東電女性社員殺害:検察側、マイナリさんの無罪求める
毎日新聞 2012年10月29日 11時48分(最終更新 10月29日 12時20分)
97年の東京電力女性社員殺害事件で無期懲役が確定し、今年6月に再審開始決定を受けたネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)の再審控訴審第1回公判が29日、東京高裁(小川正持裁判長)であった。検察側は「1審の無罪判決を不服として控訴した時点から証拠内容が変動しており、別人が犯人の可能性を否定できない。被告人(マイナリさん)は無罪」との意見を述べ、公判は即日結審した。判決は11月7日。閉廷後、検察側は「申し訳なく思っている」とするコメントを出した。
マイナリさんは東京高裁で逆転有罪とされたため、再審公判は検察側が控訴した段階からやり直された。次回の判決では「無罪とした1審判決は正しい」として検察側控訴が棄却され、マイナリさんの無罪が確定する見通し。一方、弁護側は「事件当時、被告以外の人物が現場の部屋にいた可能性を払拭(ふっしょく)できない」と指摘した1審の判断の正当性を訴えた。再審開始の決め手になった、被害女性の体内に残された精液の型が現場の部屋にあったマイナリさんとは別人(第三者)の体毛の型と一致したとのDNA型鑑定結果に言及。「被害女性と最後に性的関係を持ったのは第三者。ゴビンダさんの無罪は明らかだ」と強調した。
検察は再審開始決定後も有罪主張を維持しようとしたが、決定後に行ったDNA型鑑定で被害女性の爪の付着物から第三者の型が検出されたとの鑑定結果を受け、無罪主張への転換を迫られた。
控訴審は被告に出廷義務がないため、既に帰国しているマイナリさんは法廷に姿を見せなかった。戦後発生し、死刑か無期懲役が確定した後に裁判がやり直された事件は8件目。【和田武士、石川淳一、鈴木一生】
★東京電力女性社員殺害事件 97年3月19日、東京・渋谷のアパート空き室で東電女性社員(当時39歳)が遺体で見つかり、顔見知りで隣のビルに住んでいたネパール国籍の元飲食店従業員、ゴビンダ・プラサド・マイナリさんが強盗殺人罪に問われた。東京地裁は無罪としたが、東京高裁は同月9日未明、女性と性的関係を持った後に絞殺し現金約4万円を奪ったとして無期懲役とし、最高裁で確定した。