名古屋:女性になりきる男子高校生「カヅラカタ歌劇団」
毎日新聞 2012年10月27日 11時45分(最終更新 10月27日 12時06分)
名古屋にある名門男子高、東海高校に、生徒が宝塚歌劇団になりきり、文化祭でミュージカルを演じる「カヅラカタ歌劇団」がある。結成10年を迎え、彼らを題材にしたテレビドラマも放送された。タカラヅカを逆さ読みして名付けた「カヅラカタ」の男子生徒の挑戦とは?
団員24人は、無論男子ばかり。「タカラジェンヌのようにかっこよくなりたい」と華麗に歌って踊り、ラインダンスに挑戦する。
本番では、濃いメークに、豪華な衣装を着て舞台に。全員がすね毛やわき毛を処理し、本気で女になる。団員はその姿を見て「きれい」と感じるという。抱き合うシーンを真剣に演じ、笑いをとる意図はない。毎年、宝塚歌劇を鑑賞して演劇談議に花を咲かせる。
今年の演目は「エリザベート」で、オーストリアの皇后と黄泉(よみ)の帝王トートの愛を描いた。団長でトート役を務める2年の大島寛達(ひろと)さん(17)は「普段は男を意識しないので、だらだらしている。役に入り込むと、男のかっこよさを表現するために堂々と振る舞い、優雅で大きな仕草を心掛ける。違う自分になれるのが楽しい」と言う。皇后役の2年の杉山直登さん(16)は「初めは嫌だったが、みんな真剣にやっていて自分も恥ずかしさを捨てた。女性役の立ち居振る舞いは難しく、舞台では背筋を真っすぐにし、小股で歩くように気をつける。女性の気持ちに触れられ、人生の貴重な経験になった」と話す。
同校は私立の中高一貫。浄土宗によって1888年に創立され、OBに海部俊樹元首相や哲学者の梅原猛氏、建築家の故黒川紀章氏らがいる。初演は03年秋。文化祭実行委員長の生徒が校内講演会でタカラジェンヌの話を聞いて感動し、企画した。当時シンクロナイズドスイミングをする男子高校生の実話をもとにした映画「ウォーターボーイズ」が人気で、挑戦する思いもあった。セットを手作りし、貸衣装屋から無償でドレスやタキシードを借りた。1回限りのつもりが好評で、以後「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」「ファントム」などを演じてきた。顧問の久田光政教諭(56)は「難しいことに挑戦し、舞台で拍手をもらうことが自信になり、人間的に成長できる」と語る。