電力:関電値上げ、輸出企業は負担増警戒
毎日新聞 2012年10月29日 21時55分(最終更新 10月30日 01時00分)
電気料金の相次ぐ値上げは、企業業績や暮らしにも影響を及ぼしそうだ。特に、円高の長期化や韓国、中国勢などとの価格競争にさらされ、ぎりぎりのコスト削減に取り組んでいる輸出型企業は、一層の負担増に警戒感を募らせている。
「日本の電気代は韓国の3倍高い。(値上げが進めば)日本でのものづくりが難しくなる」。シャープの町田勝彦相談役は、主力の液晶事業でライバル関係にある韓国メーカーなどとの競争条件が悪化することを懸念する。日立造船の古川実会長兼社長は「コスト競争力の面から言えば、海外に出て行った方が効率的だ」と、空洞化のリスクを指摘。国内の電力使用量の6割を関西電力管内の事業所などで占めているパナソニックも、コスト増は避けられない。
影響は関電管内にとどまらない。九州電力が近く値上げ表明し、北海道、東北、四国も追随を模索しているからだ。田辺三菱製薬の土屋裕弘(みちひろ)社長は29日の決算発表で、電気代は売上高の1%弱にとどまるとしながらも「主力拠点がある中国・九州地方で(大幅な)値上げがあった場合、影響が大きい」と語った。
自動車業界も身構える。日本自動車工業会の試算では、東京電力の値上げで、東電管内1台当たりの生産コストが2000〜3500円増加した。「これ以上の生産コスト増は厳しい」(大手幹部)。
一方、大阪商工会議所などの調査によると、関西地区の企業で大企業や工場などの大口需要家(契約電力500キロワット以上、175社)の約5割、小口需要家(同500キロワット未満、584社)では5割超が「(値上げ分を)販売価格に転嫁できないため利益が減少する」と回答。電気料金の値上げは、中小企業により重くのしかかりそうだ。【中西満、宮崎泰宏、南敦子、岡田悟】