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改稿しました。
第1章.ベッカルト村編
第1章.ベッカルト村編:第2話「ステータス」

 ギルは周りを警戒しながら、ズンズン森を進んでいく。

 1時間くらい歩くと木造茅葺屋根の家が点々と立っているのが見え、どうやら集落に到着したようだ。家の数は見える範囲で10軒くらい、やや煤けた感じの家が多く、小屋と言ったほうが適切かもしれない。

 すれ違う村の人は、皆白人で日本人らしい人は一人もいない。

 ギルは近くの人にあいさつをしながら、自分の家らしい小屋に入っていく。俺も付いていこうとしたが、入口で待つようジェスチャーで指示されてしまう。

 奥から女の人の声が聞こえ、なにやらギルが説明している。
 どうやら俺のことを説明しているようだ。

 話し合いも終わり、ギルが中に入るように手招きする。
 俺も「失礼します」と言いながら、頭を下げ、家の中に入る。

 20歳位のショートカットで少し日焼けした健康的な美人、ギルの奥さん?がにこやかに迎えてくれ、手で椅子に座るよう促してくれる。

 ギルは家の奥に獲物を持っていき、手際良く捌き始める。
 俺はコミュニケーションも取れず、何もできることが無いので、ギルの作業をぼおっと見ていた。
 夕方になり、ようやくギルの作業も終わる。

 奥さんがテーブルに夕食を並べ始める。
 メニューは何かの肉と豆のスープのみ。
 ギルが食べるジェスチャーをしてくるので、ご馳走になる。

 一般家庭に育ち、ただの新入社員の俺が三ツ星レストランなど行っているはずはないが、空腹の俺にとっては三ツ星の高級レストランのフルコースよりうまいと感じる。
 空腹は最高の調味料とはよく言ったものだ。

 夕食後、いろいろ話をしてみるが、一向にコミュニケーションは取れない。
 今日は生まれてから一番歩いたかもしれない。疲れが溜まり空腹が満たされたため、少し眠くなってきた。
 眠そうにしていると、ギルに手招きされ一緒に家の外に出る。
 三日月の月が浮かぶ夜空はきれいに澄み渡り、空一面に星が輝いている。
 日本ではどんな田舎でもここまできれいな星空は見えないだろう。
 星空に北斗七星やオリオンみたいなわかりやすい星座を探すが、それらしいものは確認できない。

 ギルはやや済まなさそうに、家の外にある小さな納屋を指差す。ここで寝てくれと言っているようだ。
 食事までご馳走になり、寝るところまで用意してもらっている身としては何の不満もない。

 変な格好をし、話もできない怪しい人間を家に泊める方がおかしいだろう。

 俺は笑って感謝の意を伝えると納屋に入っていった。
 外では戸に何か細工をしている音が聞こえてくる。
 勝手に出ていかないようにギルが入口を固定しているのだろう。
 
 最初は監禁されたと焦ったが、夜中によそ者を自由にさせておくリスクを考えればギルの行動にも納得がいく。

 一か所だけある明かり取り用の窓から月明かりが入り、中をほのかに照らしている。
 真ん中に藁を敷きつめた寝床が作られていて、ここで寝ればいいことが分かる。
 することもないし、疲れたので横になってみる。
 麦藁の匂いを強く感じるが、嫌いな匂いではない。
 横になってみると疲れているのだが、妙に目がさえてしまい、いろいろ考えてしまう。

 昨日から今日にかけての出来事があまりに現実感がなく、朝、目が覚めたら、アパートのベッドに寝ているって、“おち”かもなどと頭の片隅で考えてみる。
 現実逃避だなと思い直し、明日からどうするべきかを真剣に考えてみる。

 藁の上で寝返りを打ちながら、

「どう考えてもいわゆる“異世界トリップ”ってやつだな」

 改めてその事実を口に出してみる。
 口に出したことで問題が何か少しはっきりしてきた。

(現状の最大の問題点はコミュニケーションが取れないことだ。一から言葉を学ぶとして、何カ月かかることやら。大学を出たばかりの何のスキルもないただの新入社員がどうやってこの世界で生きていけるんだろう?)

 考えてみるが、いいアイディアが思い浮かぶはずもなく、どの思考も袋小路に入ってしまう。
 会社の新入社員研修を思い出し、

(とりあえず、現状を整理することが大事だな)

 今の所持品から整理してみようと考える。

(ゲームみたいにアイテムボックスがあれば便利だろうにな。)

と、また現実逃避のくだらないことを考えてしまう。

 が、突然、目の前にアイテムと書いたポップアップメニューが現れた!

 ゲームなんかである“あれ”である。

“アイテム確認”とあったので、そこを念じてみると、アイテム欄が現れ、

・携帯電話(充電率50%)1台
・ソーラー式腕時計 1台
・メモ帳 1冊
・財布 1個
・筆記用具:シャープペンシル1本、3色ボールペン1本
・ソーラー式携帯電話充電器1台
・所持金 0G、0S、0C
と、今持っている所持品がリスト化されて見の前に浮かんでいる。

 アイテム欄の横に「ホームに戻る」というボタンがあったので、それを念じてみると、トップメニューに辿り着いた。
 
 トップメニューには
 「ステータス確認」、「アイテム確認」などのボタンがある。
 とりあえず、ステータス確認ボタンを念じてみると、ゲームで出てくるようなステータスが目の前に浮かんできた。

 名前:高山(タカヤマ) 大河(タイガ) 年齢:23 レベル1
  筋力STR60、耐久力 VIT55、敏捷性AGI65、器用さ DEX120、知力 INT3000
  精神力 MEN80、魅力 CHA65、運 LUC55、生命力HP92、魔力 MP80
  固有攻撃力AR0、固有命中率SR0、固有回避率DR0
  保有可能スキル数 SKL156、保有可能魔法数MAG8、可搬力PL21
  積算経験値 EXP0
  スキル:水中行動4、上位古代語(上級ルーン)50
  魔法:なし

(何だ、これは?)

 俺は状況がわからず、数秒の間、固まってしまった。


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