
ベンチャー企業の広報立ち上げから現在に至るまでのヒストリーを紹介する「広報スタートアップ奮闘記」。
今回はちょっと趣向を変えて、広報活動そのものではなく、広報視点を踏まえた事業展開について、数字による検索サービス「RHETOLO(レトロ)」を提供する株式会社ピコ・ラボの小林一広社長にお話を伺いました。
数字だけで簡単に情報アクセス御社は「数字を使った情報検索」を展開されていますが、そもそもその発想は何がきっかけだったのですか?私を含めて当社の創業メンバーはケーブルテレビ事業者の出身で、その会社はケーブルテレビに加え、インターネット、ラジオなど様々なメディアを手掛けるなど、いわばクロスメディア展開していました。
そうした中で2000年代前半に同社のホームページをリニューアルすることになった際に、従来の長いURLではなくドメイン以下を番号にしようという話になりました。例えばスターチャンネルのページはチャンネル番号の「200」を割り当てるといった方式にするなど、同社が運営するテレビもラジオも雑誌も全て数字化することにより、同社サイトのドメインに数字を追加入力するだけで当該ページにたどり着けるようにしたのです。
この方式をさらに発展させ、URLすべてを数字化しようと考えたのが事業のきっかけになります。しかし短縮URLのように単にURLを数字化するということではなく、一つの数字に対して、複数の情報を持たせられることが特徴です。
例えば飲食店がこのサービスを利用する際、アクセス情報、料金情報、メニュー情報、キャンペーン情報など複数の情報を一つの番号に紐づけることが出来、ユーザーは知りたい情報を、1回数字を入力するだけで閲覧することが可能です。また例えば電話番号とかゴロ合わせなど、任意の番号を割り当てることが出来ますし、英字を混在させることも可能です。
このサービスは具体的にどのように活用されているのですか。店舗や企業が情報サイトを開設されるほかにも、さまざまな活用がなされています。
例えば行政のホームページは、各自治体によってホームページ制作のルールがバラバラで、閲覧者からしてみれば情報を探しづらいのが実情です。そこで我々は、都道府県番号や郵便番号を各自治体のサイトに割り当て、自治体番号以下に統一したルール番号を付与することで、自治体番号・郵便番号+ルール番号によって「●●県の採用情報」「●●市の採用情報」など各自治体の情報閲覧を統一することを自治体と一緒になって取り組んでいます。
他にも、とある市営バスはバス停ごとに管理番号なる番号が付けられているのですが、「***(市外局番)+84(バス)+停留所番号」と入力することで、バス停の位置情報はもちろん、次のバスはいつ来るのかといったリアルタイム情報も検索できるようにしました。
またOEMでこの技術を自社アプリで活用したいというご要望もあり、例えばマネー情報誌「日経マネー」(日経BP社)では同誌のアプリ内に当技術を採用していただいています。同アプリでは、株式コードを入力すると当該企業の株式情報を確認出来たり、雑誌の特集に番号を付与しておき、特集の詳細情報をアプリから閲覧できるようにしたりしています。この例からもわかるように、わざわざQRコードを読み取ったり、長いURLを入力したりする煩わしさがなく、数字を入力するだけで詳細情報にアクセスできるという点において、この技術は紙媒体との親和性が非常に高いと思います。
広報の視点を含めた事業展開話を聞けば聞くほど便利なサービスであると思いますが、一方でサービスを利用してもらううえでの広報活動はどうされているのですか?まず前提として、いくら当サービスを知っていただきアプリのダウンロード数が伸びても、利用されないことには意味がありませんので、我々は「利用度」を重視しています。そこでウェブサイトのアクセス数を調査・統計するツールであるAlexaをモニタリングしているのですが、Alexaでは全世界で10万位に入れば十分評価に値すると言われるなかで、私たちのサービスは全世界で約8万位、日本国内に限ればドトールコーヒーとほぼ同等の約5,000位にランクインしています。また検索サービスでありながら、滞在時間はコミュニティサービス並みの約30分も利用されているのも特徴です。(※検索などのサービスは数分程度が通常)

Alexaのモニタリング画面(イメージ)一方で当社は単に数字転換技術を開発・提供しているわけではなく、数字転換によって利便性の高い情報検索を提供することが事業の本質です。したがって使い方はアイディア次第で無限に広がるため、例えば「時刻表案内」「翻訳サービス」などの単一サービス型のようにシンプルに訴求することが難しく、このサービスの本質を簡単にご理解いただけないのが正直なところです。
このように「利用度」「理解度」という観点を重視するとなると、告知型のコミュニケーションではなかなか難しいのではないかと考えています。したがって当社では、既に出来上がっているコミュニティに入り込み、そのコミュニティ内におけるユーザー間のクチコミによって利用者数を増やしていくことを念頭に事業展開を図っています。
具体的にはどのようなことを行っているのですか?例えば、先ほど例に挙げた市営バスの案件しかり、日経マネーしかり、また熊本市内の商店街組合と連携して商店街の様々な情報を数字で検索できるようにするプロジェクトを推進したりするなど、既にユーザーがいるところと一緒にプロジェクトを推進しています。
また現在通信事業者と組んでwifiスポットに番号を付与し、スポットの各種情報を掲載するというプロジェクトを検討していたり、既にサービスを開始している韓国でも同様に、韓国国内大手の通信事業者やポータルサイト運営事業者とのアライアンスを協議していたりしています。
つまり広報そのものに取り組むというよりは、積極的にアライアンスを推進することによって、利用できる環境を広げるとともに、広報的観点においてもユーザー間のクチコミはもちろん、副次的には企業とのアライアンスや産学連携によるニュース性の創出を図っていこうという考え方で事業展開を進めています。

株式会社ピコ・ラボ 小林一広社長目指すは「トイレットペーパー」のようなビジネス広報の視点を含めて事業展開を行っているということですね。では最後に今後の抱負をお聞かせください。数字には大きく2つの特徴があります。一つは世界共通であるということ。したがって外国人の方が日本に来て知りたい情報を探すのにも、逆に日本人の方が海外に行って情報を探す際にも、数字であれば言葉の壁なく簡単に情報にアクセスすることが出来ます。実際、現在日本・韓国でサービスを開始しており、東南アジアや欧米での事業展開も準備中です。
そしてもう一つは不変であるということ。いくら時代が流れようと、技術が進化しようと数字そのものはなくならないことでしょう。したがって技術の進歩といたちごっこをすることなく「数字転換によって利便性の高い情報検索を提供する」という事業の本質に専念し、そのうえで必要であればその時その時の技術を導入すれば良いと考えています。
目指すは「トイレットペーパー」のような存在になることです。トイレットペーパーは、それ自体は決して主張するものではないですが、日常生活に不可欠であり、もしこの世から無くなろうものならば、オイルショックさながらの驚愕に襲われます。そう考えると、流行り廃りに影響されず、長く世界中の人々にとって日常生活に欠かすことが出来ない、そんなサービスを目指していきたいと思います。
「RHETOLO」が日常生活に欠かせないプラットフォームになる日もそう遠くないように思います。今後も「トイレットペーパー」を目指して頑張ってください。本日はどうもありがとうございました。
【過去のインタビュー記事はこちらから】
株式会社ピコ・ラボ
2010年設立。数字による検索サービス「RHETOLO」に関する各種研究開発、事業の企画開発・運営・サポート、WEBサービス・モバイルアプリケーション開発などを通じて、「RHETOLO」のプラットフォーム化、普及に向けて取り組んでいる。
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