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働き方・人間関係

なぜ仕事しない社員が高い給料をもらうのか
城繁幸氏・岩瀬大輔氏 対談(上)

(3/3ページ)
2012/10/30 6:30
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■労働組合員にストックオプションを

岩瀬 企業の(国際的な)競争力強化のために何が必要かというと、たとえば法人税の減税や、雇用コストを下げることだと思うんです。実質雇用コストを下げるというのは、たとえば会社に合わない人であれば、解雇しやすくするということもありうるわけです。雇用の流動性を高めることも、本来はいいことなのに、「それは企業優遇だ」となってしまいます。

 これは1つのアイデアですが、労働組合員などにストックオプション(自社株を購入する権利)を強制的に持たせればいいんじゃないかと思うんです。そうすると株価が上がれば、みんな喜びますから。「時価総額経営」となると、文句を言われるじゃないですか。

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 アメリカでは、国民みんなが株主なんですよ。多くの人が、いろいろなかたちで資本市場に参加している、あるいは報酬の一部が株式形態になっています。だから組合員をはじめ、ストックオプションを相当に与えれば、みんなが時価総額を上げるように一生懸命考え、うまくいけば株主に還元されるようになる。

 僕は海外に出る機会が多いので、日本がダメだってあまり言いたくない面はあります。アメリカだって、ヨーロッパだって政治はメチャクチャだなっていう印象がありますし。だから日本国民の意識が外国に比べて低いとも言い切りたくなくて、やっぱり人間って、どこの国でも、基本は自分のことが大事だし、短期的にものを考えます。だから政府は、社会の仕組みを長期的に考えるとか、国民ができないことをやらなければいけない。

――雇用市場の流動性を進めるといっても、解雇の条件が厳しすぎるという話を聞きます。

■解雇の条件は緩和したほうがいい

 企業の経営が苦しくなったときに、従業員を解雇する整理解雇は、就業規則にない事由の解雇ですから、ある程度条件を厳しくしなければいけません。ただし、普通の解雇の条件はもっと緩和すべきだと思いますね。たとえば、会社にとって必要のない人にはなにがしかの金銭を払って解雇できるような金銭解雇は認めるようなかたちにしないと。

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岩瀬 会社を経営していると、ルールが一律に適用されるのがよくないと実感します。たとえば、労働基準監督署の指導が厳しいから、従業員に残業をさせられないといったこともあります。過度に政府が個人の働き方に介入しすぎている気がするんですね。もちろんそうしないと強制的に残業させるような会社もあるから、強行法規にしている部分もあるとは思うんですが、多様な働き方に対応しづらいですよね。

 僕らベンチャー企業は、将来世界で戦っていきたい。会社のみんなも仕事が面白くて仕方がないから働きたい。でも僕は、「残業するな、早く帰れ」って言わなければなりません。中には、もっと働いて残業代を稼ぎたいという人もいるかもしれないし、お金には関係なく、いい仕事をしたい、早くいいサービスを世に出したいと思って働きたい人たちもいるはずです。

 もちろん健康を害するような働き方はいけませんが、それを守るにはまた別の仕組みでやるべきで、企業の競争力を高めるという面では、労働のルールが、間違った方向を向いているように思います。日本の経済をもっと活性化しなければいけないという現在の状況には合っていない面が多いのではないかと、日々感じています。

▼城繁幸氏(じょう・しげゆき) 1973年生まれ。97年東京大学法学部卒業、富士通入社。2004年に退職し、『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』を出版、以後、人事コンサルタントとして活躍。コンサルティング会社「Joe’s Labo」代表。著書に『日本型「成果主義」の可能性』『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『7割は課長にさえなれません』『世代間格差ってなんだ』等。

▼岩瀬大輔氏(いわせ・だいすけ) 1976年埼玉県生まれ。98年東京大学法学部卒業。2006年ハーバード大経営学修士。外資系コンサルティング会社などを経て、現在ライフネット生命保険副社長。著書に『ハーバードMBA留学記』『生命保険のカラクリ』『入社1年目の教科書』『入社10年目の羅針盤』など多数。

[日経プレミアPLUS Vol.1の記事を基に再構成]

「日経プレミアPLUS」はハンディな新書サイズで、ビジネス、経済、生活情報など、盛りだくさんの情報を伝えるビジネスパーソン向け「マガジン型新書」。6ページ~十数ページの読み切りやすい構成で、通勤時など、すき間時間に最適。佐藤可士和、石田衣良、瀧本哲史といった豪華執筆陣による連載にも注目。2012年10月より毎月発行。730円(税込み)

日経プレミアPLUS VOL.1

著者:
出版:日本経済新聞出版社
価格:730円(税込み)

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