第2章.ゴスラー編
第2章.ゴスラー編:第12話「魔法の改造」
翌日から、東の森にターゲットを定めて討伐クエストを選択する。
グリーンクロウラー、ジャイアントスパイダー、キラーホーネットくらいが東の森で比較的近場にいそうな魔物だ。
シルバーマンティス、アシッドブロッブ、ジャイアントセンチピートは更に奥にいったところにいるので、とりあえず今回の対象から外す。
グリーンクロウラーは大型の芋虫で足も遅く、地面を這っているだけなので楽そうだが安い。
ジャイアントスパイダーは木の上に隠れているので探すのが大変そうだ。
キラーホーネットは大型のスズメバチなので、ファイアストームで一網打尽にできればおいしいが、毒が危険。
金は薬草で稼ぐから、リスクを考えて、グリーンクロウラーを当面のターゲットにしよう。
いつものように薬草採取のクエストもチェックして東の森に向かう。
ルディたちがちょっかいを掛けて来ることもなく、順調に東の草原を進んでいく。
1時間ほどで森の端に到着。
東の森は広葉樹が多く、雑木林といった感じで西や南の森より日の光が入ってきており、かなり明るい。
下生えの草が多く歩きにくいが、草原と同じように所々で花が咲いているため、陰鬱な感じは少ない。
今回も鑑定を駆使して薬草探しを行う。
5種類くらいの薬草を手に入れ、本命のグリーンクロウラーを探す。
下生えの草が邪魔をしてなかなか見つけられない。かなり奥まで進み、ようやくグリーンクロウラーを発見。
グリーンクロウラー:
緑色の大きな芋虫、麻痺蛾:パラライズモスの幼虫
HP300,DR0,防御力15,獲得経験値20(5S)
糸攻撃(AR20,SR30,締め付けによる追加ダメージあり)
改良型ファイアボールで最大射程から一撃で倒す。
討伐証明部位を剥ぎ取り、近くに別の魔物がいないか探索する。
少し歩くとグリーンクロウラーの集団を発見。
この辺りは餌が多いのか10匹くらいいる。
見た目がアゲハチョウの幼虫なのだが、大きさがダックスフントくらいあり、集団で草を食べている姿はとても気持ち悪い。
ファイアストームで殲滅することにしたが、ファイアストームも改良できないか少しアレンジしてみる。
ファイアストームは半径10mくらいの炎の竜巻が発生するが、最終的には上空10mくらいまで吹き上がるので、無駄な空間まで攻撃対象となっている。
効率が良いのか悪いのか判らない。今回はすべて地面に這っているので、下のほうを重点的に攻撃できれば効率よく倒せるはずだ。
ファイアストームの旋回を斜めではなく、水平にするイメージ、炎の渦巻きを作るイメージで発動させてみる。
中心以外は思い通り、うまくいった。
だが、中心に火柱が噴水のように上がってしまい、結局効率の点ではあまり変わらないような気がする。
もう少し検討が必要だ。
魔力の関係で、ファイアストームは一日1回しか使えないので、よく考えておこう。
結局、グリーンクロウラーは合計11匹いた。
ほとんどが瀕死の状態だったので、無駄な攻撃を受けないように慎重に止めを刺していく。
11匹分の討伐証明部位を剥ぎ取り、本日の成果は12匹。
十分な成果が上がったし、かなり奥まで来たのでこれで町に引上げることにした。
帰りに野犬が絡んできたが、ファイアボールで二匹を倒し、一匹は剣で倒した。
ほとんど魔法で倒している気がする。今の状態では剣士というより魔法使いといった方がいいくらい魔法に依存している。
剣の攻撃力が弱いと感じるのは、魔法が強いからか、STRが低く剣のスキルも低いからなのかは判断できない。レベルが上がれば、もっと剣も使えるようになるのだろうか。
ほとんどダメージを受けずに町に到着。
ギルドに行き、グリーンクロウラー12匹の報酬60Sと野犬、薬草の報酬30Sを受け取る。今日もかなり効率のいい稼ぎだ。
魔力をかなり使ったので、今日は剣の練習をするため訓練場に向かう。
ようやくこの剣にも慣れてきたのか、ふらつくことが少なくなってきた。
2時間ほど訓練で汗を流し、ドラゴン亭に戻る。
今日の稼ぎを加えると6Gを超えた。2ヶ月くらいは食べていけるので、明日からはがんばってレベルアップに励もう。
宿の部屋で魔法について、考えてみる。
属性魔法適正のおかげで、着火、ファイアボール、ファイアストーム、ファイアウォールについての呪文と指で描く魔法陣?などの知識はあるが、魔法の発動の原理や魔力についての基礎知識がない。
今のところ、”こうすれば魔法が使える”という知識だけでしかないため、応用があまり利かない。
呪文についてだが、呪文が日本語なのにはビックリした。
スキルに上位古代語(上級ルーン)とあったのは、日本語を使えるからなのだろう。
呪文自体は、それほど難しい言葉ではなく、ファイアボールであれば、「万物の基となるマナよ、わが身に集いて、赤き炎の球となり我が敵を焼く尽くせ。ファイアボール」が基本形になる。
枕詞の「万物の基となるマナよ、わが身に集いて」は属性魔法の発動準備のようで、「赤き炎の球」でマナを特定の形態に変え、「我が敵を焼き尽くせ」で行為を設定し、「ファイアボール」で発動となる。
発動のキーワードは共通語だが、特に発声しなくても発動できる。
俺が作り出した改良型は、「万物の基となるマナよ、わが身に集いて、白き炎の塊となり我が敵を焼き貫け」となる。
「白き炎の塊」で火の玉を圧縮、「焼き貫け」で飛翔速度をアップするイメージとした。
失敗した涙滴旋回型は、「白き炎の錘となりて、旋回し、我が敵を焼き貫け」とした。
「白き炎の錘」まではよかったのだが、旋回させながら飛ばすイメージを呪文にできなかったため、分割したところ、うまくいかなかった。日本語=ルーンの語彙が多くないと新しい呪文は出来ないということのようだ。
ファイアストームの改造も、基本呪文「万物の基となるマナよ、わが身に集いて、炎の嵐となり、わが敵を焼き尽くせ」に対し、「万物の基となるマナよ、わが身に集いて、浅き炎の渦となり、わが敵を焼き尽くせ」としたのだが、浅き炎の渦はイメージどおりだったが、中心に向かっていく特性を忘れており、集まった炎の行き場がなく、上に噴出してしまった。
次は「尾を食う炎の蛇となりて」としてみようかと思っている。
ファイアストームに関しては、もうひとつやってみたいことがある。
魔法で火を燃やすとその空間の酸素は消費されるのか。
もし通常の火と同じく酸素を消費するのであれば、火力を抑えて数十秒程度継続させれば、酸欠で敵を倒せるのではないか。
特に哺乳類系の魔物であればかなり有効な気がする。
通常型のファイアストームは直径約10m、高さ約5mの円柱型に発生し、最大60秒程度継続する。
無風状態や狭い空間などの条件がつくが、火力を抑えて半径を大きくし、円柱状に炎の壁を作り、継続時間を伸ばせれば、円柱内の酸素量はかなり減り、広範囲の敵に対して有効な窒息攻撃を掛けられる可能性がある。
1分程度の弱い火であれば息を止めていれば何とかなると思うが、火が収まった後に息を吸い込むと低酸素の空気を吸い込むことにより、窒息させることができる。
酸素欠乏への知識がないこの世界の人や人型の魔物に対しても使えるはずだ。
今の俺は火属性の魔法しか使えない。
ギルドや道具屋なんかでも聞いてみたが、魔法は魔術師の弟子になって覚えるか、王都の魔術師団に入団するかしないと覚えることは出来ないそうだ。
魔術師も弟子以外には自分の魔法を教えることはなく、魔導書も王都ドライセンブルクの王立図書館か商都ノイレンシュタットの魔道具屋にしかない。
王立図書館は貴族や騎士団関係者の紹介がないと入れないし、魔導書は数百Gと非常に高いため、購入するのはほぼ不可能。
後は誰かが使っている魔法を見て覚えることになるが、呪文だけなら覚えられるかもしれないが、手で描く魔法陣は見ただけではなかなか覚えられないし、マナの流し方なんかは見ても判らないので見て覚えることもほぼ不可能と考えていい。
ということは、俺は何らかの幸運に恵まれなければ火属性の魔法しか使えないということだ。
それも火属性魔法には1ボーナスポイントしか振らなかったので、ファイアストーム以上の魔法が使えるようになるのかもわからない。
今後のレベルアップで確認できるだろう。
水、風、土の魔法も使いたいが、今ある火属性魔法を極めることに集中するほうが建設的なので、攻撃魔法ではない、着火の魔法の使い方についても考えてみる。
着火はその名の通り、指の先に火を点す魔法で、基本形ではろうそくの炎程度の火が出るだけだ。これを何とか改造できないか。
案としては、ガスバーナーのような高温の炎を剣のように使うことを考えている。基本形の呪文「万物の基となるマナよ、わが身に集いて、炎と成せ」だが、「炎と成せ」の部分を「白き炎の剣を形作れ」としたら、どうなるだろう。
着火の魔法くらいなら、魔力の消費も少ないし、部屋の中でも問題ないだろうと実験してみる。
溶接用のガスバーナーを思い浮かべ、魔力量を抑えて呪文を唱えると20cmくらいの長さの青白い炎が現れる。
魔力の消費量は通常の着火よりかなり多いものの、攻撃魔法であるファイアボールより魔力量はかなり少なく、発動までの時間も短い。
炎を出したまま、魔力量を調整し長くしていく。
40cmくらいの長さで限界を迎える。発動に3秒ほどかかるので、咄嗟の時には使いにくいが、接近戦で奇襲を掛けるのには使えそうだ。
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