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第2章.ゴスラー編
第2章.ゴスラー編:第21話「盗賊の根城」

オークロードを倒してから9日間。この間に東の森に1泊する討伐を3回行い、レベルも8に上がっている。

 高山タカヤマ 大河タイガ 年齢23 LV8
  STR599, VIT517, AGI566, DEX610, INT3501, MEN1388, CHA485, LUC475
  HP542, MP1388, AR1, SR1, DR1, SKL206, MAG64, PL26, EXP29729
  スキル:両手剣13、回避9、軽装鎧5、共通語5、隠密9、探知6、追跡6、
      罠5、体術3、乗馬1、植物知識8、水中行動4、
      上位古代語(上級ルーン)50
  魔法:治癒魔法6(治癒1、治癒2、解毒1)
     火属性8(ファイアボール、ファイアストーム、ファイアウォール)

いつものように朝、ギルドの掲示板で「今日はどんなクエストを受けようか」と思っていたら、キルヒナーギルド長がやってきた。

「ああ、ここにいたか。お前さんに特別にクエストを依頼したいんだ。話を聞いてくれるか。」

「話だけなら、聞きますが、特別クエストって普通Bランク以上の冒険者が対象と聞きましたが。」

「いやいや、特別クエストではなく、お前さんに特別に受けてほしいと言うだけだ。」
ややこしい言い方をするなぁと思いながら、ギルド長の部屋に向かう。

「お前さんに受けてもらいたいのは、ある薬草の採取だ。それも期限が3日というものだ。」

「ある薬草ってなんですか。」

「青鈴蘭草という薬草で、球根が薬になる。必要数は球根5個。報酬は金貨5枚だ。」

「金貨5枚ですか。なぜそんなに高いんですか?普通、薬草の採取は高くても銀貨10枚が相場でしょう。相場の50倍ということは何か裏があるんじゃないんですか?」

「実は、ご領主様のご母堂様が病に倒れられてな。その治療に青鈴蘭草が必要なのだが、在庫が3日分しかない。在庫がありそうなオステンシュタットは早馬でも往復6日は掛かる。そこで天才薬師と言われるお前さんに依頼しようと思ったわけだよ。」

「では、他の冒険者にも声をかけているんですよね?」

「いや、今回はお前さんだけだ。」

「なぜなんですか?大勢で探した方が確実じゃないですか。」

「青鈴蘭草は春先には花をつけてわかりやすい薬草なんだが、今の時期は花も落ち、ただの草のようになってしまい、ほとんど見分けがつかない。普通の冒険者を大量投入しても全く役に立たないのだ。」

「そんな薬草を俺に探せと。ちなみにどこの辺りに生えているんですか?」

「オステンシュタットへの街道から北の森に入ったところで、歩きで5時間くらい行ったところに群生地がある。」

「北の森って、ほとんど行ったことがないから土地勘がないんですが。こんな難しいクエストをDランクの俺に回すのはどうかと思いますよ。それに失敗したら2割の違約金の金貨1枚を支払わなきゃいけないわ、ご領主様には睨まれるわで受けるメリットがないじゃないですか。」

「ここゴスラーにはお前さんしかできそうな奴がいないんだ。違約金の件は判った。失敗しても掛からないような契約にする。ご領主様にもお前の話はしない。これでどうだ?」

「もう一声。報酬を金貨7枚に上げてもらえませんか。」

「くそっ。足元を見やがって。判った判った、7枚にしてやる。さっさと行ってくれ。」

「契約書の作成をお願いしますね。それと青鈴蘭草の特徴がわかる資料もお願いします。じゃ受付のところで待っていますから、よろしくお願いします。」

と言って受付に戻る。

受付で北の森の採取クエストをメモしていると、受付嬢が「契約書ができました」と連絡してきた。
内容的に問題ないので、この採取クエストを受け、早速、北の森に向けて出発する。

群生地があるところは、街道を4時間ほど北上した峠から山に入って1時間くらい東に行ったところのようだ。
いつもより少し遅い8時くらいに町を出たので、昼過ぎには群生地付近に到着できるだろう。

オステンシュタットに向かう街道のゴスラー街道は、東部主要都市のオステンシュタットと南部を結ぶ主要街道なだけあり、人通りが多い。
天気もよく、汗ばむ陽気の中、順調に街道を進み、山に入る目印の峠に来たところで昼食を取り、山に入っていく。

北の森は針葉樹と広葉樹が入り混じった森でかなり大きな木が多い。急な斜面や崖が多く、そこを下っていくため、非常に歩きにくい。
幸い、懸念された赤熊などの大型の野獣や魔物には合わず、情報にあった群生地に何とか1時間で到着。

群生地は、深い谷になっている急斜面。情報では日陰になっているところに多く生えているとあったので、それらしいところを積極的に探す。
1時間ほど探してもなかなか見つからない。少し休憩して捜索範囲を広げてみると、思わぬものが見つかった。

トリカブトだ。

 トリカブト:毒草。呼吸困難、心機能停止などを起こし死亡する。特に根に毒が多い。

ざっと見て100株くらいある。

トリカブトは、鏃に毒を塗って毒矢にできると聞いたことがある。と言うことは、血管から入っても効果があると言うことだ。剣でも同じ効果が期待できるかもしれない。
とりあえず、取れるだけ取っておこう。

30分ほどですべて抜き終わると、直ぐ横に青鈴蘭草があった。
というか、トリカブト群生の中に生えている。

(これは、素人では無理だ。)

ただのその辺の草と見分けが付かない上、トリカブトと微妙に絡み合っている。
トリカブトの根と混じらないように慎重に青鈴蘭草の球根を掘り、20個採取する。

既に午後3時。
街道に向けて出発するが、帰りは急斜面を登っていくため、足場が悪く、なかなか進まない。

2時間半ほど掛けてようやく街道に戻るが、既に午後6時前。既に太陽は山に隠れ、徐々に暗くなり始めている。
今から街道を下って行っても1時間もしないうちに真っ暗になるので、早めに夜営場所を見つけなければいけない。

(確か、1時間ほどゴスラー側に向かったところに夜営できる場所があったはずだ。)

今から行けば、何とか真っ暗になる前に夜営場所にたどり着けるかもしれないし、運がよければ他の人も夜営しているかもしれない。

俺は暗くなりつつある街道を早足で進んでいく。
30分ほど経つと足元が見えなくなってきた。その辺りに落ちている木の枝に火を着け、簡単な松明として、街道を進んでいく。
更に30分ほど進み、もう直ぐ夜営場所だと思ったとき、遠くから人の叫び声と金属が打ち合わされる音が聞こえてきた。

戦闘の音だ。

(この先で誰かが戦っている。金属音がすると言うことは人間同士か?)

松明を消し、微かに残った夕暮れの光と月明かりを頼りに街道を慎重に進んでいく。
徐々に人の声が大きくなってきた。俺は身を屈めながら慎重に近づいていく。

「た、助けてくれ!金や荷物は全部やる。命だけは...ギャァ~。」

と断末魔が響き渡る。
その後には複数の男たちの野卑た笑い声だけが辺りに響き渡っている。

「おい、そろそろ引上げるぞ。商人と護衛の持ち物も回収しておけよ。帰ったら宴会だ。」

「「オー」」

とかなり盛り上がっている。

近づいて鑑定してみると、盗賊のようだ。人数は10人。最も高レベルな盗賊は、レベル35、その他の盗賊もほとんどがレベル25クラスだ。

盗賊たちは、商人の荷馬車と思われる馬車を街道とは逆の山の上の方に向かって動かしていく。
俺は盗賊が全員いなくなったのを確認し、商人が殺された場所に向かっていく。

着火の魔法で小さな火を灯し、回りを確認すると、40歳くらいと20歳くらいの商人らしき男性2人と護衛らしき男性5人の死体が見つかった。
衣服も含め、すべて剥ぎ取られている。

この後どうすべきか。
ここで一夜を明かして明日朝一番でゴスラーの守備隊に報告するか、このまま暗闇の中をゴスラーの町に向かって守備隊に直ぐに報告すべきか、それとも盗賊たちの後を着け、根城を見つけるべきかの選択肢で悩んでいる。

普通に考えれば、明日の朝一番に出発して報告するのだが、この血の臭いの立ち込めた場所に一晩いるのは魔物の襲撃のリスクがある。
それならば、暗闇を歩いてゴスラーに向かうべきだろう。

だが、盗賊たちは俺の存在に気付いていないし、この時間に街道を歩いているなんて想定もしていなかった。あれだけ大声で騒げば数百m先でも聞こえてしまうが、そんな気遣いはしていなかった。

つまり、奴らは油断している。

それならば、奴らをつけて行き、根城を見つけてから報告した方が確実だ。
幸い俺には鑑定がある。真っ暗闇でも視線が遮られなければ見失うことはない。

俺は盗賊たちをつけていくことにした。
盗賊たちは、煌々と松明を着け、相変わらず緊張感のかけらもなく、大声で話しながら荷馬車を進めている。

俺は松明を目印にしながら、山を登っていく。
歩いているうちに、足元が道になっていることに気付く。それも獣道ではなく、廃れているが、元は確りとした道のようで、忘れられた旧街道のようだ。

2時間ほどして、山の頂上のような少し開けた場所に出たようで、盗賊の根城に到着したようだ。下から見ているため、頂上がどうなっているかわからないが、頂上の入口付近に見張りが1人いる。今のところ見える範囲には誰もいない。

俺は道から外れ、罠や警報装置がないか慎重に頂上に近づいていく。
途中に警報装置らしきロープがあったが、慎重に回避する。

1時間ほど掛けて、道から100mくらい離れた場所に辿り付き、そこから頂上に上がっていく。
頂上は直径50mくらいの広場になっており、砦か見張り台のような古い石造りの建物が建っている。
どうやら、この建物が盗賊たちの根城のようだ。
長くなったので、分割しました。


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