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第4章.シュバルツェンベルク編
第4章.シュバルツェンベルク編:第12話「気分転換」
 38階で苦戦してから、半月が過ぎた。
 今日は、霜の月の第6土の曜、すなわち11月の最後の日だ。

 この半月間は、週5日のうち4日はオークウォーリアとの戦い、1日はミルコとの訓練というサイクルを3回繰り返していた。

 そのおかげでレベルは順調に上がり、22まで上がっている。
 しかし、魔法を重点的上げたため、思ったより両手剣のスキルは上がっていない。

 高山タカヤマ 大河タイガ 年齢23 LV22
  STR1677, VIT1945, AGI1567, DEX1590, INT4502, MEN2564, CHA1325, LUC1315
  HP1170, MP2564, AR6, SR6, DR6, SKL305, MAG190, PL37, EXP463482
  スキル:両手剣44(複撃2、狙撃1、強撃1)、
      回避40(見切り3、予測1)、
      軽装鎧32(防御力向上2)、共通語5、隠密11、
      探知18、追跡8、罠5、罠解除8、体術28、乗馬8、植物知識9、
      水中行動4、上位古代語(上級ルーン)50
  魔法:治癒魔法22、火属性22、水属性16、風属性16、土属性16

 魔法を有効に使う方法を模索しているが、未だに有効な戦術が思いつかない。

 昨日も38階にチャレンジしてみたが、やはりオークシャーマンの魔法を食らってしまい、数回の戦闘で止む無く37階に撤退。

 あまりに煮詰まっている俺を見かねたのか、

「タイガ、明日は休め。そんな調子じゃ、いつまで経っても前に進めねぇぞ。女でも買ってすっきりしてこい」

と言われる始末。

 今日の訓練は早めに切り上げ、酒を飲むことにする。

 いつもなら6時過ぎに山シギ亭に帰り、入浴後7時過ぎに夕食をとるのだが、今日はいつもより2時間以上早い4時前に宿に戻った。

 山シギ亭の主人モリッツが、

「今日は早いな。なんかいいことでもあったか」

「なんもないよ。気分転換に早く帰れってミルコに言われただけだ」

 久しぶりにゆっくりと入浴し、5時半頃から夕食を食べながら、酒を飲んでいると、

「よう!元気にしてるか!」

と声を掛けられ、肩を叩かれる。

 振り向くとカスパーたち5人が立っていた。
 護衛クエスト完了の打ち上げをするようだ。
 同じテーブルで食事をすることになり、互いの現況を報告し合う。

「タイガ、その後の調子はどうだ」

「ああ、なんとかやっているよ。それにしても久しぶりだな」

「俺たちは、時々ここに泊まっているんだが、お前がいつも迷宮に行っているか訓練しているかで遅く帰って来ているそうだから、声をかけなかったんだよ。ところで迷宮はどこまで行ったんだ?」

「気を使わせちまったな。迷宮の方は37階で1ヶ月近く止まっているよ。どうしても38階から先に進めないんだ」

「まだ、ソロなんだろう。3ヶ月で、もう38階か。相変わらず非常識な奴だな」

とみんなに笑われる。

 俺としては、何が常識か判らないから、曖昧に笑ってごまかしているが、カスパーは少し真剣な表情で、

「普通、ソロで行けるのは20階までって言われているんだよ。35階以上に進んだのは、去年だったか一昨年だったかに14,5歳の若造が65階まで行ったって言う噂を聞いたくらいだぞ」

「14,5歳で65階か。すごいな。本当の天才なんだろうな」

「はぁぁあ。お前なぁ、自分がどう噂されているか知ってるか?”剣鬼の後継者”、”神速の剣士”、”胴落としの豪剣使い”...」

(なんだ、その恥ずかしい呼ばれ方は。ミルコの気持ちが良く判った)

「もう止めてくれ。体が痒くなる。」

「お前の戦いを見ていた奴の正直な感想だよ。幸い誰も魔法の話はしていなかったけどな」

「まあ、見られているのは知っていたからな。誰もいないときしか使っていないんだ」

「だから、お前もここにいる連中から見れば、天才の一人だと思われてるんだ。第一、ミルコに弟子として認められたんだろ。それだけでもここシュバルツェンベルクでは、一目もニ目も置かれるってわかって無いだろ」

「俺はただの”変人”って思われてるって、思ってたよ」

「それは否定しないよ。第一、朝から晩まで訓練か迷宮かだろう。それも休みもせず、毎日なんて、どんな戦闘狂バトルジャンキーなんだ?」

「まあな。ミルコの方針なんだよ。言いたいことは判るよ。最初の頃は、模擬戦でミルコに伸されて、そのまま気絶する振りをして寝たこともあったくらいだからな」

「明日も迷宮か?」

「いや、1ヶ月振りの休みだ。まだ、何も予定は決めていないんだ」

「じゃ、今日はとことん呑むか!」

 久しぶりに酔っ払うまで酒を飲んだ。

(たまにはこういうのもいいな。明日の二日酔いが心配だが、寝ていればいいか)

 翌朝、少しだけ酒が残っていたが、酷い二日酔いになることもなく、いつも通り、まだ少し暗い朝6時に目が覚める。

(この時間に起きるのが当たり前になったから、目が覚めてしまったな。二度寝するにしても腹が減ったから、朝飯を食ってから考えるかな)

 朝食を取ると余計に目が冴え、二度寝する気がなくなってしまう。

(今日はどうしようかな。天気は良さそうだけど、さすがに12月=風の月に入ったから、外は寒そうだけど、久しぶりに馬にでも乗ってみるか)

 ギルドの馬場に向かい、馬を借りる。
 ゴスラーから一緒にやってきた牝馬がいたので、久しぶりに相棒と遠出することにした。

 シュバルツェンベルクの街を出て、シュバルツェン街道を東に進んでみる。
 シュバルツェンベルクより東には大きな町はなく、山間やまあいに小さな村があるだけだそうだ。

 街を出るとすぐに森になり、道も徐々に狭くなっていく。
 宿で聞いた話では、3マイル=4.8kmくらい東に行くと、大きな池があり、きれいな風景が見られるそうだ。

 この時期は熊や狼などの魔物が多いので気をつけるようにと言われたが、その池までならそんなに危険はないとのことだった。
 念のため、武装はしているが、今日はあまり戦う気分では無いので、魔物が出てこないことを祈っている。

 一時間ほどで目的の池に到着する。

 日本人の感覚からすれば、池というより湖なのだが、確かに透明な水面みなも、緑の針葉樹、少し雪化粧された山々のコントラストは美しく、澄んだ空気と相まって、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 30分ほど近くの岩に腰を下ろし、風景を眺めながら休憩し、シュバルツェンベルクに戻るため、街道を西に戻っていく。

(ツーリングで気分転換するようなものだな。これから寒くなるから難しいけど、時々遠乗りするのも悪くない)

 昼前にシュバルツェンベルクに到着し、馬を返しに行く。

(昼から何をしようかな。街をブラブラしてからエルナにでも会いに行くかな)
ちょっと短めです。


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