一迅社WEB

月刊コミックゼロサム 創刊10周年!

連載作家さんに直撃インタビュー!第8回「D・キッサン」先生

月刊コミックゼロサムは週刊10周年を迎えました!!
これもひとえに愛読者の皆さま、そして御執筆いただいている作家の皆さまのおかげです! ということで、ゼロサムオンラインでは連載作家さんに直撃インタビューを決行! 第8回は『千歳ヲチコチ』を大好評連載中、D・キッサン先生です!


Q1この10年の間にあった、一番印象深い出来事はなんでしょうか?
A1漫画を描いて暮らしていること、また、それが継続していること。
Q2連載開始時に比べ、一番変化したのはどのような部分だと思いますか?
A2絵が多少見られるようになってきたこと。自分の絵が印刷されたものを見た時のギャップというか、「私こんなの描いてない」感が昔よりは無くなってきたような気がします。
Q3これまで執筆されてきた話の中で、特にお気に入りの話はありますか?
A3『共鳴せよ!私立轟高校図書委員会』番外編10の善場先生の話です。ここから番外編のテイストを、自分に合った方向に変えられたような気がします。ちなみに善場先生の働いていたお店は「クラブアフロディーテ」といって、ブースごとに女神の名前が付いていて、その女神像が置いてある…という設定の説明はページの都合で入れられなかったです。
Q4同様に、お気に入りのイラストはありますか?
A4『共鳴せよ!私立轟高校図書委員会』の3巻P.19の(モノクロで収録されていますが)カラーです。「むさぼるように読む」という言葉から、実際に本をむさぼらせてみようと思って描いたイラストです。あと『千歳ヲチコチ』の2巻の表紙のチコはいい感じに描けたなと思っています。
Q5ご自身の作品の中で、お気に入りのキャラは誰ですか? 思い入れがある部分について教えて下さい。
A5『文字屋かわほり』の川堀は、自分の好きな物を詰め込みすぎていてちょっと恥ずかしいです。
Q6漫画を描かれる上でのこだわりを教えて下さい。
A6読みやすさは意識しています。どこまで説明して何を省くかということをよく考えています。
Q7執筆中、仕事道具以外で必需品があれば教えて下さい。
A7TBSラジオをよく聴いています。
Q8漫画家になりたいと思ったきっかけがあれば教えて下さい。
A8幼い頃から「絵を描いて生活出来ればいいな」と思っていました。漫画は趣味で描いてはいましたが、漫画家になりたいと思った事はあまりありませんでした。最初はイラストレーターを目指して持ち込みなどをしていましたが、とある出版社で「漫画は描かないの?」と言われて「じゃあ描いてみようかな」と思ったのが、こちらの世界に足を踏み込んだきっかけでした。
Q9今後克服したい弱点があれば教えて下さい。
A9デジタルともう少し仲良くなりたいです。
Q10D・キッサン先生の作品はシリアスから4コマまで、様々なジャンルの作品がありますが(現代劇、SF、歴史ものなど…)どのように創作されているのでしょうか? 執筆するきっかけなどあれば教えて下さい。
A10例えば、描きたいワンシーンがポンッとあって、それが描きたいから前後の話を考えるという事が私は多いです。ジャンルがバラバラに見えるのも、そのワンシーンが割と無節操に発生するので、それが為にその都度そのジャンルについて調べて描くという感じになります。しかしながら、ネームを練っている間にその一番描きたかった部分が入れられなくなる、という事も割とあります。
アンソロジーなどに描かせて頂く場合はお題があるわけですが、そういう時はなるべく自分の先入観を無くして、そのお題について、もう一度調べなおすようにしています。新しいことを知るきっかけにもなるし、自分の考えていたことより何倍も面白い事実が見つかったりします。
4コマは最初の頃はひどくて、とりあえず1コマ目をズラーッと描き出して、先を思い付いたものだけ下に延ばしていってオチをつけるというような、かなり効率の悪いネタの出し方をしていました。終盤になって慣れてくると、ネタがまるまる一本、つまり1コマ目から4コマ目までの全体が、ボヤ〜と見えてくる感じになりました。
Q11さらにこれから開拓してみたいジャンルはありますか?
A11昼ドラのようにドロドロした、人の感情がむき出しになってるような話を描いてみたいです。
Q12短編・連載含めて今までに描いた作品の中で、特に気に入ってる作品はありますか?
A12短編からですが「シスター・シスター」は、”こういうの描きたいな”と考え始めてから描くまでがちょっと長かったので、形に出来て嬉しかったです。「志能便の手」は、私の描くものにしては展開が華やかな感じで、やや恥ずかしいながらも気に入っています。気に入っていることは短編集でも言及しましたが「こゆび姫」は”両極端に位置する世界の邂逅”のようなものが描けてよかったなと思っています。
Q13作品のタイトルはどのように決めていますか?
A13総じて、話を思い付いてから決めることが多いです。言葉を調べるのが好きなので、気になった言葉でメモしてあったものを後から引用したりすることもあります。逆にこのタイトルを使いたいが為に話を考えることもあります。『矢継ぎ早のリリー』や『ゆり子には内緒』などがそうで、話の内容をタイトルに寄せていってます。
Q14ペンネームの由来を教えてください。
A14中学生のときに友達が考えてくれました。唯一の手がかりがこのメモです。
今となってはもうDの意味がなんなのか、私も良くわかりません。
Q15いろいろな時代や土地を描いていらっしゃいますが、特に好きな舞台はありますか?
A15日本だと明治・大正あたりの和洋折衷な雰囲気、外国だとチベットやアンデスなどの高い山に住んでる人たちの暮らし(漠然)が好きです。
Q16お休みの日の過ごし方を教えてください。
A16映画を観てるか、DVDを観てるか、読書してるかです。
Q17『千歳ヲチコチ』の着物など平安時代の資料や博物館など、作品に大きく影響をあたえた資料があれば教えて下さい。
A17短編の『鞠めづるヒトビト』という平安ものを描くときに参考として読んだ『蹴鞠の研究ー公家鞠の成立』はとても面白かったです。蹴鞠をサッカーに例えて分かりやすく解説されていました。
学術書によりますが「現代で例えると○○」のように書いてあると、千年前の事でも急にグッと身近に感じられます。『千歳ヲチコチ』を描き始める前にも、古典の現代語訳や平安時代を解説した学術書は何冊か読みましたが、訳者さんや解説する先生方が私たちに分かりやすく理解してもらうため、現代的な言葉を使ってアプローチをしているものが多かったです。そういった本からの「平安時代に現代の言葉が同居する面白さ」が、今の『千歳ヲチコチ』のテイストに繋がっていると思います。
Q18『千歳ヲチコチ』では、チコや長山さんなど、いそうでいないちょっと変わったキャラクターが多く登場していますが、モデルになった方がいらっしゃったりしますか?
A18明確にモデルがいるキャラと、そうでないキャラがいますが、モデルのいるキャラでもだんだんズレてくることが多いです。
モデルがいるキャラだと、チコは『虫めづる姫君』をとっかかりにして描き始めたキャラです。典侍は海外ドラマ『glee』のスー先生、亨の父は酒見賢一氏の『泣き虫弱虫諸葛孔明』の劉備がちょっと入ってるような気がします。
Q19『千歳ヲチコチ』には、和歌が印象的に登場しますが、先生が特に好きな歌はありますか?
A19和歌は勉強中で、これは!というものにまだ出会えていません。しかし和歌ではないですが、高校生のときに国語便覧で見た、黒柳召波という俳人の「うき人に蚊の口見せる腕かな」という俳句が、とても印象的でずっと忘れられずにいます。「恋しく思ってる人に、白い腕の、蚊に刺されたあとをそっと見せたよ」という意味です。ちょっとシュールで何気ない感じがいいなと思います。
Q20愛読者の方にメッセージがあれば宜しくお願い致します。
A20読んで下さっている方々には本当に感謝しております。感想を頂けたりするのも本当に嬉しくて、一言だけでもすごく元気になって「あなたの為に描きます…!」と頑張れます。これからもゼロサムのスキマに、邪魔にならない程度に置いて頂けると嬉しいです。よろしくお願い致します。

千歳ヲチコチ ②

D・キッサン
登姫のはからいで新嘗祭に参加できるようになったチコ。扇を忘れた舞姫を助けようとしたことが意外な出会いに繋がって——!?
波乱含み、雅な宴が始まる、キッサン風平安絵巻、待望の第2集登場!


次回は「inGrid」を大好評連載中の酒巻行里先生にインタビュー!!

そして、さらに次々回にインタビューを行う如月芳規先生に聞きたい質問を募集いたします☆
zero-sum@ichijinsha.co.jp
宛てに、如月芳規先生への質問内容をお送りください。
応募締切:2012/11/13(火)到着分まで

-

本誌の最新情報をいますくチェック!!




©ICHIJINSHA All Rights Reserved.