月の表側に面積の大半を占める直径約3千キロの「盆地」ができたのは、月の形成初期に起きた巨大な天体の衝突が原因であることを衛星「かぐや」のデータ解析で裏付けたと、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が29日付英科学誌ネイチャージオサイエンス電子版に発表した。
中村良介研究グループ長は「約38億年以上前に、直径300キロを超す小惑星が衝突した可能性がある」と話している。
地球に向いている月の表側には「プロセラルム盆地」があり、大部分に黒く見える「海」と呼ばれる領域が広がる。一方、月の裏側に「海」は少ない。「海」は、月の内部の溶岩が流れ出してたまったと考えられている。
中村さんらは、2007年12月~09年6月にかけて「かぐや」が観測した約7千万地点の光のデータを解析。光の特徴から鉱物を特定する方法で、天体衝突後に溶岩が再び固まる際にできたと考えられる鉱物の分布を調べると、プロセラルム盆地の縁沿いに集中していた。
中村さんは「天体衝突でプロセラルム盆地に当たる部分の地表がはぎ取られ、溶岩が噴出しやすくなり、表側に海が多く形成されたようだ」と話している。
米国の有人探査「アポロ計画」で調査し、約38億年前の天体衝突でできたとみられる「雨の海」はこの盆地に含まれており、盆地の形成時期はそれ以前と考えられるという。〔共同〕
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