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エピローグ
エピローグ
 ここは日本の大河の実家。
 彼が行方不明になって、既に9ヶ月が過ぎていた。
 彼の両親、兄、妹の4人が集まっている。

 彼の捜索願は既に出され、山狩りも行われたが、一切の手掛かりが無く、捜査は難航している。
 当初は事件性があると言うことで警察も積極的に動いていたが、犯行に繋がるようなトラブルもなく、金銭的な要求もない。
 更に車の周りを含め、血痕や争った跡が全くなく、失踪として捜査を打ち切られた。

 大河(かれ)の妹、大空(そら)は兄、大海(ひろみ)ととも彼の育った部屋にいた。

 彼女たちは彼の話をしているが、二人とも彼がもう帰ってこないのではないかと諦めている。

 妹が突然、窓の外を見た。外は冬の澄んだ空に雲が流れていた。

「ひろ兄、今...ううん、何でもない...」

「どうした、そら?」

「たい兄がどうしているかなって思っていたら...」

「今、大河がそこにいたような気がしたんだろ」

「えっ? ひろ兄も? うん。たい兄がいたような気がした...」

「なんか、お別れみたいな顔に見えたな...ちょっと違うか。楽しくやってるよって感じか」

「うん。私もそう思った。寂しそうな顔に見えたけど、でも、楽しそうにも見えた」

「どこかで頑張っているのかな?」

「たい兄のことだから、頑張っているよ。うん、絶対」

 二人はその後、大河の話で盛り上がるが、二度と会えないと感じていた。




 氷の月、第1週水の曜(2月4日)の昼過ぎ、ベッカルト村ではクラリッサが初の出産に臨んでいた。
 午後4時頃、手を握っていたギルベルトも追い出され、ヤネットばあさんが助手と共にクラリッサについている。

「クラリッサ、リサ! しっかりおし! もうすぐじゃ、なあに心配はいらないよ。治癒師殿の話を聞いただろ。あの治癒師のタイガが儂を認めたんじゃ、何にも心配はいらないよ」

 クラリッサは初産ということもあり、かなり苦しんでいた。

 時折、意識が飛びそうになるが、ヤネットの手助けと励ましを受け、無事に元気な女の子を出産した。


 午後5時頃、北の街では一人の娼婦が死に、そして、数百マイル離れたこのベッカルト村で新たな生命いのちが誕生した。
 そう、これはただの偶然。共通しているのは、ある一人の男にゆかりがあるだけ。


 リサは、産声を上げた我が子を見つめている。
 ヤネットに呼ばれたギルベルトは、その部屋に駆け込み、初めての我が子と愛しい妻の無事を確認する。
 ギルベルトは疲れた顔をして妻を労わり、手を握りながら、自分の子を見つめていた。

「リサ。ありがとう。お疲れさん」

「うん。思ったより大変だったけど、なぜか絶対大丈夫って思えたの。不思議ね」

「そうか...俺も誰かの声を聞いたような気がした」

 二人ともなぜそう思ったのか不思議に思ったが、なぜかすんなり納得していた。
 そして、リサは赤ん坊を見つめ、

「ところで名前は考えたの? 男の子だったら私が、女の子だからギルが付けるって約束でしょ」

「ああ、ティリアと名付けようと思う。いいか」

「ええ、ティリア。ティリア、いい名前ね。私も同じ名前を付けたと思うわ」

「ああ、なあ、男の子だったらどんな名前を付けるつもりだったんだ?」

「内緒って、言いたいところだけど、特別に教えてあげるわ。ティムって付けようと思っていたのよ」

「ティムか、いい名だ」

 二人は生まれたばかりの我が子を見ながら、笑っている。

 ギルは男たちに連れていかれ、宴会が始まっていた。
 ヤネットが食事を取りに行ったため、部屋にはリサと生まれたばかりのティリアが残されていた。
 彼女は出産の疲れから、3時間ほど眠っていたようだ。

 我が子を見ようと、ベッドから身を乗り出した。
 ティリアは皺くちゃの顔で眠っている。
 口が少し動いているような感じで、顔もなんだか笑っているようだ。

(なんか誰かと話しているみたい。あっ、今、笑ったわ。でも、なんだか少し寂しそうな感じもする)

 ティリアの目から一筋の涙が流れた。

(どうしたの。そんなに悲しい顔をして。どこか痛いのかしら?)

 彼女はヤネットを呼ぼうと声を上げようとし、もう一度娘を見てみた。
 彼女の娘はもう一度悲しそうな笑顔をしたかと思うと、再び小さく口を動かした後、健やかな顔でスヤスヤと眠り始めていた。

(何があったのかしら? 妖精でもいたのかしら? それにしては悲しそうな顔...でも、今は大丈夫ね)

 彼女はこのことをギルにどう話そうか考えていた。
 そして、ティリアがこれから先、誰とどう生きていくのかと考えていた。

(きっといい人たちと出会えるわ。それもたくさんの...)

 ベッカルト村のような田舎の小さな村でたくさんの人と出会えるというのはおかしいのだが、リサは何の疑問も持たなかった。



 大地に落ちた一滴の雨は大地に染み、やがて地より現れ、清らかな流れとなっていく。
 そして、清流は集まり、川を形作り、川は集まり、また、分かれながら、次第に大きな河になっていく。
 大きな河は滔々と流れ、やがては海にそそぎこみ、その流れを止める。
 海は雲を生み、雲は見知らぬ土地に流れていく。
 雲は見知らぬ大地に再び一滴の雨となって降り立つ...

 彼の物語はまだ始まったばかり。
 川のように集まり、分かれながら、どのような大河に育っていくのだろう。
 そして、彼はこの先...

(終)
アマリーとノーラたちの今後の生き方とタイガの感慨を入れる予定でしたが、書く気を失いましたので、書きかけのまま投稿します。

これで終わりです。
ここまで我慢して読んでくださってありがとうございました。
では、さようなら。
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