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第4章.シュバルツェンベルク編
第4章.シュバルツェンベルク編:第11話「初の魔法被弾」
 オークウォーリアでの特訓を10日間続け、2匹相手でもほぼ問題ないレベルまで強撃も使えるようになった。

 レベルも19に上がり、両手剣スキルが42、強撃のスキルも得ていた。合わせて、回避スキルも37に上がり、予測のスキルも得ている。

 高山タカヤマ 大河タイガ 年齢23 LV19
  STR1446, VIT1675, AGI1352, DEX1380, INT4287, MEN2312, CHA1145, LUC1135
  HP1080, MP2312, AR5, SR5, DR5, SKL283, MAG162, PL34, EXP313282
  スキル:両手剣42(複撃2、狙撃1、強撃1)、
      回避37(見切り2、予測1)
      軽装鎧28(防御力向上1)、共通語5、隠密11、
      探知15、追跡8、罠5、罠解除8、体術23、乗馬8、植物知識9、
      水中行動4、上位古代語(上級ルーン)50
  魔法:治癒魔法19、火属性16、水属性9、風属性9、土属性9


 ミルコも納得できたのか、ようやく元の剣に戻してもいいとの許可が下りた。

 その時、

「そろそろ、おめぇに教えられることがなくなってきた。これからは迷宮メインで場数を踏みな。命のやりとりって奴は、最後は経験が物を言うんだ」

「ミルコ。まだ、教えてもらってない技があるはずだ。あんたに最初に出会ったときに俺が食らったあの技だよ」

 そう、最初に食らった重くて速い攻撃。あの攻撃は今でも忘れられない。

「ああ、あれか。あれは教えられて覚えられるもんじゃねぇ。自分に合った形で自然に身に付くはずだ」

「どういうことだ?」

「あれは、これといった型があるわけじゃねぇ。いくつかの型を合わせたもんだ。使っていくうちに自然と組合せができてくるもんだ」

「でもよ...」

「もう見てやらねぇって言ってるわけじゃねぇんだ。週に1回は見てやるから、地力を付けて来いって言ってんだよ。ブツブツ言わずにとっとと迷宮に行け!」

 俺はどう意味か良く判らなかったが、迷宮に向かうことにした。


 ミルコは、大河の後姿を眺めながら、

(タイガよ。おめぇは天才だ。竜殺し(グレゴール)以上のな。今のレベルでその技量がどれだけ異常なことか判ってねぇだろう。半年で一流にできると思ってたが、3ヶ月掛かんねぇうちに超一流になりやがった。後は場数を踏むだけなんだよ)

 ミルコは自らの技を受け継ぐ者が現れたことに満足しているが、その表情から、それは一切伺えなかった。


 俺は35階の転送室から、36階を順調に進み、37階に降りてきた。

 36階ではあまり気にならなかったが、さすがに訓練用の模擬剣とディルクの剣の差は大きく、4、5発掛かっていたのが、2発か、運がよければ一撃でオークウォーリアを倒せるようになっていた。

 37階から、38階に降りると、すぐに3匹のオークが現れた。
 両手剣使いのオークウォーリア2匹とオークシャーマン1匹だ。

  オークシャーマン:
   オークの希少種。属性魔法を使う。個体により使う属性が異なる。
    HP800,MP800,AR5,SR5,DR5,防御力30,獲得経験値150
    杖(棍棒:スキルレベル15,AR30,SR65),アーマーなし
    各属性魔法レベル10(火属性第二階位まで使用可能)

 オークシャーマンだ。フード付きのローブを纏っており、オークというより、体格のいい魔術師といった感じだ。

「グルゥゥ」

 オークウォーリアが珍しく、ゆっくりと接近してくる。
 後ろでは、オークシャーマンが呪文を唱え、魔法の準備をしている。

(どうやら、3匹でタイミングを合わせて攻撃してくるつもりだな)

 火属性第二階位の魔法はファイアストーム。範囲攻撃魔法だから、撃たれた瞬間、絶対に命中する。

(ダメージが結構大きいから先制攻撃だな)

 俺は、鞘ごと剣を抜き、床に立て、呪文を唱える。

「万物の基となるマナよ、わが身に集いて...」

 前衛2匹に防がれると厄介なので、風属性のマジックアローを選択し、素早くオークシャーマンに撃ち込む。

 マジックアローは、空気を集束させた透明な矢でよく見れば見えるが、回避が難しい魔法だ。まだ、改良していないので、魔導書に書いてあった通りの通常型だ。

 マジックアローは、オークシャーマンに命中し、オークシャーマンの呪文を中断させる。

 2匹のオークウォーリアが気付き、一気に接近してくる。

(同士討ちになっても気にしないだろうから、接近戦中でも構わず、魔法を撃って来るんだろうな。一撃は仕方がないか。できるだけ早く前衛2匹を片付けよう)

 後ろのオークシャーマンは気にせず、前衛に集中して攻撃を掛ける。

「ギャグァア! ガッ!」

 見切りと強撃で1匹目を片付ける。

 その瞬間、俺の周りがゴォォと赤い炎の渦に包まれる。

(くそ、熱い!)

 オークシャーマンは味方であるオークウォーリアを無視してファイアストームを撃ってきた。
 いつも自分で使っていたが、初めて魔法を食らった。

(こんなに苦しいのか)

 ファイアストームの範囲は半径15フィート=4.6mくらいだから、オークウォーリアを無視すれば、2秒で出られる。

 目の前のオークウォーリアを無視して、一気に後ろに下がり、ファイアストームの範囲から逃れる。

 僅か数秒だが、体力を5%くらい持っていかれた。
 継続時間一杯の1分間もあの中にいたら、1/4以上体力を失っていただろう。

(広範囲魔法は避けようが無いから厄介だ。撃たせる前にどうにかしないと、このフロアの攻略は難しいな)

 ようやく、炎の渦も治まり、目の前に焼け焦げたオークウォーリアが近寄ってきた。

(正に同士討ち(フレンドリーファイア)だな)

 オークシャーマンのファイアストームで、オークウォーリアの体力は1/3くらいになっている。

(あと一撃で倒せるな)

 接近してきたオークウォーリアを一撃で倒し、オークシャーマンの方を見ると、また呪文を唱え始めている。

(まだ、この辺りのマナは戻りきっていないはずだ。今のうちに接近してしまわないともう一発撃たれることになるな)

 10数m先のオークシャーマンに向かい、全速力で接近する。

 どうにか、間に合ったようで、オークシャーマンはまだ呪文を唱えている。

 防具を持たないシャーマンは、接近してしまえば、普通のオークと大して変わらない。

「ガハッ!ギャア!」

 俺の攻撃を受けたオークシャーマンは人間に近い悲鳴を上げ、消えていく。

(初めてファイアストームを食らったが、結構きついものがあるな。魔法の対処法を考えないとこの先、本当にやばいかもしれない)

 魔石を拾い、治癒魔法をかけて回復。
 更に38階を進んでいく。

 歩きながら考えたシャーマン対策は、

 ①ウォーリアが近寄ってくるまでに魔法でシャーマンを倒す
 ②魔法を撃たせた上で回避し、マナ密度が戻りきる前に全滅させる
 ③魔法を撃つ準備を始めたら後退し、追って来たウォーリアを各個撃破する
 ④ウォーリアを無視してシャーマンに接近し、シャーマンも含めた混戦にしてしまう

 の4つだ。

 ①はシャーマンの体力からウォーリア接近までに倒しきるのは現実的には困難だろう。
 ②は魔法の発動タイミングを見誤ると回避が難しく、さっきと同じになる。
 ③は風属性の魔法の射程は150フィート=46mもあるので現実的では無い。
 ④はウォーリアがおとなしく通してくれるとは思えない。

 結局、解決策は見つからない。

(一番損害の少なそうな②をベースに戦っていくしか無いだろうな)

 そんなことを考えながら進んでいくと、オークが3匹近づいてきた。編成はさっきと同じだ。
 今回は積極的に前に出て、オークウォーリアに攻撃を掛ける。
 20秒ほどで1匹目を倒し、シャーマンを見るとまだ呪文を唱えている。

(また第二階位の魔法だな)

 シャーマンまでの距離は10m弱。ウォーリアを無視して突っ込めない距離ではない。

 2匹目のウォーリアの脇を攻撃を避けながらすり抜け、シャーマンに接近する。

(よし、シャーマンはまだ呪文を完成させていない)

 シャーマンに斬撃を加えて呪文を中断させ、後ろから接近してくるウォーリアに攻撃を掛ける。前後に挟まれる形になったが、構ってはいられない。

 俺がウォーリアと斬り合っている間に、シャーマンは距離を取るため後退する。
 俺は焦らず、ウォーリアを仕留め、シャーマンに対峙する。

 シャーマンは大技を諦め、第一階位の魔法:マジックアローを俺に向けて放ってきた。

 近い距離から撃たれたため、短いヒュ!という音とともに空気の矢が俺の腹部に突き刺さる。

 革鎧で多少は防ぐことができたが、全HPの2割近いダメージを負ってしまう。

(痛ぇ!)

 ファイアボールのように見えないし、革鎧じゃ防御力が低すぎるため、HP減少が馬鹿にならない。

(もう一発撃たれる前に接近して倒してしまわないと)

 血が滲む腹を押えながら、オークシャーマンに接近し、お返しとばかりに大技の強撃で真っ二つにする。

 オークシャーマンが消えるのを確認し、治癒を掛けてから、階段のところに戻っていく。

(40階が一つの山ってのは本当だな)

 酒場やギルドで聞いた話では、一つ目の山が25階のオークの群れで初期装備のままではオークの体力を削りきれず、突破は難しい。

 二つ目の山が40階のオークウォーリアとオークシャーマンのグループで、頑丈な前衛の壁と後衛からの魔法の攻撃。

 ゴブリンシャーマンが撃つ回避可能なファイアボールではなく、回避不可能な広範囲攻撃魔法でパーティ全体の体力を一気に奪われてしまう。

 パーティ側の弓使いがうまくシャーマンを牽制してくれれば、魔法によるダメージは防げるが、オークウォーリア自体の攻撃力も無視できないので、前衛の体力が徐々に削られていくことに代わりは無い。

 治癒師がいたとしても、1フロアで最低5回は戦うので、ダメージを負い続ける戦い方では、治癒師の魔力切れがクリティカルになる。

 オークシャーマンの魔法を抑えつつ、ウォーリアを早期に倒すことができるパーティのみが、この二つ目の山を越えられるわけだ。

 もちろん、俺のようなソロには、完全には当てはまらないが、考え方は共通だと思う。

 40階を制覇すると晴れて一人前のCランクとなれるというのは理に適っている。

(38階はいまの戦い方でも突破できるだろう。39階、40階と敵が増えたときが問題だ。ミルコが地力を上げろっていうはこういうことを指しているのかもしれないな)

 とりあえず、38階は諦め、37階でウォーリアを狩って、レベルアップに励むことにする。

 その後37階で、剣と魔法の両方をうまく使いながら、15回の戦闘をこなした後に迷宮を出ることにした。
散々使ってきた魔法で苦しんでいます。
焼き殺したゴブリンたちの呪いか?

9月3日までで毎日更新を停止すると発表しましたが、9月4日以降も毎日の更新を継続します。
ご心配、ご迷惑をおかけしました。
今後とも応援よろしくお願いします。


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