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【社会】

iPS臨床 眼病6人に 理研申請 神戸の病院で実施へ

 【サンフランシスコ=共同】理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは二十五日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った臨床研究を、神戸市の先端医療センター病院などの倫理委員会に近く申請することを明らかにした。目の病気「加齢黄斑変性」の患者六人を対象とする。

 申請先の三機関のうち、理研の倫理委には日本時間二十六日までに申請があった。

 再生医療への応用で期待がかかるiPS細胞を使った治療は前例がなく、実施されれば世界初になるとみられる。機関内の倫理委による承認の後、厚生労働省の審査を通る必要があり、二〇一三年度の開始を目指す。

 iPS細胞を開発した京都大の山中伸弥教授が理事長を務める国際幹細胞学会が米グラッドストーン研究所(サンフランシスコ)で開いたシンポジウムで発表した。

 高齢者に多い加齢黄斑変性のうち、網膜の裏側に余分な血管が生えてきて色素上皮が急速に傷み、視力が落ちる「滲出型(しんしゅつがた)」が対象。

 現在ある治療法の一つは、網膜に小さな穴をあけ、下にある血管と傷んだ色素上皮をピンセットのような器具で取り出す手術。だが、栄養を与えたり老廃物を処理したりする色素上皮が修復されず網膜が次第に傷んでしまうのが難点だった。

 今回の計画では、患者の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を網膜色素上皮細胞に成長させ、この手術でできた欠損部に補う。シートの準備には半年ほどかかる。当初の主な目的は安全性の確認。既存の治療をしても矯正視力が〇・三未満などの条件を満たした患者六人に移植し、異常が出ないかを監視、視力の低下が食い止められるかなども評価する。

 視力の回復効果を本格的に確かめるのは数年後、参加人数を増やし、より大きな効果が期待できる比較的症状の軽い患者を対象に実施する次の段階の試験となる。

<加齢黄斑変性> 目の奥にあり、光や色を感じる細胞でできた網膜の中でも、ものを見る時に中心的な役割を果たす黄斑という部分が老化し、視野の中央部がゆがんだり暗くなったりする病気。国内患者は推定69万人で、成人の失明原因の4位(欧米では1位)を占める。網膜で出る老廃物の処理などを担う色素上皮の組織が縮む「萎縮型」と、下にある脈絡膜から異常な血管が生えてきて色素上皮が傷む「滲出型」がある。萎縮型には治療法がないが、滲出型には血管を収縮させる眼球注射薬がある。ただ、治療は継続する必要がある。 (サンフランシスコ・共同)

 

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