放射性物質拡散:規制委が試算を誤る
毎日新聞 2012年10月29日 22時07分(最終更新 10月30日 00時57分)
原子力規制委員会は29日、16原発での過酷事故時の放射性物質の拡散試算のうち、6原発で誤りがあったと発表した。試算のもとになる電力会社からの風速・風向データの入力を誤ったのが原因。北陸、九州両電力から試算結果への疑問が呈され、発覚した。福島第1原発事故の要因として、規制機関の専門知識や経験が電力会社に劣っていた点が指摘されたが、新体制でも懸念が残った格好だ。
誤りがあったのは日本原子力発電東海第2(茨城県)、東京電力柏崎刈羽(新潟県)、北陸電力志賀(石川県)、日本原子力発電敦賀(福井県)、九州電力玄海(佐賀県)、同川内(鹿児島県)の6原発。試算は自治体の防災計画に役立ててもらう目的で実施した。
修正の結果、柏崎刈羽原発で、緊急避難が必要とされる距離が最も長い40.2キロと計算された方位が東南東から東に移り、地点も新潟県魚沼市から同県長岡市に変わった。
規制委は「地元に混乱を与え、申し訳ない」と陳謝した。
◇「チェックが不十分」
「チェックが不十分だった。職員の意識改革と人材育成に努める」。原発事故時の放射性物質拡散予測の試算ミスを受け、森本英香・原子力規制庁次長は29日の記者会見で強調した。誤りのあった6原発の関係県に説明と謝罪をしたことを明らかにした。
原子力規制委員会は24日、16原発で原子炉すべてが炉心溶融した場合などの拡散状況を試算。16方位ごとに、国際原子力機関の緊急時の避難基準(事故後7日間の被ばく線量が100ミリシーベルト)に達する最も遠い地点を地図に表した。
しかし、26日に電力会社からの指摘を受け、全試算結果を見直すと、試算を依頼された原子力安全基盤機構が、風速と風向を入力ミスしたことが発覚。東海第2、敦賀の両原発で正しい分布図と比べ左回りに1方位分(22.5度)、他の4原発では右回りに1方位分それぞれずれた。
また、柏崎刈羽原発から東北東31.6キロの新潟県見附(みつけ)市と、玄海原発から南西17.1キロの長崎県松浦市が新たに避難基準を超えた。川内、玄海の両原発ではさらに別のミスで正しい結果に比べ拡散距離が最大0.3キロ増減した。【岡田英、西川拓】