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社説

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石原新党 政策の道筋を語らねば(10月26日)

 東京都の石原慎太郎知事がきのう辞職表明した。近づく衆院選をにらみ新党をつくり国政復帰を目指す。

 任期を2年以上残していた。懸案がある中で職を投げ出すのは無責任ではないか。

 新党といっても、当面は保守派の国会議員仲間と再合流する話だ。民主、自民両党に対抗する第三極を形成するのかは、はっきりしない。

 石原氏は何を目指し、実現へどう道筋を描くのか明示すべきだ。

 石原氏は1999年に都知事に就任し、ディーゼル車の廃ガス規制など環境政策に力を入れた。

 ずさん融資で経営難に陥り、都の追加融資が批判を浴びた新銀行東京は経営再建中だ。2016年の夏季五輪誘致に失敗したが、20年の誘致にまた名乗りを上げた。

 辞職にあたりこうした課題を今後どうするかについては語らなかった。これでは都政放棄と言われても仕方あるまい。

 新党構想について石原氏は4月、「白紙に戻す」と発言し、沖縄県の尖閣諸島購入に力を入れた。政府が国有化を決め、購入計画が行き詰まると再び新党に前向きになった。中国に強硬なタカ派の結集軸を目指す動きとみられる。

 中国では反日デモが広がり、中国の漁業監視船による領海侵犯も相次いでいる。石原氏は日中関係悪化の原因をつくった責任をどう考えているのか。ナショナリズムにナショナリズムで対抗しようとする動きであれば危ういと言わざるを得ない。

 新党は盟友の平沼赳夫氏が代表を務める「たちあがれ日本」が母体となるもようだ。同党は自民党と近く、参院では統一会派を組んでいる。自民党は安倍晋三総裁が就任後、保守色を強めている。石原新党は「第2自民党」になりはしないか。

 橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会との連携も視野に入れる。記者会見で石原氏は「日本を牛耳る中央官僚制度をシャッフルしないといけない」と述べ、維新の会との連携に期待を示した。

 橋下氏は「政策や価値観の一致」を連携の条件に掲げる。石原氏は官僚支配の打破や改憲を目指す考えだが、国民に関心の高い消費税増税や原発問題での立場を明らかにしていない。維新の会と第三極の形成で連携できるかは予断を許さない。

 掲げた理念を実現するために何をしようとしているのか。そこが見えてこない。選挙で勢力拡大を目指すなら、具体的な政策の工程表を盛り込んだ公約を早急に示す必要があるだろう。

 それにしても今、なぜ新党なのか。石原氏は自らの行動の真意を丁寧に説明しなければならない。

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