特集ワイド:「打ち切って終了」でいいのか 週刊朝日問題 橋下市長の言い分と識者の見方
毎日新聞 2012年10月25日 東京夕刊
「連載1回目の冒頭、日本維新の会の旗揚げパーティーの模様を描いた部分などは内実をよく描写しており、興味深く読みました。2回目以降、まだ知られていない事実が明らかになったかもしれないのに、それが書かれなくなってしまった。国民の知る権利に資すべき報道をやめてしまったということです。抗議を受けて謝罪、連載中止に追い込まれたことで、他のメディアまで萎縮してしまう。橋下氏個人の周辺報道がしづらくなるといった悪影響を懸念せざるを得ません」
連載中止の真意を朝日新聞出版に尋ねたが「(不適切な表現で人権に著しく配慮を欠いたなどとした)『おわび』が全て」との答えだった。
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かたや橋下氏が、週刊朝日の発行元の朝日新聞出版のみならず親会社の朝日新聞社にも矛を向け、「見解を聞くまでは質問に答えない」と同社や関連の朝日放送の取材を拒んだことには「恣意(しい)的な取材拒否を招きかねない」との批判がある。「週刊誌と新聞は別媒体。坊主憎けりゃけさまでというのはどうか。ご本人は弁護士なのですから、取材拒否ではなく、出版差し止めの仮処分申請など法的手段を取るべきでしょう。裁判だと時間がかかるというのは理由にならない。市長のようにメディアを集めることができない一般の人であれば、それ以外の手段がないのですから」(高村さん)
メディア批評誌の月刊「創」編集長・篠田博之さんは「この件で『被差別部落問題に触れると何となくまずい』という空気だけが残る事態は避けるべきだ。週刊朝日が何に謝っているのかがあいまいなため、議論が深まっていないことが最大の問題です」と語る。
首相に望む声さえあるとびきりの「公人」橋下氏。今回の騒動が、有権者の「判断」の材料になることは間違いなさそうだ。
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