岐阜県美濃市の武義高校情報処理科の生徒が年2回、地域住民向けにパソコンの公開講座を開き、基礎操作を教えている。テキスト作りから当日の講義の進行まで全て生徒が準備。お年寄りら受講者の理解に合わせた1対1の“高校生講師”の指導が、じわりと人気を集めている。 (関支局・成田嵩憲)
「ドラッグはマウスをクリックしたまま…。あ、すみません。矢印を動かしたい絵に置いてみて」「マウスの左のボタンを押して動かしてください」
7月、高校で開かれた3日間の公開講座。生徒は、受講者の表情や手の動きを見ながら、専門用語をかみ砕いて説明する。助言を受けた受講者はテキストにメモを書き込み、言われた通りにマウスを操作した。
「できました」。暑中見舞いはがきに挑戦した美濃市の大坪修さん(79)はインターネットから無料素材の画像をダウンロードし、はがきに張り付け終えると笑顔を見せた。
大坪さんは「パソコンは聞いても分からない印象を持っていた。でも、高校生の先生に分かりやすく教えてもらえた」と喜んだ。
年賀状作り伝授
公開講座は2008年、3年生の選択授業「プログラミング」の一環で始まった。希望者から抽選で選ばれた受講者20人は、多くが60、70代。インターネットのほか、文書作成ソフトやペイント機能、印刷、写真加工などに挑戦する。
当初は生徒の保護者を講座の対象としたが、田口浩規教諭(52)が「パソコンの知識が乏しい、幅広い世代の住民に参加してもらえたら」と切り替えた。
講座は年2回、暑中見舞いや年賀はがきを用意する時期に開く。この夏は、3年生24人が過去の資料を参考にしながら講座2カ月前から準備に取り掛かった。
しかし、資料作成に時間を費やし、リハーサルをほとんどできないままに本番。受講者の理解がばらつき、全体の統率が取れなかった。ペイントを使ったデザインを担当した日置暁久君(18)は「効率的に進められなかった」と反省した。
収穫もあった。「写真を趣味にしているお年寄りが多い」「エクセル(表計算ソフト)を使いこなしたい受講者が多かった」など、受講者が何を求めているか分かったことだ。藤村嘉大君(18)は「自治会名簿を作りたいと言われたのが印象的」と振り返った。
教える魅力実感
生徒たちは今、11月中旬に開く秋講座に向けて準備を進めている。今回の目標は「効率よく指導する」。何を用意していくか計画をつくり、準備の進み具合を意識できるように工夫した。
夏にできなかった全体リハーサルは6時間を確保。ストップウオッチを使って進行を確認し、テキストに手を入れたり、説明のスピードを加減したり。生徒は「受講者に私たちの成長した姿を早く見せたい」と自信をのぞかせる。
講座を通じて将来を考えた生徒もいる。大野裕太郎君(18)は「教える魅力に気付いた」と教諭が進路選択の1つに加わった。「相手の気持ちを理解し、伝えて分かってもらえた時がやりがいになる」と目を輝かせている。
(写真)受講者の理解に合わせてコンピューターの基礎操作を説明する生徒たち=岐阜県美濃市泉町の武義高で
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