アマゾンが用意した開始時の日本語タイトル数は約5万点。うちコミックが約1万5000点、「青空文庫」などの無料作品が約1万点を占め、有料の「一般書籍」に限れば約2万5000点となる。既存の電子書店と比較しても、「凡庸」と言わざるを得ない。
ソニーが電子書籍端末「リーダー」向けに運営する電子書店「リーダーストア」は約6万8000点、楽天コボ向けの「コボストア」は約6万5000点、紀伊國屋書店がスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)やタブレット向けに配信する「ブックウェブ」は約5万9000点。コミックや無料作品を差し引いた数でもキンドルを上回る。「ベストセラー」はどうか。
■ランキング上位30位中、キンドル版は2作品
アマゾンは「オリコン週間“本”ランキングのBOOK(総合)、文庫、コミック、各部門の上位の多くのタイトルをカバーします」としている。そこで、同ランキングの「BOOK(総合)」の最新版(10月8~14日)と照らしてみると、上位30位のうちキンドル版が存在するのは、2作品(25日時点)だった。
一方、リーダーストアやコボストア、ブックウェブは、いずれも同ランキング30位中、14位の「聞く力(阿川佐和子著、文藝春秋刊)」の1作品のみ。キンドルは同著に加え4位の「人生がときめく片づけの魔法2(近藤麻理恵著、サンマ-ク出版)」がある。これは、キンドルがオープン時に用意した「先行・独占タイトル」68作品の1つだ。とはいえ、差は「1」。現状、「横並び」であることに違いはない。
国内の出版業界全体が抱える「電子化の遅れ」という課題、そして国内出版勢の「平等政策」を前に、アマゾンは品ぞろえで突き抜けることができなかった。
今年7月、楽天が主催したコボの発売記念パーティーに参加した大手出版グループ、角川グループホールディングスの角川歴彦会長はこう語っていた。「『ブックウォーカー(角川直販の電子書店)』もコボもどこも、電子化できたタイトルを平等に卸している。それはアマゾンが来ても一緒です」
キンドル上陸で大型の電子書店が1つ増えた。でも特別扱いはしない。角川グループだけでなく、ほとんどの出版社が同じ考えだ。だから現状、品ぞろえで大差がつくことはない。では、キンドルは書籍価格で差をつけることができたのだろうか。
■キンドル版価格、既存書店とほぼ横並び
キンドル独占の「人生がときめく片づけの魔法2」のキンドル版価格は1000円と、紙の書籍の32%オフ。だが「聞く力」のキンドル版は紙と同じ840円で、ほかの電子書店も840円均一。さらに調べた結果、ほとんどのキンドル版の価格が既存の電子書店と「ほぼ」横並びであることが分かった。
アマゾンのベゾスCEOは日本で、出版社が販売主体となり価格を決める「代理店モデル」と、アマゾン側が小売店として価格を決める「卸売りモデル」、2種類の契約形態に対応したことを明かしている。代理店モデルを選択したのは、講談社、集英社、小学館、文藝春秋、光文社などの大手出版で少数派。各社はきっちり、ほかの電子書店と同一価格でそろえてきた。
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