2012年10月29日(月)
大マスコミから口封じを受けてもう長い上杉隆のメルマガVol.158から 
上杉隆の東京脱力メールマガジン Vol.158
          
『 馬鹿と「フクシマ」 』       

「フクシマ」の長い闘いはこれからが本番だ

3・11直後から、私は「3、4年後には現実を直視しなくてはならない悲しい瞬間がやって来るだろう。それまでに責任ある立場の者は(政治、行政、メディア)放射能事故の現実から目を背けてはならない、と再三警告してきた。

だが、いまだに日本の言論空間は遠慮がちに、そして自らの失政と隠蔽と誤報を隠しながら、放射能から微妙に目を背けている。

「現実を気付かせるのは、『若者とよそ者とバカ者だ』だけだ」という自由報道協会での大槌町の芳賀自治会長の言葉にもあったように、私は震災後、意図的に「バカなよそ者」であり続けようとして努力してきた。

例えば、「メルトダウンという言葉を使うな」と同業者に言われれば敢えて使い、「避難範囲は20キロで問題ない」と官房長官が言えば、放射性物質は同心円状には広がらないと抵抗し、「死の街などない」とマスコミが大合唱すれば、「間違いなく死の街だ」だして大臣の言葉を反復し、放射性物質は稲わらに付着し牛が危険だとすれば、それこそスケープビーフだ、と反旗を翻してきた。

また、メディアの出演者たちから「危険を煽るデマゴーグ」と名指しされれば、「安全デマ」という言葉を造って応酬し、東電が「輪番(計画)停電が必要」とすれば、データを示して「停電詐欺」だと追及し、宗教家でかつ医師である人物が「こどもの健康に影響の出る値ではない」と断言すれば、モニタリングポストの数値を下方公表している事実を告発してきた。

その結果、1年半前の予測通り、私はいま「デマ野郎」であり、どうしようもない病的な「嘘つき」ということになった。

それでもいい。東京電力福島第一原発の敷地内から戻ってきて「ひばくなう」をツイートしたあの夜、私は自らが「バカなよそ者」になったことを実感した。

今なお、冒頭示したように、私はあえて「フクシマ」という言葉を使い続ける。なぜなら、それこそが「フクシマ」を忘却に追いやり、肉体的にも、精神的にも、経済的にも、物理的にも放射能被害に遭った人々を忘れさせようとする政府、行政、マスコミなどの日本の権力社会の狙いに他ならないからだ。

私が言い続けてきた「フクシマ」は、いわゆる福島県の「福島」では決してない。

それは、その言葉の持つ意味を象徴的に表している、忘れてはならない悲劇の記号としての「フクシマ」にすぎない。

具体的にそれは、スリーマイルやチェルノブイリと同じ意味を持つ、放射能の脅威にさらされた、もしくは可能性を持つ土地の言語表現としての象徴的な指標である。

スリーマイルは川沿いのその場所だけを指しているのではなく、それまで活発化していた米国の原子力政策とその奢りと限界を示したという意味での「スリーマイル」だし、チェルノブイリは、ひとたび原発事故が起これば、それは一国に留まらず、四半世紀経ってもなお、南ドイツのイノシシや中部イタリア山岳地帯のキノコ、あるいは遠く離れたスコットランドの乳牛にまで影響を与える放射能の脅威を示す「チェルノブイリ」である。

そうした意味で、「フクシマ」が「福島」でないことはお分かりだろう。

日本を牛耳る原子力マフィア、その犯罪の物証である放射能は、たとえば柏、三郷、流山にホットスポットを作り、静岡のお茶を汚染し、遥かなる海洋を隔てた米国西海岸の海産物にまでその悪影響を与えている。

悲しいことに「フクシマ」の例は枚挙にいとまない。日本中に忘れてはならない「フクシマ」が広がっている。それが現実なのだ。

「炎上月間」が終わろうとしている。日本の犯罪者たちが福島を忘れさせようとしている中、私はばか者としてあえて言い続けよう。

フクシマの長い闘いはこれからである。その悲劇は可能な限り小さくしなくてはならないし、私たちにはそれができるのだ。「フクシマ」の悲劇の主人公は私たちではない。それはきっと数十年後の日本人、そう今のこどもたちなのだ。

悲劇を避けるために、私たちは厳しい現実を直視しなければならない。

人は見たいものを見たいし、信じたいものを信じたいのだ。そして、いま、すべての日本人に求められているのは「フクシマ」という現実を直視すること、そして、そこから目を背けないバカ者的な勇気なのではないか。
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ニックネーム:          阿智胡地亭 辛好
性別:男
都道府県:兵庫県
伊勢国に発し、摂津、筑前、伊予、下総、安芸あたりを転々の渡世。当今は攝津国にわらじを脱ぐ。“日乗”は“日記”。「辛ラーメン」など辛いものが大好物。