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第2章.ゴスラー編
第2章.ゴスラー編:第15話「弱者の連携とランクアップ」
 翌日は、午前中に東の草原で薬草採取を行い、クエストを5件クリアしておく。

 午後からは全員で武器屋に行き、ダニエラのショートスピアとキャサリンのショートボウと矢20本を購入。

 ダニエラの方はショートソードの売却分でほぼ賄えたが、キャサリンの方は50Sくらい足りなかった。購入後、早速訓練場で試してみる。

 まずはダニエラのショートスピア。

 構えは何となく様になっているが、突き出すスピードや取り回しが今一しっくり来ない。

 俺もやってみたが、スキルもない武器なのでどこが悪いのかはわからない。とりあえずいろいろ試すように言っておいた。

 キャサリンの方は、まずは持ち方から練習。

 ベリエスに睨まれながらもキャサリンの後ろに回り、抱きかかえるようにして弓の持ち方を教える。
 ギルが使っていたロングボウの縮小版なので、持ち方なんかは同じだろう。

 キャサリンの手をとり、弦を一緒に引き、矢を放つ。
 なんとかまっすぐ飛んで行ったが、的からはかなり外れた位置に刺さっている。
 これも練習あるのみと伝え、自主練習させておく。

 4人とも片手剣、槍、弓なので俺が教えられることは少ない。
 ついでに俺もツーハンドソードを取り出して訓練を始める。
 さすがに半日も練習しているとある程度さまになってくるようで、明日は森に行けそうだ。

 翌日、いつものようにギルドでクエストを受けてから、東の森に向かう。
 今日は4人とも周囲の状況を気にしながら、慎重に森を進んでいく。

 途中でジャイアントスパイダーを発見し、俺のファイアボールとキャサリンの弓、ダニエラの槍で倒す。アントンとベリエスは出番がなく、なんとなく不満そうだが、昨日武器を替えたばかりの2人の少女は嬉しそうにしている。
 昨日「森で、はしゃぐな」と言われなかったら、手を取り合って喜んでいたかもしれない。

 本命のグリーンクロウラーを発見。ファイアボールで仕留める。
 森の中での戦闘には極力4人を参加させない方針なので、速攻で倒しておく。
 但し、4人には周囲の警戒をするよう指示しており、緊張した面持ちで周囲を警戒している。この世界の13歳は擦れていない分、素直でいい。

 グリーンクロウラーを更に2匹とジャイアントスパイダーを1匹倒したところで草原に戻る。もちろん、薬草採取はクリアしている。

 草原で野犬の群れを発見。5匹いる。
 4人には、昨日の内に戦い方を教えてあるので、何も言わず、見守っておく。

 4人は、アントンとベリエスの少年二人が前衛になり、ダニエラがやや後ろで槍を水平に構えている。
 キャサリンは更に後ろから弓を構えて射程内に入ってくるのを待っている。RPGなんかであるパーティの標準的なフォーメーションだが、実際に役に立つのかはわからない。

 とりあえず、これでやってみてから徐々にチューニングしていく方がいいだろう程度の考えだ。もちろん、4人には自信満々でフォーメーションの説明をしており、不安にならないように気は使っている。
 野犬の内、2匹がゆっくり接近してくる。ショートボウの射程内に入ったので、キャサリンが矢を放つが、さすがに一発目から当たることはない。

 その矢が合図となり、2匹がアントンとベリエスに襲いかかってくる。
 他の3匹も時間差をつけて襲いかかる。
 アントンとベリエスはお互いに後ろに行かせないようけん制しながら攻撃を掛け、隙をついてダニエラがダメージを与えている。

(ほう、いきなり連携ができているじゃないか)

 若いから理解力があるのか、ほぼ俺の指示通りの動きをしている。
 キャサリンも左右に動きながら、時折矢を放っている。2発目以降は近いこともあり、命中し始めている。

 10分ほど見ていたが、連携にほころびは出ていない。
 だが、体力的に厳しいのか、徐々に動きが悪くなってきている。今のところ大きなけがはしていないが、もうそろそろ限界のようだ。

 俺は4人に声を掛け、支援することにした。

「ファイアストームを撃つから、すぐに下がってくれ」

 1分ほどでファイアストームを発動。4匹の野犬を倒し、1匹にダメージを与えた。
 4人はへとへとになりながらもダメージを負った野犬に止めを刺し、討伐証明部位の剥ぎ取りを開始する。
 毛皮は無理そうなのでそのまま捨てていくことにしたようだ。

「今の戦い方は良かった。昨日俺が言ったやり方を実戦でよく出せたな」

「昨日の夜、宿の外で練習したの。少しでもうまくなれればいいかなと思って」

とダニエラが照れながらそう言う。

「思った以上によかったぞ。今日は疲れているようだから、少し早いが町に戻ろう」

と宣言し、町に帰還する。

 ギルドでクエスト達成報告をし、解散する。

 RPGの戦い方って意外と使えるんだと、彼らには言えないことを考えながら、宿に戻っていった。

 アントン達4人とパーティを組んで5日目、1日平均5件のペースでクエストをクリアしたので、アントン達は無事にEランクに昇格、俺はDランク昇格試験受験資格を得た。

 ギルドでDランク昇格試験の受験を申請。1時間後、昇格試験の実施が承認され、試験内容の通知があった。

 試験内容は、
 ・野犬またはホーンラビット2匹を倒すこと
 ・制限時間は5時間
 ・必ず単独で戦い、戦闘中に他者の助力を得た場合は、その討伐は無効
 ・討伐方法は自由。戦闘でも罠でも問題なし。但し、討伐証明部位の購入は無効
だそうだ。

 正直、楽勝過ぎて「こんなんでいいの?」って感じだ。だが、よく考えてみると普通の冒険者で前衛以外のポジションだと“単独”という条件がかなり厳しい条件になってきそうだ。
 条件をよく読んでみると、「必ず単独で“戦い”、“戦闘中”に他者の助力を得た場合はその討伐は無効」とあり、罠でもOKということは、罠を掛けておき、誰かに誘導してもらってもいいということか。それなら、後衛でも単独討伐は可能か。

 今日はアントン達は自分たちだけで採取クエストを行っているので、俺としてはフリーな一日だが、さっさと終わらせて、他のクエストを受けて小銭を稼ごうと思っている。

 キルヒナーギルド長の合図で試験開始。早速、西の草原に行く。
 西の草原は最近ホーンラビットが増えてきているようなので、小高い丘から鑑定を使って探すと、すぐに1匹目を発見できた。

 ホーンラビットに接近し、ファイアボールで動きを止め、剣で止めを刺す。討伐証明部位と毛皮を剥ぎ、肉も袋に入れて持っていく。

 また、丘に登り鑑定を使って探すと、風下から野犬が8匹接近してくる。ホーンラビットの肉の匂いに誘われてきたようだ。

 ファイアストームの範囲に入ったところで一気に殲滅。討伐証明部位を獲得し、町に戻る。大体1時間と言ったところか。

 ギルドに入り、討伐証明部位をギルド長に見せる。

「まだ、1時間だが、もうこんなに狩ってきたのか」

「ホーンラビットがすぐに見つかったので、そいつを狩り、何回も探すのが面倒だったので、血の匂いを餌に野犬をおびき出しました」

「相変わらず、簡単に言ってくれるなぁ。普通は1匹目を見つけるだけでも大変だし、野犬8匹も出てきたら、Dランク昇格前の冒険者はほとんど逃げ出すぞ。まして全部倒してくるなんて...」

「で、合格なんでしょうか。これが終わったら、クエストを受けたいんですが」

「ああ、合格だ。カードの記載事項の変更が終わればDランク冒険者だ」

「ありがとうございます。ではカードを受付に出してきます」

 3分ほどでカードの記載事項の書き換えが終了し、晴れてDランクに昇格した。これでCランクのクエストが受けられるようになる。

 今日はあと半日分くらいしか時間がないので、Dランクの簡単な討伐のグリーンクロウラーの討伐クエストを受けておく。

 4時間ほどで3匹狩って、町に戻ってきた。

 アントン達も戻ってきたようで、明日からの予定を考えることにした。

「明日は、今まで通りで行くが、明後日から東の森で夜営して更に奥を目指したい。自信がなければ、もう少し先にするが、どうだ?」

とアントン達に聞いてみた。

「正直、森で一夜を明かすというのは怖いですし、どこまでやれるか自信はないですけど...」

とアントン。

「いきなってのもちょっと...。夜営の練習をしてみない?」

とダニエラ。

「そうだな。明日は、午前中に森に入り、午後を使って夜営の準備をしてみるか。場所選びや見張りのやり方なんかを確認してみるか。それじゃ、今日中に明日持っていくものを準備しよう」

と言って、解散する。

 俺も中学校でやったキャンプ以外、焚き火をしたり、野宿したりすることはなかったので、かなり不安だった。
 大学のサークルでもキャンプはやったが、キャンプ場で貸し出されるバーベキューコンロやテントを使ったものだったから、あまり参考にはならない。
 小型の鍋などの簡単な調理器具や毛布などはベッカルト村で揃えてもらっていたので、食材を調達するだけで準備は終わるはずだ。


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