キンドルはサービスとしても洗練されている。キンドル版はキンドル端末のみならず、スマホ、タブレットなどあらゆる端末から購入・閲覧が可能。検索機能やおすすめ本を紹介する機能、読み進める途中で端末を変えても「しおり」を引き継ぐ機能なども優れている。
たとえ品ぞろえと価格が横並びであっても、こうした端末とサービスの魅力が日本の電子書籍市場を大きくけん引するきっかけになり得る。市場が広がれば、出版社間の競争が加速する。そうなった時、モノをいうのは価格だ。
実際、キンドルではごく一部のタイトル、50点ほどが「セール品」として売り出されているが、その多くがキンドル版のベストセラー上位に食い込んでいる。現時点では電子書籍の価格破壊に二の足を踏む出版各社も、キンドル市場が拡大すれば新たな領域に踏み込まざるを得なくなるだろう。
■「キンドルで目が覚めた」
すでにキンドルは、日本の出版業界の意識改革を促したと指摘する関係者もいる。PHP研究所で電子書籍関連の事業を担う中村由紀人・事業開発本部長は、こう語る。
「アマゾンは再販と委託で守られてきた『村社会』に、いきなり外国のルールを持ち込んできた。もう少し配慮が欲しかったという思いがある半面、おかげで出版業界全体の目が覚めたという思いもある。いつまでも同じことを繰り返すのではなく、我々自身も変わらないといけない。紙の出版市場はますます厳しい状況。リスクをもって進んだ出版社のみが、生き残るのではないでしょうか」
現在、横並びの電子書籍の価格については、公取委から何らかの指摘が入る可能性もある。ベゾスCEOはこういった。
「物理的なコストがかかっていない電子書籍は当然紙の本より安くなると消費者は期待する。それを前提にどういう流通戦略をとるかは、出版社の経営手腕の見せどころだ」。キンドル上陸で、もう「パンドラの箱」は開いたのだ。そういわんばかりの笑みを浮かべている。
(電子報道部 井上理)
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