更新日:2007年9月27日 RSS

環境とか未来とか大切にしたいね、通信


第31回 ホームレス問題、人ごとじゃないかも!
「ビッグイシュー」の新たな試みに注目

「ホームレスが売る雑誌」としてcafeglobeでも何度か取り上げてきた『ビッグイシュー日本版』が、新たに「ビッグイシュー基金」を発足させた。雑誌販売という独自の手法でホームレスの自立を支援してきた「ビッグイシュー」が始めた新たな動きとは? 9月10日、英国大使館で行われた記者会見に行ってきました!

■ホームレス問題、解決に必要な3つの支援
 「ビッグイシュー基金」はホームレスの社会復帰支援を目的に、個人や企業から基金を募る非営利団体(NPO)として「有限会社ビッグイシュー日本」を母体に設立された。発足にあたり、『ビッグイシュー日本版』代表・佐野章二さんは、「ホームレス問題を解決させるには、3つの支援が必要」と言う。それは、医療や法律相談、住宅確保などを支援する「生活自立」、職業訓練や就職カウンセリングを含めた「就業応援」、そしてスポーツやアート活動などを通じた「スポーツ文化活動の応援」。「ビッグイシュー基金」を通じて集まったお金は、これら3つのプログラムのために使われるのだそう。

 この3つこそ人が社会との繋がりを保持し、あるいは回復させるために不可欠な要素、と佐野さんは訴える。仕事と家を失うと、人はまず「ホープレス(Hopeless)」になり、人生への希望を失くす。やがて社会との繋がりも手放し、路上に出る……。「ビッグイシュー」が主張するホームレスへのシナリオは、「格差社会」なる言葉が生まれたこのご時世、なんともリアルに響く。

左から『ビッグイシュー』の創始者ジョン・バードさん、有限会社ビッグイシュー日本の代表・佐野章二さん、『ビッグイシュー日本版』編集長・水越洋子さん。その他、ビッグイシュー基金の理事を務める外部スタッフなど、計7名が記者会見に主席した。



■4年目を迎えた『ビッグイシュー日本版』、今後の課題は
 一方、雑誌販売を軸に活動してきた『ビッグイシュー日本版』が非営利団体の基金を設立した背景には、同誌の今後の課題が見え隠れすることも事実だ。2003年の創刊以来、『ビッグイシュー日本版』は延べ約220万部を売り上げ、販売者であるホームレスの人々には合計約2億円の収入が行き渡った。が、彼らの自立支援の環境を整えるには、それでも足りないのが現状だ。雑誌自体も、広告獲得の難しさや東京都内での売り上げの伸び悩みなど、改善すべき点は色々ある。30代を中心とした若いホームレスの増加とその支援も課題だという。

「ホームレスという人種はいません ホームレス状態に置かれた人がいるだけです」。これがビッグイシュー基金のキャッチフレーズだ。



 ただ、そんな難題続きの挑戦のなかでも「ビッグイシュー」のコンセプトは創刊以来、一貫して変わらない。本家本元の英国版『ビッグイシュー』の発起人、ジョン・バード氏は記者会見で、英国版の『ビッグイシュー』を1991年に創刊させるに至った想いをこう語る。「重要なのはとてもシンプルで、シンプルゆえに皆が気づかないような事だった。それは、ホームレスが施しを受けるだけではなく、自分で収入を得ること。仕事は、人々に平等を与える一番のツールだ」。つまり、これはれっきとしたビジネスである、ということ。自らビジネスに関われるチャンスこそが、ホームレスが人生のホープ(希望)を取り戻すために何より必要なこと、なのだ。

記者会見後に記念撮影をパチリ。左端の男性・小川義行さんは、『ビッグイシュー日本版』の販売者を経てホームレス生活から自立し、同誌の正式なスタッフになった。



 雑誌販売というビジネスを通じて彼らの自立を支援することが『ビッグイシュー日本版』の役割だとしたら、「ビッグイシュー基金」は、それだけではまかないきれないサポートを強化することになる。この2つを両輪として機能させることで、ホームレス問題へのより立体的な取り組みをぜひ期待したいところ。この「ビッグイシュー基金」、個人の場合は年会費2500円から参加可能だ。あなたも、まずはできる範囲から参加してみてはどうだろう?(編集・タナカ)
関連LINK
ビッグイシュー基金
「東京ホームレス会議」に行ってみました!(当コラムバックナンバー)

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