第4章.シュバルツェンベルク編
第4章.シュバルツェンベルク編:第6話「シュバルツェンベルクの鍛冶師」
翌朝、さすがに疲れが取りきれず、眠い目をこすりながら、7時にギルドに向かう。
まず、魔石を換金する。
昨日の成果は、
ホーンラビット21匹、ワイルドドッグ25匹、ジャイアントバット22匹。
コボルトウォーリア62匹、コボルトアーチャー28匹、コボルトシャーマン18匹。
シルバーウルフ1匹、コボルトキング1匹だった。
換金すると、ホーンラビット、ワイルドドッグ、ジャイアントバットが銅貨7枚、コボルトウォーリア、アーチャーが銅貨10枚、コボルトシャーマンが銅貨12枚、シルバーウルフが銀貨1枚、コボルトキングが銀貨1枚と銅貨50枚で合計銀貨18枚、銅貨42枚だった。
これに宝箱の錆びたダガー1本が銀貨4枚と評価され、最後の宝箱の銀貨5枚を加え、銀貨27枚と銅貨42枚。防具の破損を考えると苦労した割には全く儲けが無い。
儲けは少なかったが、レベルは14に上がっていた。
高山 大河 年齢23 LV14
STR1061, VIT1135, AGI995, DEX1030, INT3930, MEN1892, CHA845, LUC835
HP871, MP1892, AR3, SR3, DR3, SKL248, MAG116, PL31, EXP139213
スキル:両手剣24(複撃1)、回避17、軽装鎧12、共通語5、隠密9、探知7、
追跡6、罠5、罠解除2、体術11、乗馬8、植物知識9、水中行動4、
上位古代語(上級ルーン)50
魔法:治癒魔法13(治癒3、解毒1、精神ダメージ回復1、麻痺回復1)
火属性13、水属性2、風属性2、土属性2
両手剣と回避、鎧、体術は順調に成長。
魔法も火属性と治癒は順調に成長しているが、水、風、土の3属性は使っていない分、ほとんど成長していない。
そろそろ3属性も使い始めないといけないが、今は剣に集中すべきだろう。
ケヴィンたちのことは、ミルコに相談してから報告するつもりだ。
少し早いが、防具屋に向かい、修理と予備の購入を行う。
修理には1G、予備の購入に5Gで本当に割に合わない。
損益分岐点は何階なんだろうと考えながら、ミルコの元に向かう。
8時にミルコがやってきたので、昨日の出来事を掻い摘んで話す。
「運が悪かったな」
ミルコの話では、低層で行き詰っていた連中が、自分たちが行き詰っているのは装備の所為だと思いこみ、俺のよさそうな装備に目が眩んで襲い掛かってきたんじゃないかとのことだ。ミルコもソロの時、30階くらいまでは何回か襲われたそうだ。
「まあ、一応、ギルド長に話を入れておきな」
「なあ、ミルコ。あんな奴らに会ったらどうしたらいいんだ」
「逃げるか、殺すかだが、できれば逃げた方がいい」
ミルコ曰く、勝てる相手でもケガをしたり装備を壊したりしたら、その後の魔物との戦いで不利になる。相手の特徴だけ良く覚えておいて、ギルドに報告するしか方法は無い。ただ、報告したからどうなるものでも無いそうだが。
「しかしなぁ、こんなことは先に言って欲しかったよ。ギルドの情報じゃ“トラブルに注意”としか教えてくれねぇし、普通は先輩が教えてくれるもんだろう」
「へっ、馬鹿いうな。お前の腕なら今の階層で出会うような未熟者に遅れを取ることも無かろう」
俺の抗議もどこ吹く風。仕方が無いのでギルドに向かい、昨日の報告をする。
受付で、簡単な事情を聞かれただけで、特にギルドのお偉いさんからの事情聴取もない。念のため、ケヴィンたちが帰ってきたか確認したが、わからないとのことだ。
(こんなもんかよ。人の命が懸かっているのにあっさりしたものだな)
ギルドから帰り、ミルコに報告。
「なあ、ミルコ。冒険者が5人、犯罪に手を染めて行方不明になったのに、ギルドの対応があっさりしているのは、どうしてだ?」
とギルドで思った疑問をミルコにぶつけてみる。
「ここシュバルツェンベルクには500人からの冒険者がいるんだ。一々気にしていたらギルドの業務が滞っちまうからな」
納得できず、「うーん」と唸っていると、
「Bランク以上のベテランならまだしもEランクの駆け出しなんぞ、月に何人もいなくなっているわ」
とバッサリ切って捨てられる。
気にするなとのことだったので、正直納得したわけではないが、これ以上考えても答えは出ないし、自分のことに集中することにした。
迷宮の中では、いくら魔物の血糊が着いてもその魔物が死ねば血糊も一緒に消えるため、血糊で切れ味が落ちることは無い。
だが、剣で受けたり骨を断ち切ったりするとどうしても刃毀れが起きる。
2日間で350匹以上の魔物を切ってきたため、さすがのディルクの剣も少し刃毀れが出始めている。素人の俺ができる手入れは血糊を落とすことくらいで刃毀れを研いで直すことはできない。
ミルコに武器屋に行ってくると断った上でデュオニュースの弟子のダグマルの武器屋に行くことにした。
武器屋はギルドのすぐ近くにあり、訓練場からも近い。
5分ほどでダグマルの店に到着。
「ダグマルって鍛冶師はいるかい?」
と声を掛けると、若いドワーフの鍛冶師が奥の工房から出てきた。
(やっぱり鍛冶師はドワーフなのか。こいつもいきなり手を見せろって言ってくるのかな?)
「買いに来たのか、それとも修理か」
(あっ、普通の対応だ)
「手入れを頼みに来た。ここ2日でかなりの魔物を切ったから少し刃毀れが出ているんだ」
と言って、剣を差し出す。
「ほう、これはディルク師のものだな」
(さすがに一流の鍛冶師は、見ただけで誰の作か判るんだ)
「判った。今日中に仕上げておこう。これだけでいいか?」
ついでなのでスローイングナイフも手入れしてもらう。
「おい、これは師匠の作じゃねぇか。お前さん、師匠に会ったのか」
「デュオニュースさんからそのナイフを買ったよ。今、ミスリルかアダマンタイトの両手剣を打ってもらっているよ」
「師匠に認められた男の武器だ、いつも以上に気合を入れて手入れしてやるぜ」
その後、少し恥ずかしそうに、
「師匠の剣を手に入れたら、一度見せてくれないか。頼む」
と拝んでくる。
「ああ、別に構わない。っていうか、どうせデュオニュースさんの剣なんて、普通の鍛冶師は触れないだろ。元々ここで手入れを頼むつもりだよ」
「楽しみにしているよ。師匠がミスリルの剣を打つなんて数年振りだからな」
剣とナイフをダグマルに渡し、訓練場に戻る。
今日は、ギルドに行ったり、武器屋に行ったりしたので、訓練は8時間で終了。
明日は迷宮で、25階まで制覇がノルマになった。
18時にダグマルの店に向かう。
「武器の手入れは終わっているかい?」
「ああ、終わっているぜ。少しだけバランスが悪くなっていたから、それも調整しておいた。裏で試してくれないか」
まだ熱気が充満している工房の中を通り、裏庭の試し斬り場に行く。
革製の鎧を被せたわら人形が置いてあり、”あれを斬ってみてくれ。”と言われたので、愛剣で革鎧ごと斬り付けてみる。
(使いやすくなっている。しかも切れ味もかなり良くなっている)
「どうだ。ディルク師の剣に手を加えるのはどうかと思ったんだが、握りの具合を見たら、少し合って無いような気がしてな。もし前の方がよければ、元に戻せるが」
とドワーフの鍛冶師にしては弱気な発言だ。
「いや、前より使いやすい。切れ味も買った当時と同じかそれ以上になっている。このままの方がいい」
鑑定で剣を見てみると
ツーハンドソード(銘無:スチール製)
攻撃120、命中60、必要STR400、レンジ6ft、長さ5.0ft、重量6.0lb
と命中率が上がっている。
(さすがにデュオニュースの弟子だねぇ。握りを見ただけで簡単にチューニングかよ)
「タイガ。お前さんにもう一つ聞きたいことがあるんだが、この剣の切っ先が妙に痛んでいるんだが、どういう使い方をしているんだ?突きを専門にするにしてももう少し違う痛み方になるんだが」
(魔法を使うたびに地面に突き刺していたからな。最近は剣を投げたりもしているし、その所為だろうな。これを言うと怒鳴られるかな?)
「俺は魔法も使うんだ。その時にこのスチール製の剣が邪魔でね。よく地面に突き刺してるから、それが原因だと思うよ」
「そうか...剣が立っていれば良いんだな。鞘の方を工夫して立つようにしてやろうか」
ダグマルが説明するには、鞘の切っ先側に4本の金具とバネでスタンドを作ってくれるとのことだ。
切っ先側を地面に押し当てると、バネの力で20cmくらいの棒が四方に開き、十字状になるようにしてくれるとのことだ。一番近いイメージはジャンプ傘か。
「その細工をしてもらえると助かる。しかしこんな仕掛けよく思いつくな」
「元はお偉いさんの剣をきれいに見せるための仕掛けさ。出陣したお偉いさんが椅子に座ったときに横に剣が立っていた方が見栄えが良いし、両手が使える。昔、頼まれて作ったことがあるんだよ」
「なるほどねぇ。で、どのくらいでできる?」
「2日あればできる。その間は別の鞘を貸してやるから、それを使ってくれ」
両手剣とナイフ3本の手入れで金貨1枚。最初は”久しぶりにいい剣を触れたから金はいらない”といっていたが、今後のこともあるので強引に渡しておいた。
鞘の改造は銀貨10枚で依頼することにした。
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