ここに注目! 「改正暴力団対策法 きょう施行」2012年10月30日 (火)

渥美 哲  解説委員

暴力団との関係を断とうとする企業などを狙った襲撃事件が相次いでいることを受けて制定された「改正暴力団対策法」が、きょう(30日)施行されました。渥美解説委員に聞きます。

Q:きょう施行ということですが、注目されるのはどんな点ですか?

A:改正された暴力団対策法を運用することで、警察が、最近も相次いでいる、企業や市民が襲われる事件を防いでいけるかどうかが注目点です。
暴力団対策法が改正された背景には、暴力団との関係を断とうとする企業や役員などが拳銃や手榴弾などで襲われる事件が、福岡県を中心に相次いでいることがあります。
しかし、犯行が巧妙になっていることなどから、実行犯を特定するのが難しく、検挙できたのは僅かしかありません。
このため、法改正をして、新たな仕組みでの取締りができるように変えたのです。

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その新たな仕組みの1つが、こうした襲撃事件の実行犯が特定できなくても、襲撃に関わったと判断され、繰り返す恐れがある暴力団を、「特定危険指定暴力団」に指定するというものです。
そして、設定した警戒区域の中で、所属する暴力団員が企業などに金品などの不当な要求を行った場合、これまでは、中止命令などを出して従わなかった時しか逮捕できませんでしたが、不当な要求をしただけで、すぐに逮捕できるようにしました。
こうして、暴力団が企業などへの不当な要求をしにくくすることによって、要求を断った企業などが襲われる事件を防ごうというのが狙いです。

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Q:その狙いは、うまくいくでしょうか?

A:そのためには、欠かせないことがあります。
それは、警察が市民や企業を守ること、保護を徹底することです。
というのは、この新しい仕組みでは、暴力団から不当な要求を受けた企業などから警察に被害を申告してもらうことが、暴力団員を逮捕するための前提になっているからです。
そのためには、被害を申告することで暴力団から報復されることを恐れる企業や市民を、警察が守りきることが不可欠です。

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Q:しかし、最近も福岡県で、市民が襲われる事件が続いていますよね?

A:その通りです。今年8月以降、北九州市で、飲食店の女性経営者らが刃物で切りつけられたり、飲食店などが放火されたりする、新たな事件が続発しています。
飲食店でも、暴力団との関係を断とうとする動きが広がっていることに反発した犯行の疑いがあると警察はみています。
しかし、これらもすべて未解決で、市民などから「警察は守ってくれていない」という不安や不信の声があがっています。
こうした不安や不信がある中では、つきあいのあった暴力団からの要求があったということを、警察に申告してもらうことはできません。
市民や企業の安全を守り、警察への信頼を確保することが、新たな取締りの仕組みを機能させるために、欠かせないことです。

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警察が、きょう施行された「改正暴力団対策法」も効果的に運用して、新たな事件の発生を防ぐことが、社会の各界で進もうとしている暴力団排除の機運を後退させないためにも重要です。
暴力団対策は今、その成否を決める、重要な段階を迎えていると言えます。