうそく)で倒れ療養していた。