「小1の壁」とその解決策

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2012/10/29


NHKで「小1の壁(小1プロブレム)」の問題が取り上げられていました。意外と知られていない社会問題なので勉強がてらのメモをご共有。


子どもが小学生になると会社を辞めざるをえない

小学校入学までこぎつければ、子育ても一段落。そう周囲は見るけど、延長保育など至れり尽くせりの保育園がなくなって、仕事との両立は逆にきつくなる。「小1の壁」を前に仕事をあきらめる人もいる。

働く母を阻む「小1の壁」 保育園も時短勤務もなくなり

「小1の壁」とは、仕事で帰宅が遅くなってしまう共働き世帯、ひとり親世帯は、放課後に子どもを預ける先がなく、仕事を辞めざるをえない/生活を変えざるをえない、という社会問題です。親が帰る時間が8時で、子どもの授業が終わるのが3時だったりすると、その間の5時間、子どもの居場所がないわけです。

そういう場合、状況によっては会社を辞めざるをえないことにもなります。

 東京都世田谷区在住のムツミさん(35)も今春、長女の小学校入学を機に、13年間一般職として勤め続けたメーカーを辞めた。会社の育児短時間勤務制度は小学校入学前まで。それが退社の決め手だった。

働く母を阻む「小1の壁」 保育園も時短勤務もなくなり

放課後の子どもを預かる「学童保育」というソリューションもありますが、その数の不足が指摘されています。入れたくても入れられないということですね。

2010年の「国民生活基礎調査」では、末子の年齢が6歳の児童の59.2%、7歳~8歳の児童の65.5%は母親が働いている。母親が働いている低学年児童は約213万人だが、そのうちの35%にあたる約75万人しか学童保育に入所していない。

 また、2012年度に保育所を卒園して小学校に入学した児童数約48万人に対して、学童保育に入所した新1年生は約29万人で、約6割にとどまっている。このことから学童保育が保育所を卒園した子どもの6割弱しか入所できていないと推測される。

学童保育不足が深刻に…約2割が小学校区内に学童保育なし | リセマム (教育・受験、その他のニュース)

まだ働きたい人が、子どもを預ける場所がないがために仕事を辞める、というのは社会にとっても本人にとっても損失といえるでしょう。


解決策① 学童保育・放課後教育の充実(民間/NPO)

解決策のひとつは、不足が叫ばれている学童保育そのものの充実です。

特に注目が集まっている分野は「民間学童」で、東急のキッズベースキャンプなどはビジネスとしても成功しています。塾業界など、保育以外の業種からの参入も増えているとか。

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また、NPOのsopa.jpは、民間学童保育を増やしていくための経営ノウハウを提供し、民間学童を増加させることを目論んでいます。民間学童を経営したい方は、ぜひsopaを頼ってみるといいでしょう。

一方で民間であるため料金は高く、例えばキッズベースキャンプは毎月5〜6万、食事の提供も受ける場合は月10万円弱掛かることも。かなり稼ぎがないと厳しいでしょうね…。

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ゆえに、学校やボランティアを生かした、もっと安価なソリューションのニーズも強いのが実際です。NHKの特集の中では、横浜市がNPOと連携して取り組んでいる「放課後児童クラブ」が紹介されていました。こちらは5000円〜2万円程度で利用できます。確かに学校はいい資産ですよね。

また、学童保育ではありませんが、放課後の学校を使って市民が教育コンテンツを提供する取り組みも始まっています(放課後NPOなど)。「放課後学習」の充実も、問題解決の一つの鍵でしょう。


解決策② 時短勤務、在宅勤務の促進

番組では特に言及されていませんでしたが、時短勤務、在宅勤務の促進は問題解決のポイントだと考えます。

現に上で紹介した事例にも「会社の育児短時間勤務制度は小学校入学前まで。それが退社の決め手だった」なんて言葉があります。番組の中でも、「時短の交渉をしたが受入れられず、仕方なく会社を辞めた」という女性が紹介されていました。

時短勤務が許されないというのもバカバカしい話ですし、仕事によってはそもそも会社に行かないとダメ、というのも前時代的な話です。ここら辺の働き方を変えるだけでも、少なからず救われる人はいるでしょう。


例えば、以前も紹介しましたが、クロスカンパニーなどが取り組む「短時間正社員制度」は素晴らしいと思います。これはまさに解決策になりますよね。多くの会社で導入されることを期待します。


うちももうすぐ子どもが生まれますが、とりあえず僕は在宅ワーカーなので、1〜2歳のうちは保育園に頼ることも(恐らく…)なさそうです。奥さんが所属する会社も比較的フレキシブルな制度を持っているので、恐らく「小1の壁」とは無縁でいられると思います。

10年単位の長期スパンで見れば、時間とともに解決していく問題であるようにも思います。特に民間学童という市場原理が働くのは大きいはず。コミットできていない分野ですが、変化を促進するためにできることがあれば関わっていきたいところです。


関連本。ニッチですが良著の匂いがプンプン。ポチりました。