つながる:ソーシャルメディアと記者 政治家の一方的発信=石戸諭
毎日新聞 2012年10月27日 東京朝刊
ツイッターを使うことで政治家は国民に対してより“雄弁”になったのか。そんなテーマの発表を日本公共政策学会で聞いた。立命館大特別招聘(しょうへい)准教授の西田亮介さん(29歳、ツイッター:@Ryosuke_Nishida)らの研究だ。西田さんは私と同世代の気鋭の社会学者。ソーシャルメディア時代における政治のあり方を考える問題提起に興味をひかれた。
西田さんたちの手法はこうだ。今年1月時点でツイッターを使用していた国会議員214人のツイートを、5回以上リツイートされたもの(RT率)、他のユーザーとのやり取りを含むツイート(メンション率)に分ける。この二つをツイッター上で話題を拡散させる力があるか、双方向コミュニケーションを取ろうとしているかの目安にした。分析した結果、わかったのは伝播(でんぱ)力がある発信ができ、双方向性を生かせている議員はわずか1割に過ぎないことだった。半数以上の議員は一方的な発信を続けて、コミュニケーションにも消極的。ツイッターの特性を生かしきれていないことが明らかになった。
ツイッターをはじめソーシャルメディアが普及することで、政治家と国民がつながり、何らかの好影響を与えるという期待を持ったユーザーもいるだろう。期待が実現する可能性もある。しかし、現状ではツイッターを使っても多くの政治家に変化はなく、雄弁にもしていない。なぜか。西田さんは「議員の理解が進んでいないことに加え、インターネットを利用した選挙運動は制限されているため、ツイッターなどを使って発信しようという意欲が起こりにくい」と、議員と制度双方に問題があると指摘する。
解決に必要なのは「政治家はネット上での発信を増やすべきだ」といった安易な「べき論」ではないだろう。西田さんは「政治家の政策競争と情報発信を促す法体系への転換」を提案する。一案だと思う。社会の動きに合わせ、議論を深める時期に入っている。【大阪社会部】