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第2章.ゴスラー編
第2章.ゴスラー編:第6話「ランクアップ」

 初日の報酬を懐に意気揚々とギルドを出る。

 革のグローブが欲しかったので宿に戻る前に防具屋に寄って行く。
 防具屋で革のグローブを5Sで買い、ドラゴン亭に帰る。

 明日分のクエストも見ておいたので朝一から仕事に取り掛かれそうだ。
 明日は東側に行ってみることにしている。

 一夜明け、今日も昨日と同様に草むらでの薬草探し。
 昨日は素手で剣を振っていた所為で手の皮がむけそうだったが、今日は革のグローブのおかげでかなり楽だ。

 午後3時にギルドに行き、本日も6件のクエストを達成。
 18Sの儲けだ。
 この調子ならFランクに10日ほどでなれそうだ。

 一人悦に入り、明日のクエストを確認していると、ギルドの事務所から誰か出てきた。
 白髪の初老の男性で目付きはかなり鋭い感じだ。
 会社に入った時に会った工場の職人さんを思い出す。

「ちょっといいかな。儂はこのギルドのギルド長のキルヒナーというものだ。2日で11個のクエスト達成した新人君で間違いないかな」

 厳しそうな感じだが、話し方に威圧感はない。
 ギルド長というお偉いさんが出てきたことに少し警戒しながら、

「はい。そうですが、何の用でしょう?」

 ギルド長は俺が警戒していることに気付いたようで、笑みを浮かべながら軽く手を振っている。

「いや、特に用はないのだが、興味が会ったので話をしてみたかっただけだ。冒険者になるには少し遅いようだが、君は今までどんな仕事をしていたんだね」

 警戒が先にたっている俺はつっけんどんな受け答えをしてしまう。

「答えないといけないのでしょうか」

「いや、個人的な興味なので言いたくなければ言わなくてもいい。ギルド長として聞いているわけではないのでね」

(なるほど、変な経歴がないか確認しに来たわけだ。設定通りの話で問題ないな)

「いえ、教えたくないわけではないんですが、名前以外の記憶を失くしているので話せないんです。すいません」

「ふむ。そうか。それは悪かったな。では、がんばってくれたまえ」

といって、ギルド長は納得したという表情ではないが、奥の自室に戻っていく。

(初日から飛ばしすぎて、ちょっと調子に乗りすぎたかもしれないな)

(変なところに目を付けられなければいいが、もう少し慎重に行こう)

 明日からは草原で剣の訓練をすることにし、3件くらいのクエストで様子を見ることにした。

 ドラゴン亭に戻り、食堂で食事を取っていると、16,7歳くらいの若い3人組の男達が話しかけてきた。

「ちょっといいか。」

(高校生くらいの年なのにタメ口だな。フーゴの忠告を聞いておいて良かった)

「ああ。何か用か?」

「俺はEランクのデニスっていうんだ。こっちはバルド、こっちはエルヴィンだ。あんたが2日で11件のクエストを達成したって噂を聞いたんだが、本当か?」

 俺は何のために話をしに来たのか、相手の目的を掴みかねている。

「そうだが、Fランクのクエストだぞ。そんなに大したことじゃないだろう」

「何でも採取系のクエストをすべて必要数だけ揃えてクリアしたそうだが、どんな手品を使ったんだ。普通、薬師でも1つや2つは間違うもんだが」

 デニスという若い冒険者は少し挑むような感じで話を進めていく。

「俺は薬草に詳しいんだよ。その薬師の方がおかしいんじゃないか」

「まあいい。どうだ、俺たちのパーティに入らないか。俺たちはそこそこ名前も売れ始めているし、仲間がいた方が安心だろう」

(パーティへの勧誘か。Eランクだから薬草に詳しい奴がいればそこそこ稼げるから誘いに来たのか。鑑定で見たわけじゃないが、それほど実力がありそうでもないし、面倒だな)

「悪いが俺はまだGランクなんで、Eランクとはパーティクエストはできないんだ。それに俺は今のところソロでやっていくつもりだ。すまないな」

 俺は適当な理由を付けてデニスの勧誘を断ることにした。確かEランクとGランクでパーティを組んではいけないと言うルールはなかったはずだ。

「そうか。あんたならすぐにFランクだろう。まあ、気が向いたらいつでも声をかけてくれ。」

と言って、意外とあっさりと離れていく。

 回りにも話が聞こえていたようでこちらをチラチラ見るやつもいる。
 少し居心地が悪いので、早めに部屋に戻ることにした。

 翌日から、一日3件の依頼達成に切替え、半日ほど町の外で訓練を行う。
 筋力が足りず、絶えずフラフラしているし、我流の型なので端から見ると何をやっているのかわからない、変なやつに見えるかもしれない。
 時間があるので魔法の訓練もしたいが、ファイアボールは目立つし、草原の草に火がついたら大変だ。自重することにした。

(風か水にしておけばよかったかな。格好良さだけで火を選んだのは失敗だったかも)

 格好良さで火を選んだ軽率さを少し反省している。

 3日ほどおとなしくしていたが、どうして俺が気を使わなくちゃいけないのかと思い始め、一気にクエスト達成に走ることにした。
 この5日間でこの草原の植生はほぼ掴むことができているので、メモ帳にある薬草をすべて採取する。

 ギルドに戻り、一気に30件クリアすると、周りには人だかりができていた。

 2時頃ギルドに入ったが、1件につき5分くらい掛かるため、3時間くらい受付・達成を繰り返していた。このため、気が付くと普通の冒険者が帰ってくる午後4時頃になっていたのが原因だ。
 これで50件達成となったので、Fランクに昇格。

 今日一日の報酬は1G近かった。1日の報酬としてはCランクとほぼ同じだ。


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