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第2章.ゴスラー編
第2章.ゴスラー編:第8話「Eランク」
 4人と別れ、西の森に入っていく。
 西の森はベッカルト村の森に比べ下生えの草が多く歩きにくい。
 見通しも悪く、かなり薄暗い。森の中なので三角法での位置を特定することが難しい。 
 迷わないよう木に目印を付けながら、森の奥に進んでいく。

 30分も進むと人が入った形跡が全く見当たらない。獣道らしいものもなく、完全な原生林だ。
 ようやくクエスト対象の薬草を見つける。
 今回は草原と違い、何度も来るつもりはないので、根こそぎ採取しておく。
 帰り道に2種類ほど対象となる薬草を見つけたのでこれも採取する。

 森の中の採取がEランク相当なのがわかった気がする。
 なにせ、迷わず歩くだけでも大変なのに雑草と見分けがつかない薬草を探すのはものすごく骨が折れる。鑑定がなければ到底見つけられなかっただろう。

 昼食を取るため、手近な倒木に腰をかけ、弁当を広げる。
 下を向いて森の中を歩くというシチュエーションから、中学時代のキャンプを思い出した。

(キャンプファイア準備で、薪を取りに行った時も下生えの草をかき分けながら、森を歩いたよな)

 疲れた体でそんなことを考えながら、食事をしていた。
 少し気を抜いていたのだろう。
 後ろでガサと音がして振り返ると灰色の大きな狼が一頭いた。

 距離は約10m。
 狼の大きさは大型犬より一回り大きく、歯を剥き出しにして威嚇してくる。

 灰色狼グレイウルフ
  最も生息数の多い灰色の狼。
   HP400, DR15,防御力20,獲得経験値35(10S)
   牙(AR80,SR35)、爪(AR50,SR35)

 弁当の匂いに誘われてやってきたようだ。

 幸いなことに一頭だけで群れではなかったが、危機的な状況には変わりがない。

 弁当を放り出し、座っていた倒木を盾に剣を地面に突き刺す。
 ファイアボールを最大出力で撃つため、呪文を唱え始める。

 狼は弁当に気を取られながらもこちらの様子を窺っている。
 目を逸らすと襲って気そうだったので、こちらも睨みつけながら呪文を唱えていく。

 1分程掛かったが、ようやくマナを集めきり、ファイアボールを狼に向かって放つ。
 狼は回避しようとしたが、避けきれず右前足に命中。ひるんでいるうちに決着を付けるため、剣を引抜き狼に向かう。

 一気に距離を詰め、剣を振りかざすが、なかなか当らない。右前足にダメージを与えたとはいえ、野犬より敏捷だ。

 長期戦はこちらに不利になるので、突きを中心に攻撃を掛ける。
 狼も一時の逃げ腰から攻撃に移ってきており、俺の脚や腕に傷が増えていく。

 どのくらい戦っているのだろう。狼の動きもやや落ちてきているので、一気に決着を付けるべく、頭に向かって上段から、剣を思いっきり斬り下ろす。
 狼に剣が当たった瞬間、大きくバランスを崩し前のめりに転倒してしまう。

 拙い!と思う間も無く、狼はギャンと悲鳴を上げ、後ろに下がってうずくまり、動きを止めている。
 血が流れてはいないが、かなりのダメージを与えられたのか、やや不安に思いながら、俺は慎重に接近し、止めの一撃を打ち込む。
 狼の反撃はなく、なんとか勝利をものにしたようだ。

(ふぅぅぅ。剣の大振りは気を付けないといけないな。今回は止めの一撃だったから良かったものの、最後まで慎重に扱わないと思わぬところで墓穴を掘りそうだ)

 そう考えながら、周りを警戒する。
 やはり他の狼はいないようで、いわゆるはぐれの一匹狼だったようだ。

 狼はDランク相当の討伐対象なのでFランクの俺ではクエスト達成にならない。
 毛皮は買い取り対象だったはずなので、素早く剥いでおく。右前足はかなり焦げているので、捨てておく。

 ギルとの狩猟経験が物を言い、30分ほどで毛皮を剥ぎ取る。
 討伐証明部位の上の牙も2本取っておき、できるだけ早く森を出る。森を出てから、自分に治癒を掛け、回復しておく。

 毛皮からは血の匂いがしていそうで野犬などが襲ってこないか心配だったが、さすがに街道まで出てくるやつはいなかった。

 町に戻り、ギルドで薬草採取クエストを3回完了させ、持っていた狼の毛皮を買い取ってもらう。

 狼の毛皮は右前足部分がないものの10Sで売れ、採取クエストで25S稼げたので、35Sの儲けだったが、狼にズボンとシャツを破られたのでほとんど儲けは出なかった。

 腕と足の防具も必要だとちょっと反省していると、アントン達が帰ってきた。
 破れたシャツを見て心配してくれたようだが、ギルド内ではできるだけ接触しないように言っておいたので、声を掛けずにカウンターに向かっていく。

 掲示板を見ながらアントンたちの成果を聞いていると注意事項どおり今日は1種類だけ採取して帰ってきたようだ。これで何とかなるだろう。
 俺がお節介をしてもどうにもならないかもしれないし、自己満足と言われるかもしれないが、人生の先輩としてちょっとだけ手助けできたことに満足している。

 宿に帰る前に服屋で革のズボンとシャツを購入。
 今着ているズボンと服は直してもらえるそうだ。
 購入と修理で80S。トントンどころか大赤字だった。

 翌日から西の森で集中的にクエストを行う。
 採取系は平均1日5件クリア。報酬は一日平均30S。Dランク並の稼ぎだ。
 森の中では何度か魔物に遭遇したが、奇襲さえ受けなければ魔法を駆使して倒すことができている。10日後、Eランクに昇格。レベルはランクアップ前にレベル3に上がっている。

  高山タカヤマ 大河タイガ 年齢23 LV3
   STR214, VIT187, AGI208, DEX260, INT3143, MEN968, CHA185, LUC175
   HP266, MP968, AR0, SR0, DR0, SKL170, MAG24, PL22, EXP5754
   スキル:両手剣8、回避6、軽装鎧3、共通語5、隠密2、探知2、追跡2、
       罠2、体術1、植物知識3、水中行動4、
       上位古代語(上級ルーン)50
   魔法:治癒魔法3(治癒1)、火属性3(ファイアボール)

 冒険者になって18日目でEランクになった。ゴスラーでは最速だそうだ。

 手持ちの資金も4G近くに増え、大きな買い物をしなければ、十分に食べていけるほどになっている。

 コツコツ貯めたDランク相当の討伐証明部位でクエスト達成をしようとしたが、討伐クエストは事後受託できないとのこと。今まで持っていた意味はなかった。
 薬草などの採取クエストは誰かに取ってきてもらおうが、買い取ろうが薬草を手に入ることがクエストの目的なので事後でもOKだが、討伐は倒すことが目的であり、部位だけ持ってこられても達成したことにならない。
 確かに近隣の魔物の討伐が必要なのにいつのものか判らない討伐証明部位を持ってこられても達成にならないのは理解できる。
 偶然出会った時にクエスト達成にならないのは納得できないところではある。
 但し、クエスト達成にはならないものの討伐部位の買い取りは行っているとのことで完全に無駄ではなかった。

 アントン達との交流も2回実施。
 周りからはアントン達は俺の舎弟と見なされているようだ。
 4人もようやくFランクに昇格し、日々の稼ぎも10S程度と少し余裕が出てきたようだ。
 レベルも2に上がったようだが、戦闘の経験は無いといっていた。

 噂話については、西部の方で暴れていた盗賊団が急にいなくなったという話や来年が国王の即位35周年と建国400周年にあたり、半年後の新年には大々的なイベントがありそうだとの話くらいであまり面白い話はない。
 後は守備隊の悪口と物価が少しずつ上がっていることへの愚痴がほとんどだが、一つだけ面白い噂話があった。

 Dランクの依頼を受けることができるようになったが、当面Eランクの採取依頼を受けるつもりだ。
 今の自分の実力ではゴブリンなど足の遅い魔物であれば群れでも対抗できるが、足の速い狼の群れの場合、機動力を生かされると勝ち目がない。
 討伐クエストはできればパーティを組んで受けたいと思っているが、俺の素性をどう説明するかが問題で臨時パーティに参加するくらいしかないと考えている。よって、当面ソロでの活動になるだろう。


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