進行する日本の高齢化社会の解決策として、少子化対策や移民政策を挙げる人がいる。だが、果たしてそれで本当に解決するのだろうか? 日本の行く末を識者とともに考える。
***
今の赤ちゃんもあと20年もしたら成人し、いずれは働くようになる。だから、「高齢化対策には、子供をたくさん産めばいい」と考える人も多い。今からでも少子化対策に力を入れれば、人口減少は食い止められるのだろうか。
政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏は言う。
「難しいでしょう。少子化の原因は出生率ではなく、子供を産める女性の数の激変にあるからです。出生率が現在のまま推移したとしても、生まれてくる赤ちゃんは、現在の110万人から2030年には70万人ほどに減ってしまいます」
日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏も同意する。
「出産適齢期の女性の数は、これからの20年で少なくとも3割ほど減ってしまいます。そうなったとき、いまと同じ110万人を維持するだけでも、出生率を1.3から1.8にまで押し上げなければなりません。これがどういうことかというと、子供のいる家庭では3人兄弟がざら、という状況になります。結婚しない人や子供がいない夫婦もいますからね。現状の出生者数の維持すら、これだけ難しいことなのです」
出生率ではなく、まず親の絶対数が問題だということか。
では、1学年220万人の団塊ジュニア世代は多くの赤ちゃんを産んだのか。団塊の世代と団塊ジュニア世代の差は24年。1971~74年生まれの団塊ジュニアたちが同じように一斉に子供を産んでいたら……って、あれ?
「本来なら、1990年代半ば以降に団塊ジュニア世代による出産ラッシュがあったはず。2010年のグラフでいうと、15歳から下あたりです。しかし、グラフでわかるように、それはありませんでした」(国立社会保障・人口問題研究所副所長、金子隆一氏)
団塊ジュニア世代は現在、38~41歳。少子化対策最後の機会は、もはや失われてしまったのか。
では、移民政策はどうだろう。外国人労働者を大量に受け入れたら、生産年齢人口は回復するか。
「難しいでしょうね。日本企業が外国人を雇う場合は、たいてい彼らを日本のやり方に従わせるという手法です。外国人の割合が少なければそれでいいのかもしれませんが、本格的に活用するとなれば、彼らの多様な文化、行動を認めなければならない。日本企業も日本社会もそんなことにはまったく慣れていないのです」(松谷氏)
(取材・文/頓所直人 興山英雄)