拡散予測の誤り 原因を調査へ10月30日 17時54分
原発事故が起きた際の放射性物質の拡散予測の試算に、6つの原発で誤りが見つかった問題で、原子力規制委員会は、実際に試算を行った独立行政法人に経緯を調べさせるなどして、2週間をめどに、根本原因を明らかにし、再発防止策をまとめる考えを示しました。
この問題は、原子力規制委員会が先週公表した、原発事故が起きた際の放射性物質の拡散予測の試算を巡り、新潟県の柏崎刈羽原発など6つの原発の結果に誤りが見つかったもので、29日、訂正されました。
柏崎刈羽原発の場合、最も遠くまで影響が出る地点は、当初、東南東にある魚沼市でしたが、訂正の結果、真東の長岡市に変わるなど、関係の自治体にとっては突然の情報の変更に、不満や不安が広がっています。
これについて、事務局の原子力規制庁の森本英香次長が、30日、記者会見し、「自治体の方々にご迷惑をおかけしたことを改めておわび申し上げます」と述べました。
そのうえで、田中委員長の指示を受け、実際に試算を行った独立行政法人の「原子力安全基盤機構」に詳しい経緯を調べさせるとともに、規制庁の内部のチェック態勢も確認し、2週間をめどに、根本原因を明らかにして、再発防止策をまとめる考えを示しました。
今回訂正された拡散予測は、自治体が防災計画を作る際に参考にする資料で、こうした重要な試算がなぜ間違ったのか、原子力規制委員会には徹底した検証が求められます。
新潟では不安や不信の声も
新潟県の柏崎刈羽原発の周辺の住民や自治体からは、不安や不信の声が聞かれました。
原発からおよそ40キロ離れ、田んぼや畑が広がる長岡市栃尾で農業を営む武士俣藤一さんは、「農作物に放射性物質が含まれるとなると、気持ちのいいものではなく、不安でたまらない」と話しました。
長岡市では試算の訂正について直接の説明はないということで、森民夫市長は記者会見で、「国民にどう説明するか、社会的にどういう影響を与えるのかということに、国は極めて鈍感だ。きょうに至ってもまだ謝罪の電話1本もなく、常識がないと言わざるをえない」と厳しく批判しました。
また、当初の試算で最も遠くまで影響が及ぶとされた、魚沼市の大平悦子市長は記者会見で、「訂正されたと聞いて、率直に驚いた。誤った情報を流したということは、市民に与える影響が大きく、国の認識が甘かった。魚沼市はコシヒカリの産地でもあり、農業関係者に風評被害を含めて不安を与えた」と強く批判しました。
さらに、新潟県の泉田知事は記者会見で、「チェックをするときの真剣さの度合いの問題だ。住民の安全、命、財産をどう守るのか、責任を持てる組織が必要であり、住民がデータを見てどう思うかという視点を持つべきだ」と述べて、不信感をあらわにしたうえで、原子力規制委員会に再発防止を要請する考えを明らかにしました。
一方、長岡市と同様に、国が避難などの対策を重点的に行う目安の範囲としている、原発から半径30キロを超える地点にまで放射性物質の影響が及ぶとされたことについて、新潟県見附市の久住時男市長は、「原発から半径30キロ圏内に市内の一部が含まれていて、現在、市内全域を対象とした防災計画を策定している。今回の訂正を受けて、方針が大きく変わることはない」と冷静に受け止めていました。
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